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4章

4章67話(367話)

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 ヴィニー殿下と一緒に、ソフィアさんが使っている客室へと足を進める。ソルが私の肩に乗り、ルーナが抱っこをねだったので抱き上げていた。精霊たちは見た目以上に軽い。

 部屋について、ソフィアさんは私たちに座るようにうながす。

 それぞれ椅子に座り、ソフィアさんがソルとルーナの名を呼んだ。

「あなたたち、説明もなしにエリザベスちゃんと契約したでしょ」

 じろり、と睨むようにソルとルーナを見るソフィアさんに、私は首を傾げた。昨日の精霊たちからのキスのことを言っているのかしら?

「あの契約はね、エリザベスちゃんがしたものと同一ではないの」

 淡々とした口調だった。ヴィニー殿下がちらりと自分の足元に視線を落とす。ゆらり、とヴィニー殿下の影が揺れた気がした。

「同一ではない、とは……?」
「人間からの契約なら、その人が『生きている間』になるのよ。精霊は長生きだからねぇ」

 頬に人差し指を添えて、しみじみと語り出すソフィアさんに、ヴィニー殿下がハッとしたように視線をソフィアさんに向けた。

「まさか、精霊からの契約は……」
「察しが良いね、ヴィンセントちゃん。そう、精霊からの契約は、『契約者とともに消える』ことを意味しているのよ」

 契約者とともに、消える?

 ばっとソルとルーナに視線を向けると、ぷいっとそっぽを向かれた。

「この子たちはね、あなたに置いて行かれたくないみたいねぇ」

 軽く肩をすくめるソフィアさんに、私は困惑してなにも言えなかった。ヴィニー殿下が、考えるように顎に手を掛けてソルとルーナに言葉を紡ぐ。

「それだけリザのことを好きってこと?」
「ヴィニー殿下?」
「それは」
「そう!」

 きっぱりと言い切った精霊たちに、ヴィニー殿下が小さく「なるほど」と呟いた。彼は私に優しく微笑みを浮かべて、それからトン、と椅子の肘掛けを指で突く。

 にゅっと姿を現すシェイドに、ソルとルーナが近付いた。シェイドはおろおろとしているようだったけれど、ソルとルーナにじぃっと見られて動きを止めた。

「あの、ソフィアさん、ヴィニー殿下。それでは、ソルとルーナは……」
「想像していることで当たっているとは思うわぁ」

 ちらりと盗み見るように視線を動かす。精霊たちはきゃっきゃとはしゃいでいるようだった。

「精霊からの契約は、契約者と命運をともにするの」
「なぜ、精霊からの契約限定なのですか?」

 ヴィニー殿下が興味深そうに精霊たちを見てから、ソフィアさんにたずねる。ソフィアさんは「そうねぇ」と一度言葉を切ってから、緩やかに微笑んだ。

「精霊たちは長生きだから、かしら?」
「長生き……だから?」
「ええ。だから、本当に気に入った人と一緒に居たいのよ」
「……それは、自分の存在が消えても良いと思える相手に巡り会えたから、と解釈しても?」
「おお、イイコト言うねぇ、ヴィンセントちゃん。そういうことになると思うのよ」

 ソフィアさんがヴィニー殿下に向かってパチンと指を鳴らした。ヴィニー殿下は、ふむ、と小さく呟いてから精霊たちを凝視する。

「……でも、元々気に入った相手としか契約しませんよね?」
「それはそうよぉ。エリザベスちゃんやヴィンセントちゃんが気に入られたから、精霊たちは契約した。これに関しては適性もあるからねぇ」
「……どうして……、そんな……」

 私が命を落とすことがあれば、ソルとルーナも消えてしまうという契約をしたの……? 精霊たちは私たちの視線に気付いて、こちらに顔を向けた。
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