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偽善者と裏切る者 二十九月目

偽善者と大湖戦線 その04

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 説明をしようと思ったが、全然上手くできないことに後で気づいた。
 なぜなら、彼女たちのプライバシー以前に隠していることが多かったからだ。


「──さっぱり分からん」

「別に信じてほしいわけでもないし、そもそも説明する気もないからな。リヴェル、お前はお前のやりたいようにしていてくれ。俺も俺で、やることをやるだけだ」

「…………それが、幼女なのか?」

「いろいろあるんだよ。ほら、こういうとき便利な言葉があるだろ──この世界は何でもありってな」


 AllFreeOnline、すべてが自由だと言っているのだから何をしてもいいだろう。
 基本、説明に困ったらこれを言っておけばなんとでもなるのだ(暴論)!


「その言葉で納得できるだけのやらかしっぷりを見せているのは、貴様も含めてごく少数なんだがな」

「そこまでか? アルカとかが何でもありと言われたら納得できると思うけど、俺は違うと思うんだけど……」

「……貴様も大概だぞ」

「ははっ、冗談が上手だなリヴェルは。それよりほら、そろそろ行った方がいいぞ」


 どうやら本当にスケジュールは不味かったらしく、まだいろいろと言いたげではあったが、結局彼は去っていった。

 俺もだいぶ時間を潰せたので、認識をまた調整して移動を開始する。
 ……俯瞰して辺りを調査したので、だいぶいろんなことが分かったぞ。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 しばらくして、『月の乙女』のメンバーたちが街に入ってくる。
 戦闘班は冒険ギルド、生産班は生産ギルドでそれぞれ活動するようだ。


《メルはそちらに居るんですよね?》

「そうだねー、ますたーたちの方も合間合間で確認する予定だから、寂しくは無いよ」

《……それはあまり気にしなくても大丈夫ですよ。ですが、こういったレイドイベントでは時に魔物がどこからか内側に侵入してくる場合もあります。皆さんのこと、しっかりと守ってくださいね》

「うんうん、私に任せてよ……さて、これからどうしようか?」


 クラーレと繋げた念話を切り、改めて周囲の状況を確認する。
 俺の周囲には、『月の乙女』が誇る六人の生産者が待機していた。


「──メル先生」

「そうだね、みんなはまずどこかで集まって生産をした方が良い。誰か、ギルドに行って簡易の生産道具と場所を許可を貰ってきてくれるかな?」

「うっす、ならアタシが……」

「じゃあ、お願いねクーチェ。フォルとマーヌは整備がメインになるだろうから、その準備だね。プリパレとアルミ―、シーエはとりあえず大量に作っていこう」


 鍛冶、裁縫、調薬、錬金、機械、料理を特に鍛えてきた俺の弟子たち。
 称号『生産を極めし者』を持っており、必ず一定以上の品質でアイテムを作れる。

 彼女たちには今回、徹底して参加者たちのサポートをしてもらう。
 レベルと技術、二つの意味で経験値を溜めることができるいい機会だしな。

 しばらくすると、クーチェが戻ってきてどこを使ったらいいか聞いてきた。
 生産職も割と集まっているようで、少し遅れてきたので場所は街の内側に近い。

 内側の方が安全ではあるが、先ほどクラーレと語った通りどこに危険があるか不明だ。
 ならば最前線で生産を行った方が、ある意味効率がいいんだけどな。


「まあ、過ぎたことをいちいち気にしてちゃいけないよね。何か、質問はある? ──ありそうだね、シーエ」

「はい。あの、わざわざ簡易の生産道具が無くとも、合格祝いにメル先生が用意してくださった物がありますよね?」

「……あー、それね。答えは簡単、妬みを買わないためだよ。みんなは立派な私の弟子、自分たちで思っている以上に優れた生産士だからね。あえて簡易の生産道具を使って、程よく調整するんだよ」


 まあ、それを認識されると困るので、少し細工して普通の生産道具を使っているように見せかけるけど。

 彼女たちは俺の作るアイテムが普通じゃないことを理解しているし、もしそれが世間に露見した場合なども理解している……相当面倒なことになるんだろうなー。


「ティーチャー、どうせならフルでやってみたかったでーす」

「アルミ―も我慢してね。どうしてもって言うなら、劣化術式を組み込んでおくけど。それと、目立ちたいならそれでもいいよ? どれだけ面倒になっても、そこは責任を取らないけど」

『…………』

「うん、決まりだね。頑張った子には、ご褒美に──こちら! ちょっと便利な妖精さんと契約できる……かもしれない魔道具!」


 精霊よりも種類が多様な妖精の内、生産の補助が可能な個体が確定で出てくる魔道具。
 契約できるかは使用者次第だが……まあ、彼女たちならできるだろう。

 妖精は精霊たちを使役できるので、彼女たちが自分の代わりにいろんなものを用意してくれる……彼女たちは、生産に必要なことだけをやればいいというわけだ。


「そうだねぇ……一番頑張った、そう思える貢献をした子にプレゼントするからね。それぞれ自分にできることを考えて、張り切ってみよう!」

『おー!』


 称号の『生産を極めし者』を得る過程で、自分たちの得意分野以外も学んでいる。
 他にも手を出すか、得意分野だけで勝負するのか……そこも含めて頑張ってほしい。


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