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◆第一章
6.
しおりを挟むキスが外れて、少しだけ距離が出来て。
少し驚いたような顔。
「――――……へえ? ……まだ抵抗できるのか」
「……っ?」
興味深そうな顔をして笑う。
身の危険しか、感じない。
逃げたいのに再び腕を掴まれて、逃げられないまま、また顎を掴まれて顔を覗き込まれた。
「唾液に催淫効果があるんだけどな……効きにくいのか?」
「……っ……っ」
催淫、効果。
――――……そんな言葉を、自分に対して、使われるなんて……。
「……か、かいらくって……」
「快楽って言ったら、快楽。お前が善がれば精気が出る。オレはそれを魔力に変えられる」
「――――……」
なんか……なんか、そういう悪魔みたいなの、居なかったっけ。
……淫魔……とか。
なんかそういうやつ……。
獣人て……そういうのなの??
「人間界で人型で居るには、かなりの魔力を使うんだよな。本当は獣人同士の方がより効果的に得られるんだが、人間界には獣人は居ないから、まあ、人間で我慢するしかない」
必死で理解しようと頭をフル回転。
人間で我慢。
……つまり、オレで、我慢……?
よく、分かんないけど。もう、とにかく、嫌な予感しかしない。
「――――……っっ無理……っ」
「無理?」
「よくわかんない、けど……っ せ……せめて女の子に、しろよっ……っ」
「――――……」
「……オレ、男、だしっ!」
顎をとらえていた手から逃れ、腕も振り解いて、後ずさる。
このやりとりで分かってるけど。
力も強いし、でかいし、力ずくならできそうなのに、なぜか無理やりはしてこない。
良く分からないけれど、オレはそれをいいことに、壁際ギリギリまで逃げながら、目の前の無駄にイケメンな、獣耳の生えた男を、睨む。
すると、ますます興味深そうにオレを見て、笑った。
「今日な、オレ、あそこで、かなりの数の人間を見てたんだよ」
「……っ?」
何の、話……?
「オレには人間のオーラが見える。そいつの持つ性質が。まあこれは獣人のも見えるんだけどな」
「――――……オーラ?」
「……お前、な」
「――――……」
何を言われるんだろうと、身構えていたら。
「底抜けにお人よし。騙すなら騙される方が良いとか、心から思ってるタイプだよな?」
「……っなんなんだよっ!!」
クックッと笑いながら、オレに近付いてきて、再び、オレの腕を取った。
「お前、オレに、他の奴をこんな風に襲えって、言える?」
「――――……っ」
「お前がどうしても拒絶するなら……そうだな、そこらの女でとりあえず済ますっていうのも有りなんだけど……」
「――――……」
「そうしてって、言えるか?」
そんなの、言えるに、決まって……。
言わなかったら、オレが、何か、身の危険に、合うんだろ。
いくらオレだって、そこまでお人よしじゃ……。
言えるに決まって……。
「――――……ッ……」
ぐ、と唇をかみしめる。
オレが知らないとこでそれが起こるならまだしも。
オレが逃れるために、絶対誰かが被害にあうとか……。それは嫌、だけど。
でもでも、でも、絶対オレも嫌だけど……!!
「な? 言えないんだろ?」
……く……!
なんか勝ち誇ったみたいな顔、ものすごいムカつくんですけど。
なんなの、もう、ほんとに。
ほんっとに、何なんだー!!
言えなくたって、オレだって、そんなの受け入れる訳には、いかないし……!!
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