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偽善者と終焉の島 中篇 七月目

偽善者とウォッチング

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夢現空間 生産室


「……誰も構ってくれなかった……」


 チャロとの闘いを終え、暫しの安らぎを感じているのだが……眷属が、誰も俺を構ってくれなくなってしまった。


「やっぱり……許可したの拙かったのか? ――戦闘許可」


 それはチャロと闘う前、眷属に告げた一言が原因であると思われる。

 エリアボスは別にしても、フィールドに徘徊する魔物ならば、ごく一部を除いて戦闘を許可したのだ。

 ……まぁ、元々俺以上のステータスの持ち主達が負けることなんて無いんだがな。


「――そして、誰も居なくなった」

『ちゃ、ちゃんといるよ?』

「あぁ、シー以外は全員外に行ったけどな」

『今までメルス君が抑えてた分が、きっと溢れ出たんだよ』

「えー、戦闘狂なの? うちの眷属達……」


 一狩りどころじゃないだろう。
 でも、ちょっと寂しいな……。


「……よし、シー。一緒に観ようぜ!」

『観ようぜって……どうするの?』

「観測兵器を飛ばして、三つのエリアを空撮するんだよ。事前に連絡を回しておくから、うっかり破壊ってことも無いだろうしな」

『大丈夫かな……?』

「あ、先にこれを被ってくれ。VR的な映像が観れるようにしてある」

『メルス君……ゲームの中でゲームをやってるみたいだよ』


 細かいことは気にしない。
 だって、全てがAll自由Freeなのだから。


◆   □   ◆   □   ◆


「(それじゃあ、以降の会話は念話でやることにするぞ。もし眷属が帰って来た時、頭にヘルメットを被った二人組がブツブツ何か言ってると言われたら……心が折れるしな)」

《確かに、それは……折れるよね》


視点移動中
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「(まずは『最果ての草原』だな。邪子鬼イビルゴブリン黒兎ブラックラビットが多く生息しているぞ)」

《邪子鬼は真っ黒い体と周りに漂う瘴気っぽいのが特徴で、黒兎は巨大化した黒い兎だよね……ちょっと形相が怖いけど》

「(瘴気に容姿を怖くする成分でも入ってるんじゃないか? ……お、見つけたぞ!)」

《あれは……スーお姉ちゃんだね。あ、邪子鬼が……!》

「(スー、全然気にしてないな。(結界魔法)で全部防いでいるからか?)」

《お姉ちゃん、鼻歌歌ってるよ。しかも、あの巫女さんの話のED……》

「(一応あれってダンスなのかな? 曲名の後半がダンシングだし)」

《……って、そんなことを言ってる間に!》

「(あーあ、完全にアレやん。何で囲って爆発させて吸い込んでるんだよ……)」

《職業:結界士だからかな?》

「(むむっ!? あそこにいるのって、リアじゃないか?)」

《あれは……リアさんだね。里帰りの途中なのかな?》

「(あらあらまぁまぁ、黒兎を一気に殲滅。いつの間にか茨の制御が上手になったな~)」

《メルス君、現実を見よう……完全にオーバキルだよ! 破裂しちゃってるよ!!》

「(俺だって、俺だって見ようとしたよ! したけど、どうして二人共グロ映像を見せるのさ! 爆発なんてさせたらブチョッてなるでしょうが! 茨で絞ったらグチャッてなるでしょうが!!)」

《……次、行こう?》

「(あぁ、次に逝こうか)」


視点切り替え中
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「(――よし、ちゃんと視点切り替えもできたみたいだな)」

《ここは……『エレト平原』だね》

(「ぶっちゃけ、ここが一番魔物の種類が多いからな。大体の眷属はここにいるんじゃないのかな?)」

《本当だね。ヤンちゃんやティンスちゃんにクエラムさん、グラちゃんやセイちゃん、ミシェルちゃんやアリィちゃんもいるね》

「(……正直、ここに居る魔物が一番可哀想だと思う。強者+機巧乙女の集団が最も多くいるから、一番早く全滅すると思われるしな)」

《みんな……やり過ぎだよ》

「(それにみんな、新しく創った合成技を使いたいんだな。本当に、俺より生み出す才能があるんじゃないか? 俺が『合成武技』をあの時創るのに、一体どれだけの思考を割いたと思ってるんだよ……)」

《メ、メルス君。何でも大変なのは最初なんだよ。それができたメルス君は、そ、その、凄いと思うよ》

「(……ハハハ。おい、見てくれよ。ティンス先生、俺の創った武技を俺以上に使いこなしてるぜ。同時に何種類も発動させているよ。並列しかできない俺なんかと違って、直列の発動もできるんだな~~…………ハァ)」

《つ、次行こう! 次に!!》

「(えっ? ……あ、あぁ、逝こうか)」


視点切り替え&介護中
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「「(さて、シーのお蔭でテンションがちょっとだけ上がった。次は『彷徨の森』だな)」

《……もう、恥ずかしかったんだからね。メルス君をどうにかしている間に、誰がいるかは確認したよ》

「(……まぁ、今までに出て来なかった眷属がいるだけだがな)」

《ここにいるみんなは……戦闘というより、調査をしているみたい。頭の良い人ばかり、ここにいるしね》

「(本当だな。俺なんかと違って、一を聞いたら千ぐらい分かりそうな奴らばっかりだ)」

《メルス君……よしよし……》

「(あ、ありがとうな。……ここの奴らが一体何をやっているかを説明するのは無理だな。説明ってのは、自分が理解したことを他者に教えることだし……。分からない奴がやっても意味ないな)」

《そこは、メルス君と同意見だよ。私にも、みんなが何をやっているか分からないよ。どうして魔物が踊っている姿を見て、満足げな顔をしてるんだろう?》

「(よし、じゃあ終わりだな)」


視点移動中
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


玄関


「ま、それはともかく――」

『とりあえず、みんな――』


「『お帰りなさい!』」


 あの後二人で話し合って、みんなを出迎えることにした。
 ……予想通りビックリしていたので、面白いものを見れたと思ったよ。


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