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8章

133 空間魔法と邪神

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マリ 視点

私はルナールさんから空間魔法について聞くことになった。

「空間魔法とは表の世界『表界』から異界に繋げる魔法なのよ。」

「異界に繋げる?転移とか召喚とかですか?」

「そうよ。一般的に転移魔法や召喚魔法というのは空間と空間を魔法で繋げるものだから魔法の種類としては空間魔法になるの。
そして、アイテムボックスは表界と自分で作った空間を繋ぐ魔法なのよ。」

「そうなんですね。じゃあ、転移魔法も覚えないと出来ないですか?」

サモエドさんが転移魔法は難し過ぎてすぐに辞めたと言っていた。
私には無理かな?

「ええ、でもリアみたいに無理矢理でも出来るみたいよ?」

「え?無理矢理?」

「まず、貴女が知りたいのはアイテムボックスと言われる収納魔法よね。」

スルーされた。
無理矢理なにをするのか気になる。
今度カグリアさんに聞けたら聞くか。

「はい、でも転移魔法も覚えたいです。」

「そうなると…」サラサラ…

そう言って、ルナールさんは指の先端が光らせ空中に光の文字や模様を素早く描いていった。

「これが描けないと無理ね。」

「はぁ?」

一瞬で描かれた魔法陣に見惚れていたら、とんでもないことを言われた。
これを描けと?

「空中に描けってことですか?」

「別に壁でも床でも描きやすい場所ならどこでもいいわよ。問題はそこじゃないの。」

「え?そんな素早く描くだけでも高難易度なんですが…」

「この魔法をよ~く見て!はい、虫眼鏡。」

ルナールさんから虫眼鏡を渡されたので魔法陣をよく見た。
すると線が掠れているように見えた。

「なんか線が掠れてますね。」

「虫眼鏡じゃあ見えないか…なら、よいしょ!」ドン!

ルナールさんは描いた魔法陣から学校とかで使われる映写機みたいな物を取り出した。

「これで見えるかしら?」

ルナールさんは映写機のカメラを魔法陣に当てると映写機から光が出てテーブルに当たり、魔法陣の一部が見えた。

「え!?文字?」

1本の線と思っていたものがなんと文字だった。
米に文字書く人がテレビに出てたけどあんな感じだ。

「こんなに小さく描く意味ってあるんですか?」

こんなの必須なんて無理だよ!ルナールさんの冗談であってほしい。

「術式はこれだけ小さく描かないとコンパクトに出来ないのよね。文字の大きさを大きくすれば、その分魔法陣も大きくなるのよ。
マジックバックとか作るとなると必須の技術よ。」

「でも、転移札を見たことありますが筆で描いたような模様でしたよ。」

転移の魔法は冒険者が札を使って移動するのを見たことがある。
その時の見た札は中央に転移と文字が書いてあってそれを囲むように筆で線を描いた簡単な模様だった。

「ああ、こういうの?」

そう言ってルナールさんは紙の束を取り出した。
その紙は私が見たものだった。

「これもね~同じなのよ。」

そう言ってルナールさんが札を映写機に映し出すとびっしりと文字が書かれいた。
うそー!!

「この札は私が商業ギルドに下ろしている。魔力を込めた場所を記憶して破るとその場所に転移する魔導具なのよ。」

この札はルナールさんが制作したものだった。
もう、日本のお札の偽造防止レベルの技術が使われている感じがする。
私には無理だ。

「これが正規の空間魔法のやり方ね。」

ん?正規?

「他の方法があるんですか?」

「ええ、加護として授かる事で面倒な魔法陣を描かなくても空間魔法を使えるわ。」

おお!加護!
そういえばこの世界には神様がいるんだった。
なんだ、神様から加護を授かればいいのか!

「でも、時空の神、クロノウェルさんから加護を授かるのは難しいわよ。」

「なにをやるんですか?」

「会って彼と話をするのよ…」

「それって簡単なんじゃ?」

私は興味本位で聞いてみると、ルナールさんは私の肩に両手を置き…

「気が狂うから辞めない。せっかく仲良くなれたのに失いたくないわ。」

いやいやいや!そんな悲しそうな顔で言わないで!
なに!SAN値でも削れるの?
もしかして邪神?
クトゥルフ神話の読みすぎかな?

「まさか邪神じゃないですよね。」

「あら?よくわかったわね。言葉濁してたのに。」

冗談のつもりが邪神だった!

「嘘ですよね!」

駄目押しの質問!

「本当よ!いい人ではあるのだけど、見た目がね…」

答えは曖昧だけど本当っぽい…
そして、ルナールさんは会ったことがあるようだ。

「どうしてもクロムウェルさんに会いたいというなら送るけど…これを見てから決めて…」

そう言ってルナールさんは黒い本を出した。

「この本は?」

「この本は邪神図鑑といって創造神が神と定めた人を詳しく載せた本よ。これは邪神版ね。」

ルナールさんはページをめくった瞬間に私は寒気に襲われた。
ただの本の筈なのに身体が冷たくなっていきガタガタ震えてきた。

「あった流石にこれをそのまま見せるのは危ないわね。」

ルナールさんは写真が載っている場所を手で隠し私に見せて来た。
しかし、ルナールさんの手から漏れた写真が見えた瞬間…

黒い触手に闇の沼に引きずられそうなイメージに襲われた。

パタン!

「やっぱりダメね。本物にあったら廃人確定だわ。」

「はっ!?ハーハー!」

ルナールさんが本を閉じてくれたからか私は意識を取り戻した。

「ルナ…さん…」

「落ち着くまで喋らないで舌噛むわよ。」

そう言われて私は顔をテーブルに乗せ意識が整うまで休んだ。

「今のはほんの一部しか見せてないけど、本物はあれ以上にヤバイのよ。軽い気持ちで会ったら最後、意識のない人形か気が狂った人になる事が多いわ。ただ、ごく稀に恐怖耐性がある人がクロムウェルさんに会い加護を与えた人がいるって聞いたわね。」

うー…ルナールさんその本危ないので見せないで下さい。

「こんなに空間魔法が難しいなんて…諦めます。」

「それがいいわ。高いけど魔導具を使えば似たこと出来るからわざわざ苦労する道を選ばなくてもいいわよ。」

マジックバックの存在はサモエドさんから聞いているけどそれも資格がいると聞いてるし高額らしい。

「空間魔法の原理とか話す必要は無くなったし、ココロッカ村にそろそろ行きますか。ウーダちゃんは外で寝ててね。」

『きゅ!』

ルナールさんはウーダちゃんを抱き上げ日が当たる所にカゴを出し寝かした。
人間なら日射病になるわね。

「マリさんはこっちに来て。」

そう言われ着いて行くと玄関の近くに魔法陣が書かれていた。

「忘れ物はない?」

「王宮にあります。」

「王宮の忘れ物は諦めなさい。」

「…はい」

そこまで必要な物はあそこには無いからいいや。

ルナールさんがぶつぶつと呪文を唱えている。

「木を軸に水の16と金の395…に転移よろしく。」

ん?
呪文じゃないの?
よろしくって厨二みたいなセリフないの?
私の混乱とは裏腹に魔法陣は光り出した。

「準備出来たから行きましょう。」

「はい…」

そう言われて魔法陣に乗ると私は光りに包まれ目を閉じた。
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