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偽善者と開かれる新世界 九月目
偽善者なしのAFO説明 前篇
しおりを挟むプレイヤーがAFOを始め、必ず地を踏むスタート地点――"始まりの町"。
四方をそれぞれ異なる環境に囲まれた、初心者冒険者たちの町だ。
その地の中央にある噴水の前は、いつも新人たちの集合場所として使われている。
『遅い! 何をやってたの?』『いやいや、ゴメンゴメン、ちょっと設定に時間が掛かってさ』『スゲェ! 本物みたい!』『……動くか』『――"窃盗""窃盗"……』
AFO――All Free Online において、プレイヤーには幾つかのマナーが存在する。
『あら? 新しい祈念者さんかしら?』
『は、はい。そ、それで少し貴方たち、自由民の方との交流の仕方について、訊いておきたくて……』
その一つとして、NPCのことをそう呼ぶのではなく『自由民』と呼ぶことが挙げられる。
この決まりは、運営側が公式にNPCのことを自由民と称した際に、決められたことである。
また、対してプレイヤーのことを、自由民は『祈念者』と呼ぶ。
祈念……つまりプレイする者という意味を籠めたものである(以降の説明ではプレイヤーという呼称を使用する)。
自由民へのマナーは、後は普通の人々に接する時のように応対するいうことであろう。
彼らはまるで生きているかのような自我を有している。
プレイヤーたちも当初は、たかがAIだと高を括っていたが……現代人以上に感情表現豊かな人々を見た後に、考えを改めた。
誠意には温厚さを、悪意には冷淡さを見せる彼らは正に、この世界において生きている言っても過言では無いだろう。
◆ □ ◆ □ ◆
プレイヤーがチュートリアルを経て、初めて向かうことになるバトルフィールド"始まりの草原"。
町の東側に位置するその草原は、初心者でも倒せるような魔物がたくさんいることで知られている(かつてはチュートリアルを行う地もプレイヤー自身で選べたのだが、ある理由によってそれは廃止された)。
『チェリーラビットよ!』『あーはいはい、分かってますって』『"スラッシュ"……凄ぇよ!』『……■■■"ファイアーボール"! うわっ、本当に火が出た!』『……"窃盗""窃盗"……』
AFOにおいて、能力値は九種類に分類されている――
HP:自身の生命力を表す値 0になった際は死亡扱いとなる 主にダメージを受けると減少する
MP:自身の魔力を表す値 0になった際には体調不良が起きる 主に魔法やスキルを使うと減少する
AP:自身の氣力を表す値 0になった際は体調不良が起きる 主に武技やスキルを使うと減少する
STR:自身の筋力を表す値 主に攻撃力に直結するパロメーター
VIT:自身の耐久力を表す値 主に守備力に直結するパロメーター
AGI:自身の敏捷力を表す値 主に機動力に直結するパロメーター
DEX:自身の器用さを表す値 主に成功率に直結するパロメーター
INT:自身の智力を表す値 主に魔法力に直結するパロメーター
LUC:自身の運力を表す値 主に運命力に直結するパロメーター
プレイヤーは様々な行動によって経験を積み、Lvアップ――つまり成長をする。
その時に手に入るBPと呼ばれるポイントを割り振ることで、自身の能力値を高めることができる。
戦闘はその中で最も効率の良い方法だ。
魔物という敵を相手に、強くなるための経験をする。
敵を倒せば相手の経験の一部が流れ込み、自身のLvアップは速くなる。
その為プレイヤーの大半は、魔物と戦闘をしてLvアップを行おうとしている。
戦闘方法にも、現実世界とは異なる方法が取れる。
『……■■■"ファイアボール"!』
――魔法。
現実では見たことの無い空想上の産物だと思われるその御業を。
AFOでは、誰もがMPとスキルという免許さえ所持していれば発動可能なのである。
発動者が詠唱と呼ばれるコマンドを読む動作をするだけでで、それは発動する。
威力はINTの高さやスキルのLvによって決まるものが多い。
そのため魔法を専門に扱おうとする者は、挙ってINTを上げる傾向にある。
また、INTとは別のアクションで威力を高める方法もあるのだが……それはまた、別の機会に。
『"パワーショット"!』
――武技。
一定の決まった所作をなぞることで、その武器が持つ性能以上の威力を発揮することができる必殺技のような代物だ。
必要なのはAPとその技に応じた武器のスキル……逆に言えばこの世界は、スキルが無ければこういった恩恵に肖り辛い、世知辛い環境でもある。
発動者は技名を意識して言うだけ。
魔法よりも速く発動が可能なのだが、代わりとして発動後は一時的に動けなくなるというリスクが付いてくる。
これは武器を正しく扱えない者達が、ある一定水準の卓越した技術を扱う為の――代償であった。
また、オートとなっている武技の発動を、一部の熟練したプレイヤーはマニュアルに変更している。
この機能はとある条件を満たすことで、武技の発動を自在にできるようになるものだ。
自動的に行われる型を己自身でなぞれるようになることで、ある程度自由を持って武技が発動できるのだ。
一時停止のリスクは無くなるが、発動が失敗した場合はより長く硬直してしまう。
速度を取るか自由を取るか――それは、プレイヤー次第である。
威力はSTRやスキルのLv、武器自体の強さによって決定する。
その為金という力の持ち主は高級な武器を装備することで武技の威力をより高めようと考える。
レアな武器には極偶に装備スキルと呼ばれる物が存在し、その中にその装備だけの特殊な武技を有している場合がある。
それらは通常の武技とは卓越した性能を誇り、所持者に強大な力を与える。
……が、それを狙って生み出すことのできる職人など、AFO内でも未だに発見されていない。
強大な力を生み出す力程、最終的に恐れられるものは無い。
それは現実世界での戦争が物語っていた。
きっと、その力を持つ者もそうした考えを持ち、その身を隠したのだろう。
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