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第百十一話 鬼の美姫からは逃れられない

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 神戸ダンジョンを探索した次の日の晩に、岡山から帰ってきた美姫と一緒に晩御飯を食べる。僕達のために橘父さんが用意してくれたそうで、美姫のマジックポーチから出された料理が食卓に並んだ。中華料理屋の回転テーブルが欲しくなるほど沢山の料理があった。

「このチンジャオロースや回鍋肉は本場の中華料理屋にも負けていないよ。これって、オークの肉だよな。やっぱり美味いわ」
「リーダーがそう言ってくれると、父も喜びます。オークの肉を知ってしまったら、普通の豚肉は使えないって父も言うんです。オークの肉なんて、取って来るのも大変なのに気楽なものです」
「リーダーが今沢山持ってるぞ。分けてもらえば良いと思うぜ」
「何で沢山持ってるのでしょうか?この前はオークの肉がほとんどないと言っていましたよね」
「昨日取ってきたぞ。ほんとに楽しかったぜ」
「皐月は黙るっす」
「詩音、どういうことでしょうか?」
「美姫が怖いっす。リーダー、なんとかしてほしいっす」

 最近はよく正座をしているよな。皐月がいらんことを言うから、食後に尋問が始まってしまった。鬼の美姫からは逃れられない。全部白状させられたよ。足の感覚がもうないんだが………。

「昨日、三人で神戸ダンジョンに行ってきたんですね。で、十階層まで攻略したんですか。スクロールが沢山手に入って、繋ぐ札というとんでもないものまで手に入れましたの。へーっ、良かったですね………と言うと思いますか?!何の為にCランクダンジョンを完全攻略しに来ているんですか?力を付けてからBランクダンジョンを探索しようって言いましたよね。リーダー、貴方が言いましたよね。その口で」
「はい、おっしゃる通りでございます。ちょっとした手違いで神戸ダンジョンに行くことになってしまいました。申し訳ありませんでした」

 まだ怒りが収まらないのか、解放されるのはまだ先のようだ。足が………。

「正輝さんって方が一緒にダンジョンに入ったんですね。で、特級ポーションを渡したということですね。他にもスクロールを分けたんですね」
「凄いアタッカーだぜ。リーダーが二人いるようだったぞ」
「晩御飯の時にいろいろ聞いたっす。火魔法の剣の使い方の参考になったっす。良い人だったっす」
「リーダーを追放したパーティのリーダーですよね。何でリーダーは追放されたんですか?良い人なのに追放なんかするものなのでしょうか?」
「僕は弱かったんだよ。とてもAランクダンジョンを探索できるような実力がなかったんだ。他の三人のパーティメンバーは僕を邪魔者扱いするだけだったけど、正輝だけは僕のことを思って追放してくれたんだよ」
「なるほど、そうでしたか。リーダー、正輝さんをうちのパーティに引き抜きましょう。リーダーが一番欲しがっていましたよね、高火力の男性アタッカー。条件にピッタリだと思います」
「そんなこと出来る訳ないだろ。正輝は《百花繚乱》のリーダーなんだよ。無理だし、誘っても絶対来ないよ」
「でも、マサキって花の名前ですよ。リーダーには花が集まって来るんですよね。現実的な話だと思います」
「マサキって花があるのか?でも、絶対無理だよ」
「まあいいです。いずれどうなるかわかるでしょう。今回は勝手にダンジョンに行った三人にどんな罰を与えるかですよね。私だけのけ者にして許せません!」

 またもや、火がついてしまったようだ。まだ続くの?もう足の感覚がなくなったよ。

「リーダーから見て、《千紫万紅》はBランクダンジョンでやっていけると思いますか?」
「低階層なら何とかなりそうだけど、それ以上は今のままでは厳しいかな。でも、昨日だけで詩音と皐月の動きがどんどん良くなったんだよ。このまま成長すればいずれは四人でも完全攻略出来るようになりそうだけど、やっぱりメンバーが最低もう一人は欲しいな。美姫はどう思うんだ?福岡ダンジョンを探索していたんだし、Bランクダンジョンの難易度もよくわかってるんだろ?」
「私達は六人パーティでしたから、比べるのは難しいです。あの時より私も詩音も強くなっていると思いますし、アタッカーを比べてもリーダーの方が断然上です。タンクを比べても皐月と良い勝負だと思います。でも、今、この四人で福岡ダンジョンの三十階層を突破出来るかと言われたら、無理だと答えるでしょう」
「綾芽を入れれば良いと思うぜ。《桜花の誓い》の中で一人だけ力が違うぞ」
「確かに綾芽は強いっす。私より強いっす」
「綾芽は《桜花の誓い》を離れないと思うよ。もしも皐月が僕達より強い他のパーティから誘われたら、パーティを離れるかい?」
「いや、このパーティから出ていこうとは思わないぜ」
「そういうことだよ。気に入ってるパーティを出ようなんて思わないよ」
「でも、私達は同じクランに所属しています。ダンジョンによっては、メンバーを組み替えることも十分にありえることです。そうですね、三人への罰は岡山へ帰ったら《桜花の誓い》のメンバーがBランカーになれるように手助けすることですね。全員がBランカーならメンバーを組み替えることが出来るようになります。今のところは綾芽しかBランクダンジョンで通用しそうにありませんが、将来的には分からないですよ。リーダーのスキルで化ける子が出てくるかもしれません」
「美姫、そろそろ膝を崩していいか?足の感覚がないんだ」

 やっと許されたよ。痺れた足を指でツンツン攻撃するのはやめて欲しいが、強くは言い返せない。また怒りに火が付いたら大変だ。

 今日は精神的に疲れたよ。明日からの姫路ダンジョンの探索に向けて早く寝よう。一番風呂もらいますね。











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