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3章

48 社会科見学パート2-2

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カグリア 視点

娘の睨めっこを眺めつつ周りを警戒しているからカグリアよ!

パンパン!

「さあ、目的の採取を始めるわよ。」

「う、うん…」

やっと開放か!という顔の娘を見つつあたしはスイライに近づいた。
別に睨めっこしてとは言ってなかったけどね。

これから起こることを考え、あたしはリリスの肩を軽く叩き…

「気をしっかりね。」ポン!

リリスを励ましたあと、スイライの茎を掴み。ガシツ!?

引っこ抜いた!ズボッ!

「花ちゃん!?」

名前つけたの!?

スイライはサツマイモのような根が付いており、そこが染料になる。

あたしは手早く、花と茎を切断し花を土に植えた。
スイライの顔は苦悶の表情だった…こわ~!

「どうして…どうして…殺しちゃうの?」

リリスが泣き顔で言ってくる。心に来るなぁ…ごめんね。

「落ち着きない。前にも言ったけど採取では殺してないから。」

「でも、さっき…うぐっ…」

「この花の本体は花の方なの、だから花を土に植えればまだ咲くのよ。」

「でも、可愛そうだよ~…」

可愛いそうで採取出来なかったら冒険者になれないわよ。
※冒険者にはならないってば~!!byリリス

あたし達は目で会話した。
これいいわ!

「採取しないと依頼が達成出来ないし、採取が終わればこれを染物屋に行ってリリスの勉強になるの。
可愛いそうだけでは世の中生きていけないわよ。」

世の中には理不尽なことはいっぱいある。リリスだってその理不尽にあった1人だ…

あたしがリリスの頭を撫でた時点で渋々納得したようだ。

やはり種族の差はこういう時に出るのね。

純血の魔導族は基本的に穏やかな性格で争いを好まない。逆に神族は保護から出た者には容赦なく斬り捨てる。

最近は神族は落ち着いているけど知識族が独立した際の神々の行動は凄まじかった見たいね。

月に知識族の国が一つは消えていたみたい。

納得したリリスを愛でつつ、次のスイライを探す。
とはいえ、あの見た目だ…次々と見つかった。

リリスは覚悟を決めたのか泣き顔になりながらスイライを採取始めた。
あたしも周りを警戒しつつスイライを採取した。

30分くらいでカゴいっぱいになり採取終了。

疲れた顔のリリスをおぶり、とりあえず家に帰宅した。

採取が終わった時には、埋めたスイライが生えていたのを見たリリスは固まっていた。

この様子では染物屋には行けないわね…
明日にしましょ。

家ではティーとクリスがふて寝していた。
ルナに理由を聞くとシャーベットを食べさせていたけど、お腹を壊すから少しだけあげたらハマったらしい。

あたしとリリスは一口食べてみたが確かに美味しかった。
結局、リリスが器のシャーベットを平らげ、物欲しそうに空の器を眺めていた。
あたしは一口だけなのに…泣
でも、あたしお母さん!ガマンガマン…

「ルナ、シャーベットはもうないの?」

「あれが最後よ。作ってくれた職人ちゃんがあの様子じゃねぇ…」

ルナはふて寝しているティーを見た。

「普通に作れば?」

「普通に作ったけど違うのよね。多分ティーちゃんだから出来たと思うのよ。」

ティーの有り余る神力によるものなのかわからないけど、ティーが関係しているようだ。
とりあえずモノで釣ってみるか。

「ティーとクリス!干し芋だぞ。ほらほら!」

かばっ!?

干し芋を見せると2人は起き上がり、柵の間から手を出していた。
まるで牢屋だね…

なんか見てると可愛そうなのでクリスはルナが抱き上げ、あたしはティーを抱き上げ干し芋をあげた。

もちゃもちゃ食べてる。

なんとも言えない間があったが、ティーをルナが作った走りぐるまに乗せた。
これで走ってくれればいいのだけど…

ティーはお座りをして干し芋を食べていた。えらいえらい!
とりあえず撫でておくか。ナデナデ…

干し芋を食べて満足したのか、ティーは走りぐるまを動かし始めた。カサカサ…

あれ?これって乗せるだけよかった?
そんなことを考えながらルナが用意したシャーベットの素を設置して様子見た。

やはり、ティーは足腰だけではなく腕も強いようだ。
これなら最強の武神になれる。成長が楽しみだ!

最初のシャーベットが出来たので次々と作って蓄えることになり、ルナは台所と部屋を生き来している。

ルナに材料をこっちを持って来れば?という意見をいう暇もなく走り去って行った。
言えば怒られそうだから黙っておこう。

「はぁ…はぁ…これで全部よ。」

「お疲れ様…」

あたしの目の前に高くそびえ立つシャーベットの器の山があった。
じゅるり…

おっと、いけないいけない早く片付けなければティーに気付かれる。

あたし達は片付けを始めた。

「リリス?つまみ食いはダメよ!」ぐいぐい

「ごめんなさい~」

シャーー!

まずい!ティーのスピードが落ちて来ている。
早く隠さなければ…

「だぁ!!」

クリスが妨害を仕掛けてきた!?

あたしはリリスがつまみ食いしていた器から一口分のシャーベットを掬いクリスの口にねじ込んだ。

するとどうだろうか…あまり笑顔を作らないクリスが満面の笑みを浮かべていた。ホロリ…

そんな可愛い顔を眺めていたいが、片付けをしなければ…

キーーーピタッ!

ふぅ…

ティーは可愛いため息と同時に走りぐるまをゆっくり止め、余韻に浸っているようだ。
身体が熱くなっているのか白い肌がほんのり赤くなって、周りに蒸気を発していた。
リリスやクリスが近づいたら火傷しそうね…

スチームティーちゃんとか呼ぼうかしら?
お風呂場に連れて行ったら蒸し風呂になっていいかも。

よし!汗かいてるしお風呂入ろう!

「ルナ!ティーとお風呂入ってくる!」

「わかったわ、リリスちゃんとクリスちゃんはティーちゃんのあとね。」

「じゃあ、ティー?お風呂行くよ!」ガシッ!ジュー!?

「リアお母さん!?手が焼けてるよ!?」

「大丈夫大丈夫!神族だからこれくらい平気よ。」

確かに熱したフライパンに手を乗せているような音が聞こえるけど神族には状態異常はほぼ効かない。
効くとすればルナのような邪神面を持たない神族が呪印などの呪術に弱いことくらいだ。

そういえば、ずっと行ってないな…溶岩風呂…
今度、安らぎ火山に旅行に行きたいわね。
ルナに相談しよう。

あたしはティーの服を脱がせ、水の入ったたらいの中に入れた。

シューー!

お風呂場がティーをたらいに漬たら水が蒸発して、湯気で視界が曇った。

おっと!換気換気!

蒸し風呂にしたいが見えないと不便なので少し間換気することにした。

たらいの水がすぐに干上がったので水魔法で水をどんどん追加。
あたしにとっていい温度になってきた。

ティーも水が気持ちいいのか蒸気を発しながら微笑んで水に浸かっていた。

あたし達は10分くらい蒸し風呂を楽しみ、冷めたティーをルナに渡した。
気持ちよかったらしく、ほんわかした顔だった。

リリス達が入るにはまだ暑いので熱気を全て外に出した。
森の中だから問題ないでしょう。

ボトッ!

外の魔物が落ちたのかしら?
やったね!晩御飯増えるよ!
後で見に行きましょ!

残りの娘達のお風呂を終え。
晩御飯のデザートのシャーベットでみんな笑顔になった。
あ~美味しい!

その後、ルナはオレンの実や他の果実を買い漁るようになり、デザートのレパートリーが増えた。
その都度、あたしとルナで蒸し風呂を堪能している。

もうすぐ、世界ハイハイレースが始まる。
あたしとルナはティーとクリスの保護者として出場して、リリスは誰に面倒見てもらおうかしら?

あたしはあの方に手紙を書き始めた。





「ティー寝なさい!」

「ぶー!!」

手紙は明日書こう。



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