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タクマの決心
家令から臣下へ
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コラルたちが帰った後、家族たちは動き足りなかったらしく、暗くなるまで体を動かしていた。そんな家族をにこやかに見ていたタクマだったが、呼びに来たアークスの言葉で憂鬱そうな表情を浮かべる。
「明後日に謁見が決まったとプロック様から連絡がありました」
ようやく王国側から提示される報酬などが決まったようだ。
タクマからすれば正直いらないと突っぱねたいところだが、王国側のメンツを潰すことにもなってしまう為受け取るしかない。
「そうか……わかった。プロックは他に何か言っていたか?」
「はい。当日に我々の考えにズレがあってはいけないので、できれば明日来て打ち合わせをしたいとの事でした」
恐らくプロックは予め受け取った内容を知ってほしいそうだ。
「タクマ様は報酬にあまり興味がないのはわかっておりますが、恐らくプロック様が言いたいのはその他の事では?
国境の件、トーランの独立、ヴェルド様が絡む内容はタクマ様がしっかりと理解した上で謁見をした方が良いと考えているのではないでしょうか」
アークスの説明を聞いたタクマは、そういえばそんな事もあるかと苦笑いを浮かべる。戻ってから色々とイベントが目白押しだったので、すっかり抜けていた。
「言われてみればそうか……ヴェルド様がやらかしていたんだった。それにトーランも提案した手前、しっかりとパミル様の反応も知っておく必要があるか」
打ち合わせの必要性を理解したタクマは言われた通り会いに行く事にした。
「とりあえず次の謁見で終わると良いが……」
ため息を吐くタクマに、アークスは笑顔を浮かべるのみだ。
「まあ、明日のことは明日の俺に任せるとして、今日はゆっくりさせてもらうかな」
家に戻ったタクマは出迎えてくれた夕夏に明日は王都に出向くことを伝える。するとタクマの気持ちを察してか、夕夏に抱かれた有希が手を伸ばして甘える。
「お、慰めてくれるのか?有希は優しいな」
「お父さんが本気で憂鬱だと分かるのね。いい子だわ」
「あーい、だうー」
有希の頬を優しく撫でると、タクマは抱っこを変わり夕夏ともハグを交わす。
「まあ俺から提案したこともあるから逃げるわけにもいかないし、こうして二人に励まして貰ったからもう大丈夫。これが終わればのんびりできるだろうしな」
タクマの表情が和らいだのを確認すると、夕夏は優しく微笑みながらタクマの腕を取って家の中へと連れていく。そしてリビングに入りソファーに座って有希の相手をはじめる。
「タクマ様、もし良ければですが……明後日の謁見は私が臣下として同行させていただきます」
それまで黙って後ろに控えていたアークスが、遊んでいるタクマに声をかけた。しかも謁見に同行したいという。突然何故と首を傾げるタクマに、アークスは自分の思いを話してくれた。
これまでは一個人として王国と対していたタクマだったが、これからはそれではいけないのだとアークスは言う。家族も増え、商会を興し従業員もいる。組織としてもトップであるタクマだけで対応出来なくなると危惧していたのだ。大事なことに関しては代表であるタクマが対応する必要があるが、代理で対応できる組織作りの必要性を感じたからこその言葉だった。
「いきなり全てを変えるのは難しいでしょう。なのでまずは臣下がいるのだと見せることから始めましょう。
幸いこの家の使用人は十分におります。家のことはその者たちに任せ、私がタクマ様の臣下として動きたく思うのです」
その言葉にタクマは驚いた。アークスがそんな事を提案するとは思いもよらなかった。彼は家令としてして高い誇りを持っていると感じていたからだ。
確かにタクマはアークスの仕事量が多すぎだとは思った。時折割り振るようには言ってはいたのだが、彼は家令として全てこなしていた。その男が自ら家令の仕事を退き臣下となりたいと言い出したのだ。衝撃を受けない訳がない。
「ここでタクマ様に仕えてからとても新鮮でした。そして楽しかった。あなたはここにいる全員を家族として扱ってくれています。使用人である私たちまでも。
仕事は仕事としてさせていただいておりますが、普段の気遣いなどは家族そのものでした。そんな貴方の人生を支えてみたくなったのです。家族として…私にできる事を考えた結果、臣下となり細々とした面倒な事を解決したいと」
アークスはまっすぐタクマを見据え、その気持ちが本気であると訴えていた。
「どうか……どうか私の我儘を聞き入れては頂けませんでしょうか」
黙りこむタクマの返事をジッと待つアークスに夕夏が助け船を出した。
「良いじゃない。アークスさんが本気なのは分かるし、受け入れたら?貴方のことを理解している人が側にいてくれたら私たちも安心だし。何よりも適任だと思うわ」
そんな夕夏の言葉は気遣いにアークスは感極まった表情で頭を下げる。
アークスの言葉や表情を見て、タクマはゆっくりと頷く。そして立ち上がり空いてる手を差し出し口を開いた。
「分かった。アークスの好きにしてくれ。
そしてこれからもよろしく頼む。俺はアークスの希望を尊重するよ」
タクマの言葉でアークスは正式な臣下として仕えることが決まったのだった。
「明後日に謁見が決まったとプロック様から連絡がありました」
ようやく王国側から提示される報酬などが決まったようだ。
タクマからすれば正直いらないと突っぱねたいところだが、王国側のメンツを潰すことにもなってしまう為受け取るしかない。
「そうか……わかった。プロックは他に何か言っていたか?」
「はい。当日に我々の考えにズレがあってはいけないので、できれば明日来て打ち合わせをしたいとの事でした」
恐らくプロックは予め受け取った内容を知ってほしいそうだ。
「タクマ様は報酬にあまり興味がないのはわかっておりますが、恐らくプロック様が言いたいのはその他の事では?
国境の件、トーランの独立、ヴェルド様が絡む内容はタクマ様がしっかりと理解した上で謁見をした方が良いと考えているのではないでしょうか」
アークスの説明を聞いたタクマは、そういえばそんな事もあるかと苦笑いを浮かべる。戻ってから色々とイベントが目白押しだったので、すっかり抜けていた。
「言われてみればそうか……ヴェルド様がやらかしていたんだった。それにトーランも提案した手前、しっかりとパミル様の反応も知っておく必要があるか」
打ち合わせの必要性を理解したタクマは言われた通り会いに行く事にした。
「とりあえず次の謁見で終わると良いが……」
ため息を吐くタクマに、アークスは笑顔を浮かべるのみだ。
「まあ、明日のことは明日の俺に任せるとして、今日はゆっくりさせてもらうかな」
家に戻ったタクマは出迎えてくれた夕夏に明日は王都に出向くことを伝える。するとタクマの気持ちを察してか、夕夏に抱かれた有希が手を伸ばして甘える。
「お、慰めてくれるのか?有希は優しいな」
「お父さんが本気で憂鬱だと分かるのね。いい子だわ」
「あーい、だうー」
有希の頬を優しく撫でると、タクマは抱っこを変わり夕夏ともハグを交わす。
「まあ俺から提案したこともあるから逃げるわけにもいかないし、こうして二人に励まして貰ったからもう大丈夫。これが終わればのんびりできるだろうしな」
タクマの表情が和らいだのを確認すると、夕夏は優しく微笑みながらタクマの腕を取って家の中へと連れていく。そしてリビングに入りソファーに座って有希の相手をはじめる。
「タクマ様、もし良ければですが……明後日の謁見は私が臣下として同行させていただきます」
それまで黙って後ろに控えていたアークスが、遊んでいるタクマに声をかけた。しかも謁見に同行したいという。突然何故と首を傾げるタクマに、アークスは自分の思いを話してくれた。
これまでは一個人として王国と対していたタクマだったが、これからはそれではいけないのだとアークスは言う。家族も増え、商会を興し従業員もいる。組織としてもトップであるタクマだけで対応出来なくなると危惧していたのだ。大事なことに関しては代表であるタクマが対応する必要があるが、代理で対応できる組織作りの必要性を感じたからこその言葉だった。
「いきなり全てを変えるのは難しいでしょう。なのでまずは臣下がいるのだと見せることから始めましょう。
幸いこの家の使用人は十分におります。家のことはその者たちに任せ、私がタクマ様の臣下として動きたく思うのです」
その言葉にタクマは驚いた。アークスがそんな事を提案するとは思いもよらなかった。彼は家令としてして高い誇りを持っていると感じていたからだ。
確かにタクマはアークスの仕事量が多すぎだとは思った。時折割り振るようには言ってはいたのだが、彼は家令として全てこなしていた。その男が自ら家令の仕事を退き臣下となりたいと言い出したのだ。衝撃を受けない訳がない。
「ここでタクマ様に仕えてからとても新鮮でした。そして楽しかった。あなたはここにいる全員を家族として扱ってくれています。使用人である私たちまでも。
仕事は仕事としてさせていただいておりますが、普段の気遣いなどは家族そのものでした。そんな貴方の人生を支えてみたくなったのです。家族として…私にできる事を考えた結果、臣下となり細々とした面倒な事を解決したいと」
アークスはまっすぐタクマを見据え、その気持ちが本気であると訴えていた。
「どうか……どうか私の我儘を聞き入れては頂けませんでしょうか」
黙りこむタクマの返事をジッと待つアークスに夕夏が助け船を出した。
「良いじゃない。アークスさんが本気なのは分かるし、受け入れたら?貴方のことを理解している人が側にいてくれたら私たちも安心だし。何よりも適任だと思うわ」
そんな夕夏の言葉は気遣いにアークスは感極まった表情で頭を下げる。
アークスの言葉や表情を見て、タクマはゆっくりと頷く。そして立ち上がり空いてる手を差し出し口を開いた。
「分かった。アークスの好きにしてくれ。
そしてこれからもよろしく頼む。俺はアークスの希望を尊重するよ」
タクマの言葉でアークスは正式な臣下として仕えることが決まったのだった。
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