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第九十四話 お祝いパーティー

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 特級ポーションを真姫に渡した翌日も橘家に向かった。何故か《桜花の誓い》の五人も橘家に集まるらしく、綾芽と一緒にお邪魔した。

 橘家のお店を今日はお休みにして、貸し切りにしている。テーブルの上には橘父さんが腕によりをかけて作ったであろう沢山の料理がならび、テーブルの周りに招待された人達が座っていく。大人の《千紫万紅》のメンバーにはお酒が、二十歳になっていない《桜花の誓い》のメンバーにはソフトドリンクが注がれた。

「麟瞳さん、詩音、皐月、そして美姫、本当にありがとう。ほら左手がちゃんと再生したわ」

 真姫が左手をクルクルと回して見せる。

「今日は私の左手が生まれ変わったことを皆に報告したいのと、私の左手のために毎日頑張ってくれた皆にお礼をしたくて集まってもらいました。麟瞳さん、乾杯の音頭をお願いします」

 僕はアドリブに弱いんだよ。こんな役割があるなら来たときに言っておいてくれよ。まあ、知り合いばかりで良かったよ。

「只今ご紹介に与りました、龍泉麟瞳です」
「そんなの皆知ってるわよ。もしかして今のは笑うところなのかしら?もっと面白いことを言ってよね」

 何を言っているんだ、真姫さんよ。別に笑わせたい訳ではないからね。

「少し予定より遅れ、真姫や真姫のご両親には本当に心配をかけたと思います。無事に昨日ポーションを渡すことが出来てホッとしました。真姫の左手の再生を祝して、乾杯!」
「「「「「「「「「乾杯!」」」」」」」」」

 無難にまとめることが出来たと思う。皆が飲み物の入ったグラスを合わせ、お祝いパーティが始まった。

「麟瞳さん、つまらない挨拶をありがとうございました。どうですか今日の料理は?父が麟瞳さんに『美味い』と言わせてみせると意気込んでいたんだけど」
「つまらない挨拶で悪かったね。もっと早く言ってくれれば、ウイットに飛んだ挨拶を用意したのに、本当に残念だよ。料理はとても美味しいよ。今度、母さんにも食べさせたいと思うくらいにね。前に料理の研究をここでしたのが懐かしいな。あの時よりも断然美味しくなってるよ」

 カラオケが始まり、どんどんパーティが盛り上がっていく。最近はどこでも簡単にカラオケが出来るんだね。僕もアニソンを歌ったよ。誰もが知っているあの有名な海賊王を目指しているやつをね。大人の《千紫万紅》のメンバーは結構お酒を飲んでいる。昨日で一区切りつき解放された気持ちになっているのかな?

「もうそろそろ理性的な判断が出来なくなっているかしら?」
「真姫姉、大丈夫だと思うよ」

 何だか変な会話が聞こえてきたんだが、何のことだろうか?

「ええ、それではここで重大な発表があります。私、橘真姫は今を以って《千紫万紅》を脱退することにします。そして、今から《桜花の誓い》のメンバーとして新たに活動したいと思います。つきましては、《千紫万紅》と《桜花の誓い》の二つのパーティを擁するクランを麟瞳さんには立ち上げていただきたいと思います。よろしいでしょうか?」

 何の話をしているんだ。僕がクランを設立するだと。どうしてそうなるんだ。

「美姫~、お姉ちゃんが何か変なこと言い出したぞ~」

 美姫に話を振るが、陽気なお姉さんになっていて話にならない。詩音は遥に槍でオーガに止めを刺す話を何度もして、誉められる度に『そんなことないっす』を繰り返し言っている。皐月はパーティの途中から豪快に寝ている。

「こんな大事な話はまた改まってしようよ~。今は皆が冷静に考えることが出来そうにないよ~」
「まあまあ、そんなこと言わずにクランを作ってくれるだけでいいから。よく考えてよ、妹さん達もすぐに高校を卒業してプロの探索者になるのよ。麟瞳さんも心配でしょ。同じクランであれば、どんな活動をしているのかも常に把握できるわ。可愛い妹と、この真姫のためにも頼みを聞いて欲しいな」
「その可愛いという言葉は妹だけを修飾しているのか?まさか真姫も修飾していないよな~」
「(あなたの兄は本当に面倒臭いわね。酔っ払っていると分かっていてもイラッとくるわ)当然妹だけよ」

 何か小声で言っているが………確かに《桜花の誓い》のことは心配なんだよね。

「お願い。クランを立ち上げましょう」
「おう、ガッテン承知の助だぞ~。イェーイ!」
「今の、ちゃんと映像に残しておいてね。皆、上手く行ったわ。ホッとしたからこれから私達だけで盛り上がっていきましょう」

 遠くに真姫の声が聞こえる。だんだん僕は眠くなり、意識が無くなった。


 
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