蒼炎のカチュア

黒桐 涼風

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第八章 魔人族の脅威

8ー8 ナギパート

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「ぎゃははは!!! 現れたな、悪魔さんよ。テメェーを先にぶっ飛ばしてやる!!! ぎゃははは!!!」

 ようやく、ギャングの元へ。……しかし。

「ゴッホ!! ゴッホ!! オェェェ!!!」 

 ギャングは笑っている、途中で咽せた。その勢いで入れ歯を吐き出した。

『何をやっているんだ?』
 
 それはこっちもか。

「ギャング! うう……引きなさいッス! うう、魔人族と、うう……これ以上はうう……戦いたくないッス、うう!!」

 走るカチュアに背負われたため、スイレンが吐きそうにしている。

 第三の犠牲者が。

 完全にり合う、光景ではないよな、これは。

「テメェーらが戦いたくなくっても、俺が戦うんだよ!」

 結局、吐き出した、入れ歯を嵌めなかったようだ。

「でも、魔人族の皆さんは戦う気がないみたいだ~」
「くっ、貴様に何がわかる! 俺は! 魔人族の王ギャング! このマギ大陸全土は俺が支配する!」
「それは魔人族の皆さんのためなの?」
「ああ、神に助けられた、軟弱な人間がこの地を支配するのは納得いかねぇんだよ!」
「それは、魔人族の皆さまは望んでいるの~?」
「あいつらは神の制約に縛られている愚か者だ! 俺が目を覚まさせる!」
「だからって、彼らの気持ちを無視して、戦う道を選ぶなんて、良くないわ~。人の気持ちと向き合えないと、自分自身も貧しくなるわ~。境遇の違ったって、互いの気持ちを知っていかなきゃ……」
「るっせな!!! とっとと、始めるぞ!!!」
 
 ギャングが戦う姿勢を取る。入れ歯は取れたまま、戦うんだ。まあ、外れやすい、入れ歯を付けたままでは、戦いにくいからな。

「こうなったら、戦って目を覚まさせるしかないッス」

 いつの間にか、調子が戻った。

 ギャング中心に黒い渦が現れた。その渦から黒い物体が複数現れ、空高く飛んでいった。あの黒い物体の形は剣の形をしていた。

 それがこっちに……降って来た!

 カチュアは剣を含め、全身に蒼い炎を纏い、素早く剣を振って、落ちて来た、黒い剣を斬りつける。

 カチュアはスイレンを背負って、その場を離れた。何やら、黒い蛇が現れた。その蛇はカチュア達がいた周囲の地面から生えていた。

「カチュアさん! あれは?」
「あの黒い剣見たいなものよ~」
「あれが、形を変えたの?」

 黒い剣? そっか! あの複数の剣で地面に突き刺ささったのが、あの黒い蛇に変わったのか? 油断していたら、危なかった。

 カチュアはスイレンを抱えながら、黒い蛇を蒼い炎を纏った剣で斬りつけた。

 だけど、着地地点には、黒い渦が。

 カチュアは拳を向けて、急速に落下。地面に拳を叩き付け、黒い渦は蒼い炎を纏い、消えていく。

「俺の攻撃を……くっ! まだまだ!」

 今度は、地面から手の形をした黒い物体が現れた。それも二本も。

 それがカチュアを掴み取ろうとするが、カチュアは軽々と避ける。

 今度は握った黒い手で、殴り掛かろとしたが、カチュアが蹴って、弾き飛ばす。

 しかし、黒い手は怯まなかった。

 二本の黒い手が、カチュアを挟みように握ろうとしている。逃げ場がない。だが。

「いくよ~」

 カチュアは、両手に闘技と呼ばれる、目に見えるエネルギーの塊が。さらに、その上から蒼い炎が纏いる。左右それぞれ反対方向に、カチュアを遅い掛かる二本の黒い手目掛けて殴る。

 がぉぉぉーーー!!!

 命中すると鳴り響く、獣の咆哮。

 二本の黒い手は、蒼い炎に焼かれながら消えていった。

「まだまだ!!!」

 叫びだす、ギャングから、黒い煙みたいのが出てきた。

「ララララ~。ララララ~。ララララ~」

 歌声? 

「ぐっ」
 
 ギャングはふらふらし始めた。
 
 これが、エドナが言っていた人魚族の歌。カチュアには効果が出ていないようだ。確か、聞かせたい相手にしか効果を発揮しない、都合のいい力だっけ?

 カチュアは、ギャングの見せた一瞬の隙の間で、ギャングの顔を鷲掴みをした。

「ぐっ! 離せ!」

 カチュアの全身から、蒼い炎が。

「ぐぐ……何故だ!? なぜ、魔術が使えないんだ?」

 ギャングの体から、砂みたいな粒が出て来ている。

「降参して~、降参するなら、手を離すわ~」
「する! する!」

 即答かよ! 

「……」

 カチュアはギャングが降参するといっているのに、手を離さなかった。

「どうした! 早く手を!」
「嘘を吐いちゃだめよ~。手を離した瞬間に、わたしを攻撃しようとしているでしょ?」
「ちっ! あーそうだよ! 降参? するわけないだろ!!!」

 開き直ったよ。

 カチュアは急にギャングを掴んでいた手を離した。

『どうした! カチュア!』

 ギャングは立ち上がり。
 
「くっ! 何故だが、分からんが、ここで……」

  ギャングは恐らく、魔術を使おうとしたが。

「ゴッホ! ゴッホ!」

 咳と同時に吐血を。いや、砂? 灰か! それが口から出ていた。

「よく分からんが! くらえ!!」

 魔術を発動しようとするが、代わりに、手の平から灰が出てきた。

「何故!」
「これ以上は戦えないわ~」
「うるせ!!!」

 ギャングは腰に掛けていた鞘から剣を引き出し、カチュア目掛けて、振り回す。

 だけど、カチュアの蹴りで剣が弾き飛ばされた。

「くそ!! くそ!!!」

 今度は拳を振るうが、カチュアはひたすら躱し続ける。

「ララララ~。ララララ~。ララララ~」

 再び、スイレンが歌い出した。

 ギャングの体がフラつき出した。確か、この歌を聴かせた相手に効果が現れる話だ。しかし、ギャングは寝ようとせず、踏ん張って立っている。


「もう、やめなさい。あなたに勝ち目は……」

 そう言うと、カチュアは剣を向ける。

「くっくっくっ……」

  ギャングが笑い出す。気になることと言えば、右手を衣服に突っ込んだ時に、笑い出した。

「貴様の蒼い炎は俺のような体には通じても、他は纏うことしか出来ないんだな」

 ギャングの衣服から、ガラスでできたケースが出てきた。

「こいつが無事な事だけが救いだ」

 そのケースの中には、石みたいのが入っていた。

「あれは……、魔石!」
「このケースに入れとかなければ、今頃は蒼い炎に焼かれていたな。やはり、魔石は魔人族の命を繋ぐ物。ケースは頑丈のようだ。それとも、我々の先祖は、あの蒼い炎のような性質との戦うことを考慮でもしていたのか……」

 ギャングはケースから魔石を取り出した。

「しかし、、俺は侮辱されたものだ! 始めから、手加減されていたからな! でも、流石に俺の……俺たちの奥の手の前では手加減など、ふざけた戦い方は出来ない!」

 そして、ギャングは魔石を口の中に入れた。入れ歯が取れたため、飲み込んでいるよ。

「グォぉぉぉぉ!!!」

 急に唸り出した!

「あれは魔物化?」
「人間の魔物化と一緒にするなよ! 理性があるからな!  魔人族は人型と魔物の姿を切り替える亜種だからな。まあ、化身するには魔石が必要だがな」
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