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1章
17話 別れ
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「リュミエール。ここを脱出するぞ」
「へ……脱出……ですか?」
リュミエールは分からない。
そんな顔をしているけれど、これには理由が当然ある。
「考えてみろ。俺は一体どれだけの活躍をした?」
「え……それ私に言わせるんですか?」
「……仕方ない。だが、やったことを考えてみろ。そして、ここは魔族が支配していたんだぞ。騎士団長も殺され、ここの屋敷の人数も減っているだろう」
「そうですね」
「そこで俺の様な最強の男がいたらどうなる?」
「勧誘……する……ですか?」
「そうだ。分かっているじゃないか。断って済むならいいが、そうしてもなおも食い下がってくる貴族も多い。前のパーティの時も苦労したものだ」
「なるほど」
「だから脱出する。一応……セレスタ達には最後に会ってからにはするが、この街で何か欲しい物はないか?」
「え……特にないかと」
「じゃあ行くぞ」
「え? もうで……ええ! せめてお風呂に!」
「後で俺が作ってやる」
「そんな簡単に!?」
俺は叫ぶリュミエールを抱き抱え、窓から身を躍らせる。
そして、誰にも気付かれずに、町中を疾走した。
探すこと数分。
セレスタは役所で話をしていた。
「ようセレスタ」
「ええ? シュタル様? どうしてここに?」
「ああ、ちょっと最後の確認をしたくてな。皆困っている事はないか?」
「ええ、十分な量の金額を渡されたし……それでどうしてここに? と、すいません。少し外します」
「ええ、どうぞ」
受付の人に軽く話して、セレスタと外に出る。
俺は彼女に領主達のことを話す。
「あの……それでしたら、あたし、領主の館に仕えてもいいでしょうか?」
「俺は別に気にしないが……いいのか?」
「はい。あたしの元の場所も……別に嫌いではなかったのですが、ここで……やりたいことが出来ました」
「やりたいこと?」
「はい。シュタル様の銅像を建てようと思います」
俺は目の前の女性が何を言っているのか意味が分からなかった。
なので、もう一度聞く。
「やりたいこと?」
「はい。シュタル様の10mサイズの銅像を建てようと思います」
サイズまで明確にしろ……という訳ではないんだが……。
「なぜ?」
「決まっています! シュタル様が最強であることをこの街に来た人全員に知らしめるためです。その為には銅像がもっとも分かりやすくて、いいと思うのですが」
「そう……かもしれないな」
最強ってそういうことかな? とは思わないこともないけれど、俺の最強を知らしめたい。
そう言ってくれるのであれば断ることはないだろう。
「セレスタ。この街での後の事は任せた」
「後のこと……ですか?」
「ああ、俺は今日にでもこの街を発つつもりだ。後の事は任せる」
「え……そんな。なぜでしょうか」
「俺が最強だともっと多くの者に知らしめねばならんからだ」
「なるほど……畏まりました。来たい時にはいつでもここにお越しください。その時には……15mサイズのシュタル様の銅像がお出迎えするでしょう」
「……ふ」
もうなんて言っていいのか分からなかったので、軽く笑っておくだけにする。
「それでは俺はもう行く。リュミエール。何か言いたい事はあるか?」
「え……その……頑張ってください?」
「ええ、ありがとう。光の巫女様。でも、シュタル様の事もよろしく頼むわ」
「……はい」
「よしでは行くか」
俺はリュミエールを再び抱き上げて外に向かう。
その途中に思い出したので冒険者ギルドに寄る。
ファイアードラゴンの素材を回収し、残っていた突撃牛を全て出した。
そして城壁へと辿り着く。
今回の兵士は前回の時とは違ったので問題はなかった。
けれど、違う者達が俺を待っていた。
「バスラ……セルジュ……メリア……」
俺を追放した3人が、何故か待っていたのだ。
「どうしてここに?」
俺はリュミエールを降ろしながら尋ねる。
「その……な。色々と……助かった。感謝する」
バスラがそう言って、俺に頭を下げてくる。
俺は、首を振ってそれを断った。
「気にするな。別に今までと大して変わらんだろう。今更だ」
「でも……俺達が……お前を追放したから……」
「別に気にしていない……と言ったら嘘になるが、それでも、いい出会いはあった」
俺はリュミエールの方をチラリと見る。
今度はメリアが口を開いた。
「それでも……ごめんなさい。私達が弱かったばっかりに……」
「いいと言っているだろう。むしろ、お前達には迷惑をかけた」
「そんなことない! 私達は……あの時、一緒に……一緒に最強になろう。そう決めたはずだったのに……」
「……」
俺は彼女の話す言葉に懐かしさを感じる。
懐かしい。
俺が最強を目指すことになった理由……思い出……リーサ……。
「と、しんみりする話はなしだ。言っただろう? 俺も……俺で思う所はあった。だから……もうこの話はなしにしよう。お前達は……お前達でやるといい」
「シュタル……」
「それじゃあな。俺はこれから行くところがあるんだ」
「行くところ?」
「ああ、王都に行く」
「どうしてまた」
「さあな。それじゃあ行くぞ!」
「きゃあ!」
俺はリュミエールを再び担ぎ上げると、王都の方に向かって進む。
「シュタル! 今度会った時は俺達が助けてやるからな!」
「期待している!」
俺はかなりの速度で走り、街から離れてからリュミエールを降ろす。
「急で悪かったな」
「いえ……そんなことありません。皆さん……いい方々でしたね」
「ああ、俺には勿体ない位のいいやつらだ」
「はい。でも、私は……シュタルさんが追放されて……良かったと思ってしまいます」
「なぜだ?」
「だって、シュタルさんがいなかったら。きっと……出会えていなかったから」
「何を言う。もし俺があのパーティのままでも、お前を救っていたよ。リュミエール」
「……もう。それは反則です」
俺達はこんな会話をしながら、王都への道を進む。
***************************
ここまで読んでくださり本当にありがとうございます。
明日からもしっかりと投稿を続けて行きますので、良ければご覧ください。
そして、私の書いた作品である。『不治の病で部屋から出たことがない僕は、回復術師を極めて自由に生きる』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/548810169/328629213
が12月16日に発売されるので、無料で読める内にもしお時間があればご覧ください。
こちらとは雰囲気はかなり違っていますが、面白いので是非軽く見てみてください。
「へ……脱出……ですか?」
リュミエールは分からない。
そんな顔をしているけれど、これには理由が当然ある。
「考えてみろ。俺は一体どれだけの活躍をした?」
「え……それ私に言わせるんですか?」
「……仕方ない。だが、やったことを考えてみろ。そして、ここは魔族が支配していたんだぞ。騎士団長も殺され、ここの屋敷の人数も減っているだろう」
「そうですね」
「そこで俺の様な最強の男がいたらどうなる?」
「勧誘……する……ですか?」
「そうだ。分かっているじゃないか。断って済むならいいが、そうしてもなおも食い下がってくる貴族も多い。前のパーティの時も苦労したものだ」
「なるほど」
「だから脱出する。一応……セレスタ達には最後に会ってからにはするが、この街で何か欲しい物はないか?」
「え……特にないかと」
「じゃあ行くぞ」
「え? もうで……ええ! せめてお風呂に!」
「後で俺が作ってやる」
「そんな簡単に!?」
俺は叫ぶリュミエールを抱き抱え、窓から身を躍らせる。
そして、誰にも気付かれずに、町中を疾走した。
探すこと数分。
セレスタは役所で話をしていた。
「ようセレスタ」
「ええ? シュタル様? どうしてここに?」
「ああ、ちょっと最後の確認をしたくてな。皆困っている事はないか?」
「ええ、十分な量の金額を渡されたし……それでどうしてここに? と、すいません。少し外します」
「ええ、どうぞ」
受付の人に軽く話して、セレスタと外に出る。
俺は彼女に領主達のことを話す。
「あの……それでしたら、あたし、領主の館に仕えてもいいでしょうか?」
「俺は別に気にしないが……いいのか?」
「はい。あたしの元の場所も……別に嫌いではなかったのですが、ここで……やりたいことが出来ました」
「やりたいこと?」
「はい。シュタル様の銅像を建てようと思います」
俺は目の前の女性が何を言っているのか意味が分からなかった。
なので、もう一度聞く。
「やりたいこと?」
「はい。シュタル様の10mサイズの銅像を建てようと思います」
サイズまで明確にしろ……という訳ではないんだが……。
「なぜ?」
「決まっています! シュタル様が最強であることをこの街に来た人全員に知らしめるためです。その為には銅像がもっとも分かりやすくて、いいと思うのですが」
「そう……かもしれないな」
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そう言ってくれるのであれば断ることはないだろう。
「セレスタ。この街での後の事は任せた」
「後のこと……ですか?」
「ああ、俺は今日にでもこの街を発つつもりだ。後の事は任せる」
「え……そんな。なぜでしょうか」
「俺が最強だともっと多くの者に知らしめねばならんからだ」
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「……ふ」
もうなんて言っていいのか分からなかったので、軽く笑っておくだけにする。
「それでは俺はもう行く。リュミエール。何か言いたい事はあるか?」
「え……その……頑張ってください?」
「ええ、ありがとう。光の巫女様。でも、シュタル様の事もよろしく頼むわ」
「……はい」
「よしでは行くか」
俺はリュミエールを再び抱き上げて外に向かう。
その途中に思い出したので冒険者ギルドに寄る。
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そして城壁へと辿り着く。
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けれど、違う者達が俺を待っていた。
「バスラ……セルジュ……メリア……」
俺を追放した3人が、何故か待っていたのだ。
「どうしてここに?」
俺はリュミエールを降ろしながら尋ねる。
「その……な。色々と……助かった。感謝する」
バスラがそう言って、俺に頭を下げてくる。
俺は、首を振ってそれを断った。
「気にするな。別に今までと大して変わらんだろう。今更だ」
「でも……俺達が……お前を追放したから……」
「別に気にしていない……と言ったら嘘になるが、それでも、いい出会いはあった」
俺はリュミエールの方をチラリと見る。
今度はメリアが口を開いた。
「それでも……ごめんなさい。私達が弱かったばっかりに……」
「いいと言っているだろう。むしろ、お前達には迷惑をかけた」
「そんなことない! 私達は……あの時、一緒に……一緒に最強になろう。そう決めたはずだったのに……」
「……」
俺は彼女の話す言葉に懐かしさを感じる。
懐かしい。
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「と、しんみりする話はなしだ。言っただろう? 俺も……俺で思う所はあった。だから……もうこの話はなしにしよう。お前達は……お前達でやるといい」
「シュタル……」
「それじゃあな。俺はこれから行くところがあるんだ」
「行くところ?」
「ああ、王都に行く」
「どうしてまた」
「さあな。それじゃあ行くぞ!」
「きゃあ!」
俺はリュミエールを再び担ぎ上げると、王都の方に向かって進む。
「シュタル! 今度会った時は俺達が助けてやるからな!」
「期待している!」
俺はかなりの速度で走り、街から離れてからリュミエールを降ろす。
「急で悪かったな」
「いえ……そんなことありません。皆さん……いい方々でしたね」
「ああ、俺には勿体ない位のいいやつらだ」
「はい。でも、私は……シュタルさんが追放されて……良かったと思ってしまいます」
「なぜだ?」
「だって、シュタルさんがいなかったら。きっと……出会えていなかったから」
「何を言う。もし俺があのパーティのままでも、お前を救っていたよ。リュミエール」
「……もう。それは反則です」
俺達はこんな会話をしながら、王都への道を進む。
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