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隣へ座るよう促されると、私は渋々腰を掛け足を組んだ。
座れと言う事は……長い話になるのでしょう。
「今お兄様に婚約者候補がいるんですけれど、その方が傲慢で高飛車で……根本的にお兄様と合わないのです。私も正直苦手ですわ~。ですが爵位と金を利用して王妃候補になってしまって……。現状彼女に逆らえる令嬢がおりませんの。逆らおうものなら……ひどい嫌がらせと圧力がかけられてしまうのです。今まで何度かあったのですが、用意周到、警戒心が強く立証できなくて……。そこでお兄様がフィオナ様に王妃にしようと言い出したのですわ。フィオナ様は面倒見がよくてお優しくて、困っている方を放っておけないと伺いましたの。本当にその通りの方でしたわ~。綿密に計画して実行したのです。フィオナ様でしたら十分にあの令嬢と戦えるでしょうし。私たちを助けてくれますわ。爵位も実績も申しぶんなく、あの女を蹴落とせますもの」
そういうことね……。
隣国のゴタゴタに私を巻き込まないでほしいんだけど……。
キラキラした瞳を浮かべるカーラを見ると、頭痛がひどくなっていく。
どうしたものかしらね……。
「お姉様お願いしますわ!一度私たちの国へ来てください。助けてぇ~」
カーラは私の手をギュッと握ると、目に涙を浮かべる。
それは婚約破棄の時にみた表情そのもの。
思わず深いため息が出ると、痛む頭を押さえた。
「隣国の問題まで持ち込まないで。そう簡単なことじゃないとわかるでしょう。……はぁ……どうしてこうも……」
こんな事でここまでするなんて。
あのサイモンですら手を焼く令嬢とは一体どんな方なのかしら?
まぁなんにせよ、王子の世話をするよりも、面倒なことは間違いないわ。
「フィオナ様、お願いしますわ。本当に困っていて……もし成功すればこれを差し上げますわ」
カーラは2枚の板を取り出すと、両手に持って見せつける。
板には国家の紋章と、通行許可書との文字。
これは隣国の永久通行証。
発行するのは大変で、王族に信頼される一部の商人しか発行されていない貴重な通行証。
これがあれば父の事業はさらに拡大できるわ。
「どうです、やってくれませんか?婚約者としてでなくて大丈夫ですわ。婚約者候補で国へ来て頂ければ十分ですの」
ニッコリと笑みを浮かべる彼女を見つめると、私は深いため息をついた。
報酬はとても魅力的、通行証が欲しい、だけど……。
「引き受けたいところだけれど、私はまだ王子の婚約者で、気軽に他国へ行くのは難しいわ」
「それはご安心下さい。私がすでに手配済みですわ。王妃と王に話は通してありますの。ディエゴ様の失態を報告しまして、お灸を据えるという形でフィオナ様を隣国に招待したいと話しておきましたわ」
準備がお早い事で……。
「はぁ……考えておくわ」
「フィーダメだ。隣国へ行くなんて僕が許さない!」
いつの間に追い付いたのか……ディエゴは私を後ろから抱きしめると、カーラと引き剥がす。
「あら、ディエゴ様。あなたに口出しする権利はないですわよ。だってもうフィオナ様の婚約者ではないでしょう?」
「それは君が……ッッ、」
「フィー、そんなバカは放っておいて俺のところへこい」
せっかく逃げ出したのに、また目の前でワチャワチャと騒ぎ出す彼ら。
言い合いを始めるその様に頭を痛めながら、私はそっとフェードアウト。
やっぱり面倒事はごめんだわ。
そう心の中で呟くと、物語は始まることなく終わったのだった。
****************************************
新年明けまして、おめでとうございますm(__)m
お読み頂きありがとうございます!
ご意見ご感想等ございましたら、お気軽にコメント下さい。
続編ご要望ございましたら、隣国編を投稿します~!
座れと言う事は……長い話になるのでしょう。
「今お兄様に婚約者候補がいるんですけれど、その方が傲慢で高飛車で……根本的にお兄様と合わないのです。私も正直苦手ですわ~。ですが爵位と金を利用して王妃候補になってしまって……。現状彼女に逆らえる令嬢がおりませんの。逆らおうものなら……ひどい嫌がらせと圧力がかけられてしまうのです。今まで何度かあったのですが、用意周到、警戒心が強く立証できなくて……。そこでお兄様がフィオナ様に王妃にしようと言い出したのですわ。フィオナ様は面倒見がよくてお優しくて、困っている方を放っておけないと伺いましたの。本当にその通りの方でしたわ~。綿密に計画して実行したのです。フィオナ様でしたら十分にあの令嬢と戦えるでしょうし。私たちを助けてくれますわ。爵位も実績も申しぶんなく、あの女を蹴落とせますもの」
そういうことね……。
隣国のゴタゴタに私を巻き込まないでほしいんだけど……。
キラキラした瞳を浮かべるカーラを見ると、頭痛がひどくなっていく。
どうしたものかしらね……。
「お姉様お願いしますわ!一度私たちの国へ来てください。助けてぇ~」
カーラは私の手をギュッと握ると、目に涙を浮かべる。
それは婚約破棄の時にみた表情そのもの。
思わず深いため息が出ると、痛む頭を押さえた。
「隣国の問題まで持ち込まないで。そう簡単なことじゃないとわかるでしょう。……はぁ……どうしてこうも……」
こんな事でここまでするなんて。
あのサイモンですら手を焼く令嬢とは一体どんな方なのかしら?
まぁなんにせよ、王子の世話をするよりも、面倒なことは間違いないわ。
「フィオナ様、お願いしますわ。本当に困っていて……もし成功すればこれを差し上げますわ」
カーラは2枚の板を取り出すと、両手に持って見せつける。
板には国家の紋章と、通行許可書との文字。
これは隣国の永久通行証。
発行するのは大変で、王族に信頼される一部の商人しか発行されていない貴重な通行証。
これがあれば父の事業はさらに拡大できるわ。
「どうです、やってくれませんか?婚約者としてでなくて大丈夫ですわ。婚約者候補で国へ来て頂ければ十分ですの」
ニッコリと笑みを浮かべる彼女を見つめると、私は深いため息をついた。
報酬はとても魅力的、通行証が欲しい、だけど……。
「引き受けたいところだけれど、私はまだ王子の婚約者で、気軽に他国へ行くのは難しいわ」
「それはご安心下さい。私がすでに手配済みですわ。王妃と王に話は通してありますの。ディエゴ様の失態を報告しまして、お灸を据えるという形でフィオナ様を隣国に招待したいと話しておきましたわ」
準備がお早い事で……。
「はぁ……考えておくわ」
「フィーダメだ。隣国へ行くなんて僕が許さない!」
いつの間に追い付いたのか……ディエゴは私を後ろから抱きしめると、カーラと引き剥がす。
「あら、ディエゴ様。あなたに口出しする権利はないですわよ。だってもうフィオナ様の婚約者ではないでしょう?」
「それは君が……ッッ、」
「フィー、そんなバカは放っておいて俺のところへこい」
せっかく逃げ出したのに、また目の前でワチャワチャと騒ぎ出す彼ら。
言い合いを始めるその様に頭を痛めながら、私はそっとフェードアウト。
やっぱり面倒事はごめんだわ。
そう心の中で呟くと、物語は始まることなく終わったのだった。
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新年明けまして、おめでとうございますm(__)m
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みんなの感想(15件)
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「悪役令嬢お断り」が面白かったのでこちらにもお邪魔しました。
この作品の主人公さんも強くて賢くて好みです🎵😍🎵
「こんなことでここまでするなんて…」まさに主人公さんのセリフと私の感想がバッチリ同じ笑
愛すべき(?)おバカさんの王子&隣国兄妹に振り回される主人公さんを続編でまだまだ読みたいです♪
楽しみに待ってま~す!
lemon 様
コメントありがとうございます!
こちらもお読み頂けて、とても嬉しいです(*'ω'*)
愛すべきおバカさん!いい響きですねぇ(*ノωノ)
続編は只今執筆しておりますので、完結までしっかり書き上げ投稿します!
またどうぞ宜しくお願いいたします(*´▽`*)
依頼だけならまだしも、
サイモンもディエゴ並に面倒そうな上に相手の懐に飛び込まなきゃならないとか
メリットよりデメリット・リスクの方が大きいとしか思えないですねぇ。
Hokkyoku 様
コメントありがとうございます!
おっしゃる通りですね(;´Д`)
通行証があっても、面倒な内容ですよね(-_-;)
デメリットの方が多そうなのでフィーも逃げちゃったのかと……(笑)
楽しいお話をありがとうございます♪
続編、見たいです!
フィーちゃんのカッコ良さ、
王子のダメダメだけど実はフィーちゃん大好きなところ、サイモン兄妹の腹黒さ。濃い登場人物、素敵です。
ちょこ 様
コメントありがとございます!
続編希望ありがとうございます(*'ω'*)
フィーは私の中でお気に入りのキャラです(笑)
王子はダメダメですけど、しっかりもののフィーにはあってるのかなぁと……(*ノωノ)
続編については執筆しておりますので、またこうして読んで頂けるよう頑張ります!