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番外編

幸せな事件

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 三森の事があってから暫く。
 発情期を迎えて、その翌月に式を挙げろとしきりに言ってくる両親の要望に応えて、海外の挙式に詳しいサロンに真樹と訪れた。


 人気だという三つの会場と、実際そこで挙式したカップルの写真や動画を見せてもらう。



「綺麗だね」
「そうだな」
「どこも海が見えて素敵。凪さんはどこに行きたい?」
「行きたい?」
「大体同じ条件でしょ?それなら行きたい所に行った方が良くない?」
「確かに」



 書いてある条件は三つとも似たり寄ったり。
 それなら行きたい国を選択して、結婚式が終わればそのまま観光すればいい。



「ハワイ、かなぁ」
「俺もハワイ行きたいなって思ってた!ステーキ食べたい」
「じゃあそうする?」
「あー……今決めなきゃダメ?」
「いや、まだ悩んでいいよ。一回持ち帰ろうか」
「うん」


 というわけで、その日はパンフレットを貰い一度持ち帰った。

 外でランチを食べて、少し買い物をしてから家に帰る。
 帰ってすぐ、パンフレットを見て頭を悩ませている真樹にコーヒーをいれて、隣から真樹の手元を覗き込む。


「ハワイ……ハワイいいよね、行ってみたい。」
「何で悩んでるの?」
「うーん、なんか……直ぐに決めていいのかわからなくて。だってほら、結婚式って大体人生で一回だけでしょ?」
「そうだね」


 横から見る真樹が可愛い。
 そっと真樹の髪に触れて弄っても、真剣な彼は手元に視線を落としたままだ。


「ねえ凪さん、ネズミーランドに行ってみたい。」
「唐突だな」
「だってハワイはアメリカじゃん。本場に行ってみたい。」
「いいよ」


 折角だし、真樹の行きたいところ全部に連れて行ってあげよう。
 一週間と少し、予定を空けておけばいいだろうか。


「じゃあハワイにする?」
「……もう少し悩む」
「うん、時間はいくらでもあるし、思う存分悩んで。」


 俺との事で悩んでる真樹を見るのはいい。
 他人の事で悩んでいるのを見ると腹が立つけれど。

 真樹はきっと俺が優しいだけの人間だと思っているだろうな。
 本当は嫉妬深いし、真樹が誰かに触られていると考えるだけで腸が煮えくり返りそうだというのに。



「凪さん」
「何?」
「ちょっとだけ昼寝していい?なんか……最近眠たくて。」
「うん、もちろん。起こした方がいい?」
「十五分したら起こして。」


 ソファーに移動した真樹は、寝転んですぐ眠りに落ちる。
 ブランケットを掛けてあげて、空になったマグカップを片付けた。


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