それでも直し続けた
「わたくしの恩人の、お話をさせてくださいまし」
聖女ノールチェには、ずっと探している人がいる。目も見えず、命の消えかけていた自分を、毎日ただ黙って看病し、治療費を稼ぎ、名も告げずに去っていった、一人の修繕屋。
彼の名はヴェイル。三十八歳。どんな壊れたものも直す神業を持ちながら、「汚い」と蔑まれ、ありもしない罪を着せられて国を追われた、不器用な男。
彼は知らない。自分が直した門が、国を覆す陰謀を砕いたことを。隣国で英雄と讃えられ、騎士爵にまでなっていることを。――そして、かつて救った少女が聖女となり、国境を越えて自分を追いかけてきていることを。
「あなたが自分を大切にしないなら、わたくしが大切にします」
再会した彼は、相変わらず自分を「汚い」と言い、自分の価値に何ひとつ気づかない。ならば、と聖女は決めた。彼が気づかないその価値を、隣で、ぜんぶ、見ていようと。
これは、世界一鈍い英雄が、愛にだけは少しずつ気づいていく――すれ違いと溺愛の、心あたたまる物語。
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