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奏太の落とし穴6
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『ずっと会いたいと思っていた』
そう語った羽立くんの表情は、胸が苦しくなるほど切なげで。
奏太の毒気は完全に抜かれ、その場にいる全員が羽立くんの話に引き込まれていた。
「絶対に幸せにしますなんて言えませんけど、僕は奏音さん以外の女性とでは絶対に幸せになれなれません。どうか奏音さんと結婚させてください」
羽立くんが深々と頭を下げるのに合わせて、私も慌てて頭を下げた。
暫しの沈黙。
もーっ!
お父さん!?
本来ならこっちが頭擦りつけてお礼言わないといけない立場なのに、何やってんのよ!!?
頭を下げたままヤキモキしているとー
「…っぅ、ぐずっ…」
という音。
そっと羽立くんとアイコンタクトをとり、二人で顔を上げると、顔を腕に押し付けて嗚咽をこらえる父の背中を、母が静かにさすっていた。
「お、お父さん…?」
それを見た羽立くんは、ポケットからハンカチを出すと、黙って父に渡した。
「はだ、羽立さん、本当にっ、あり、ありがとうございっ、ます。私がっ、不甲斐ないばかりにっ、かのっ、奏音に、奏音をっ、犠牲に…」
父の悲痛な叫びで、今日までどれほど悩み、苦しみ、自分を責め続けてきたのかが伝わってくる。
同時に、どれほど私を大切に想ってくれているのかもー
「会社にっ、出資していただいただうえに、こんなっ、こんなに、奏音のことをっ、分かって…想ってくださって…」
続く言葉はとうとう嗚咽にかき消されてしまった。
父の背中をさすり続けていた母も目元を拭っているのを見て、遂に私の涙腺も崩壊してしまった。
羽立くんは、父が少し落ち着くまで待ってから言った。
「出資の件は…もちろん奏音さんとの関係がきっかけではありますけど、あくまでもビジネスです。そちらの顧問税理士から過去五期分の決算書も見せてもらって判断しています。設備投資のための借り入れに対する返済は順調で、経営状態は概ね健全でしたから、今回の件は、取引先の倒産さえなければ起こり得なかった事態でしたし」
せっかく落ち着いたのに、父が再びむせび泣き始めると、一人真っ青な顔をした奏太が身を乗り出した。
「ちょっと待って。犠牲って…、出資ってどういうことだよ!?」
まずい。
父の想いにばかり気を取られて、奏太の存在をまたしても忘れてしまっていた。
折角羽立くんが上手く丸め込んでくれかけていたのに、疑惑が再燃している。
「奏太、聞いて!これには深い訳が…」
「聞かなくても分かるよ!要はうちの会社の倒産危機を救うために、奏音はこの男と結婚するって…金のために売られたってことだろ!?」
そのとおり過ぎて、痛い。
最初にお見合いの話を聞いたときから、できるだけ深く考えないようにしてきたのに。
胸の痛みと息苦しさに、ワンピースの胸元を握りしめてしまう。
「…じゃ、奏太くんがお父さんの会社を救えるの?俺が融資した2千万円、今すぐ耳を揃えて返してくれる?」
「二千…っ!?」
「それができないなら君は大学を辞め、ご両親は年内には抵当のついているこの家も工場も手放さなければならない。もちろん従業員は全員解雇を免れない」
「そんな…」
「学生の君には無理だよね?俺なら…金で奏音さんが買えるなんて思ってないけど、奏音さんと結婚したければ融資した額の倍出せと言われても、即金で払うよ」
「…っ、だからって、奏音一人が犠牲になるなんておかしいだろ!?」
そう語った羽立くんの表情は、胸が苦しくなるほど切なげで。
奏太の毒気は完全に抜かれ、その場にいる全員が羽立くんの話に引き込まれていた。
「絶対に幸せにしますなんて言えませんけど、僕は奏音さん以外の女性とでは絶対に幸せになれなれません。どうか奏音さんと結婚させてください」
羽立くんが深々と頭を下げるのに合わせて、私も慌てて頭を下げた。
暫しの沈黙。
もーっ!
お父さん!?
本来ならこっちが頭擦りつけてお礼言わないといけない立場なのに、何やってんのよ!!?
頭を下げたままヤキモキしているとー
「…っぅ、ぐずっ…」
という音。
そっと羽立くんとアイコンタクトをとり、二人で顔を上げると、顔を腕に押し付けて嗚咽をこらえる父の背中を、母が静かにさすっていた。
「お、お父さん…?」
それを見た羽立くんは、ポケットからハンカチを出すと、黙って父に渡した。
「はだ、羽立さん、本当にっ、あり、ありがとうございっ、ます。私がっ、不甲斐ないばかりにっ、かのっ、奏音に、奏音をっ、犠牲に…」
父の悲痛な叫びで、今日までどれほど悩み、苦しみ、自分を責め続けてきたのかが伝わってくる。
同時に、どれほど私を大切に想ってくれているのかもー
「会社にっ、出資していただいただうえに、こんなっ、こんなに、奏音のことをっ、分かって…想ってくださって…」
続く言葉はとうとう嗚咽にかき消されてしまった。
父の背中をさすり続けていた母も目元を拭っているのを見て、遂に私の涙腺も崩壊してしまった。
羽立くんは、父が少し落ち着くまで待ってから言った。
「出資の件は…もちろん奏音さんとの関係がきっかけではありますけど、あくまでもビジネスです。そちらの顧問税理士から過去五期分の決算書も見せてもらって判断しています。設備投資のための借り入れに対する返済は順調で、経営状態は概ね健全でしたから、今回の件は、取引先の倒産さえなければ起こり得なかった事態でしたし」
せっかく落ち着いたのに、父が再びむせび泣き始めると、一人真っ青な顔をした奏太が身を乗り出した。
「ちょっと待って。犠牲って…、出資ってどういうことだよ!?」
まずい。
父の想いにばかり気を取られて、奏太の存在をまたしても忘れてしまっていた。
折角羽立くんが上手く丸め込んでくれかけていたのに、疑惑が再燃している。
「奏太、聞いて!これには深い訳が…」
「聞かなくても分かるよ!要はうちの会社の倒産危機を救うために、奏音はこの男と結婚するって…金のために売られたってことだろ!?」
そのとおり過ぎて、痛い。
最初にお見合いの話を聞いたときから、できるだけ深く考えないようにしてきたのに。
胸の痛みと息苦しさに、ワンピースの胸元を握りしめてしまう。
「…じゃ、奏太くんがお父さんの会社を救えるの?俺が融資した2千万円、今すぐ耳を揃えて返してくれる?」
「二千…っ!?」
「それができないなら君は大学を辞め、ご両親は年内には抵当のついているこの家も工場も手放さなければならない。もちろん従業員は全員解雇を免れない」
「そんな…」
「学生の君には無理だよね?俺なら…金で奏音さんが買えるなんて思ってないけど、奏音さんと結婚したければ融資した額の倍出せと言われても、即金で払うよ」
「…っ、だからって、奏音一人が犠牲になるなんておかしいだろ!?」
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