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3章
3章48話(258話)
しおりを挟む足を止めた私に気付いて、ジーンも足を止めた。そして私のところまで近付いた。
「エリザベス?」
「……そうね……。とりあえず……」
「とりあえず?」
「あの呪いの書を燃やしたいかな……」
延び延びになっているあの呪いの書。どうやら私かジェリーにしか触れないようだから、早く燃やしたい。
いや、もうひとり、きっと触れるであろう人物がいる。
ジュリー。
ジェリーの身体を乗っ取ろうとしたマザー・シャドウが、姉であるジェリーの身体でもあの本に触れた……ということは、その妹であるジュリーも触れる可能性が高い。
「……一体、あの本はなんのためにあるのかしらね……」
ジーンたちにもかいつまんで説明していたから、呪いの書のことも知っている。
――王族を呪うための本。
私が知っているのはそれだけだ。そっと、自分の片目を隠すように瞼に触れる。私の瞳――宝石眼。後天的にそうなったもの。
……これも呪いの一種なのかしら……?
小さく息を吐いて、手を戻す。心配そうなジーンの顔を見て、私は眉を下げて微笑む。
「ごめんね、心配かけて」
「いいのよ、それは。私がエリザベスのことが好きだから、勝手に心配しているんだもの」
きっぱりとそう言い切るジーンに、胸の中がぽかぽかと温かくなる。
私のことを受け止めてくれる友人たちがいるっていうのは、本当にうれしくてありがたいことだわ……。
「ありがとう。さあ、ディアたちを追いかけましょう」
「ええ」
ディアとジェリーはすっかり遠くに行ってしまっていた。
私とジーンは顔を見合わせて、彼女たちを追いかけるために走り出した。
私たちが遅れていることに気付いたのか、ディアとジェリーが立ち止まって私たちに向かい大きく手を振る。
身長差もあるからか、ジーンのほうが走るのが早い。
……身長、もっと伸びないかなぁ……。
そんなことを考えながら走った。
ディアたちのところにたどり着くと、ディアとジェリーが心配そうに眉を下げていたので、私とジーンは顔を見合わせて、「ごめんごめん、考え事しちゃってた」と謝った。
緩やかに首を左右に振るディアとジェリー。
「……何か、気になることがありました?」
「ううん、本当にただ考え事してただけ。建国祭もあと数日で終わっちゃうから、それが終わったらどうしようかなーって」
「ああ、そうですわね……」
どこかホッとしたように表情を緩ませるディア。
ジーンはただ黙っていてくれた。
ジェリーだけは、私が何を考えていたのかを察したのか、不安そうに瞳が揺らいでいた。
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