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 義理の娘にばっさりと批判されてから、私の生活は一変しました。それは、彼女との関係にもはっきりと表れています。

「わたし、今日はこれを着ていくわ」
「あら、そうなの。この時期にしては寒そうだから、風邪を引かないように気をつけてね」
「……季節外れとか、茶会にふさわしくないとか言わないのね」

 さらりと流した私のことを、見知らぬ生き物でも見たかのように見つめてきます。今まで口うるさく注意していたのだから、そう思われるのも仕方がありませんね。私はもう頑張ることは諦めたのです。良き同居人として、彼女のことを見守るだけ。

「だって、リサはそれが着たいんでしょう。だったら自由にしたらいいわ。素材や色にはふさわしい時期や場というものがあるけれど、私が知っているものはあくまで一般的なものだけ。あなたが行く茶会では、その格好が良しとされるのかもしれない。だから、自分で決めたほうがいいと思うの」
「失敗したらどうするの?」
「自分で決めたのだから、そこは仕方ないなあと甘んじて反省してちょうだい。大丈夫よ、あなたにはしっかりとした婚約者がいるのだし、ちょっと失敗したくらいで結婚できなくなるなんてことはないわ。必要なら、いくらだって私が頭を下げるから。子どもの失敗をフォローするのも、親の役目だもの。それでも心配だったら、彼の意見も参考にしてごらんなさい」
「……ちょっと考え直してくる」

 普段あれこれ注意している時にはどんなに場違いな格好でも着替えないくせに、本人の選択を尊重すると着替えようとするなんて。なんだか不思議なものです。

「アイビーは茶会には出かけないの?」
「残念ながら、お飾りの妻に招待状なんて届かないのよ」
「じゃあ、代わりに自分で茶会を開けばいいじゃない」
「呼ばれたこともないのに、全然お知り合いじゃない方を呼ぶなんて恐れ多いでしょ」

 本当は結婚なんてしていないのではないかしら。そう思うくらい、私は誰にも声をかけられません。もしかしたら気がつかない間に、透明人間に進化してしまったのでしょうか。

「普段は家の中で何をやってるの?」
「庭を散歩したり、本を読んだり、刺繍をしたり。いろいろよ」
「刺繍が得意なのね」
「全然」
「何それ。毎日何が楽しいの?」
「美味しいご飯が食べられて、ゆっくり本を読めるだけで幸せよ。友達はいないけれど、今はあなたがおしゃべりしてくれるわ」
「……わかったわ。今日の茶会、あなたも一緒に連れて行くわ」

 一体どういう風の吹き回しでしょう。まさか、リサが私を外出に誘うなんて。

「何しているの、さっさと着替えて。せっかくだから母娘コーデにするわよ。ううん、わたしたちの年齢的に、姉妹コーデでもいいわね」
「ちょっと待って。相手の方も、招待していない人間が来たらびっくりしてしまうわ」
「本来なら声がかかって当然なのに? ひとりぼっちが好きならこのままでいたら」

 ひとりは嫌いではありません。誰かを不愉快にさせることも、誰かに怒られることもありません。家に帰ってから、終わりのない反省会をする必要だってないのです。

 けれど、せっかくの誘いです。今断ってしまったら、もうリサは私を誘ってはくれないでしょう。それはなんだかとても寂しい気がしました。

「……一緒に行ってもいいかしら?」

 失うものなどなにもありません。これ以上、嫌われることだってないのです。少しだけ、勇気を出してみることにしました。
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