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2章⭐︎それぞれの役割編⭐︎
どおおおおおん……!
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-side リアム-
「さて、まずは魔法の命中率の上げ方と魔力制御について学ぶか。」
「お願いします。」
俺は強くなるために、レオンに魔法の稽古をつけてもらうことにした。
「一般的に、魔法には広範囲に相手を牽制する用の魔法と、相手に当てるため用の魔法がある。」
「盤面を動かす用の魔法と、相手にダメージを与える用の魔法ということ?」
「そういうことだ。どっちを使えば良いかは戦局にもよるな。
侵略戦なのか、籠城戦なのか、防衛戦なのか、はたまた乱戦なのか。
自分達が今どういうルールで戦争しているのかにもよる。」
「ふーん。」
よく分かんないけど、前世でやっていたゲームが現実になっているような感じかな?
なんとなく、説明の仕方もeスポーツの解説っぽい。
「おそらく、お前が今回の戦争で期待されているのは、固定砲台になって不利盤面を有利盤面にすることだから、広範囲魔法をうまく使うことだろうな。
……っとまあ、いきなり説明をしても分からねえよな。
大体の場合戦場においてルール理解度が1番高いのは、指揮官だ。
指揮官のルール理解度が高くなかったら、戦術に幅が出ないし、相手の戦闘方法を柔軟に対策できないしで、勝てないからな。
だから、基本はヘンリー様の意見通りに動いとけばいい。」
「う、うん。……って、俺って固定砲台としての役割を期待されていたの?
てっきり、前線に出てバリバリやると思ってたよ。」
「ああ。俺がお前に前線での経験を積ませたいのは、戦争においては前線で、生き残り続けながら、敵を倒しまくるのが1番確実に勝てる方法だからだ。
リアムが目指すべきなのは、前線に出て、敵を倒しまくりながら盤面を操作し、
味方を援護して出来るだけ生き残らせられる最強の固定砲台だな。」
前線で敵を殺しまくったら勝てるのはそれはそうだろう。
小難しいこと言ってる割には脳筋だな。
シンプルだからこそ強い戦術なのかもしれないが。
「というか、それは、固定砲台とは言わないんじゃ。前線砲台とか。」
「前線砲台。良い名前だな。
ルーカスを上手く使いながら立ち回れば、出来る可能性は充分あると思うぜ。」
『まあ、俺は1人でも敵の兵を壊滅させられる力はあるがな!』
ルーカスは自信満々に言う。
頼れる相棒だ。
「それをやると目立ちすぎるからなしだ。
それこそ、俺たちは人里離れて住まなければいけなくなる。
お前はともかく、リアムが文明の力を使わずに生きるのはきついぞ。」
『ああ。分かってる。もどかしいぜ。』
「さて、魔法を使った前線での戦いにおいて最も重要になるのは、
魔法を敵に当てる力、これをエイムと言うんだが、エイムを上達させることだ。」
「ふむ?」
んん……?急に聞き慣れた言葉が出てきたような。
「そして、優れたエイムに1番必要なのは精神力だ。“エイムの乱れは心の乱れ”と言うことわざもあるくらいだ。」
「へ、へー。」
絶対ゲームガチ勢だった転生者が作った言葉だろ。ことわざってことは、この世界では昔の人か。
通りでさっきから妙にゲームの戦闘解説っぽかったわけだ。
「次に大事なのは魔力制御だ。
自分の魔力を状況に応じて適切に制御することを学ばないと、魔力をうまくコントロールが出来ず、周辺に被害を与えてしまう。」
どおおおん…!!!
その時、爆発音がした。
音のした方を見ると、王宮の一室の、窓と壁の一部が破壊されていた。
「こんなふうにな。」
なんでもないようにレオンが言う。
「え、ちょ。た、助けないと。」
「へ?あ……ああ。どうせあれはお転婆王女の仕業だろうけどな。一応行くか。」
「お転婆王女?ミラ様のことか?」
「ああ。噂だと相当やんちゃらしいな。
ほら、王宮に着いた最初の日も人払いをしてもらったのに、勝手に入ってきただろ?」
「ああ。そういえば、お菓子の香りに釣られてしまったとか言って、入って来てたね。」
「そーそ。あれだけではなく、他のところでもやらかしているらしくてな。
今回は、魔法を使おうとして失敗したというところか。
王女は魔力量も多いらしいから、制御もしづらいんだろ。」
「へー。豊富な魔力量羨ましい。」
俺自身の魔力量は平均より少ないくらいだ。魔力量は鍛えれば多少は増えるらしいが、基本は才能がものをいうらしい。
「お前は、他のスキルが恵まれているから必要ねえだろ。
それに、魔力量が多く立って適切に扱えなかったら、宝の持ち腐れだ。」
「たしかに。って、それより早く様子を見に行かないと。」
「ああ。」
そんな話をしながら、俺たちは音のする方へ走り出した。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
現場に着くと、ミラと掃除に当たっている使用人がいた。
あれだけの規模の爆発があったのに、ミラには、傷どころか洋服の破れひとつ見当たらない。
「ミラ様。大丈夫ですか?」
「あ、リアム様!それにレオン様も。ご機嫌麗しゅう。」
相変わらず優雅に挨拶するミラ。
しかし、この場の雰囲気には似つかわしくないな。
「ところで、これはどう言った状況ですか?」
大体推測するが一応聞く。
「家庭教師の方に教えていただきながら、魔法制御について学んでいたのですが、失敗してしまいまして。
先生が庇ってくれたので、私は無事でした。お騒がせいたしました。」
「ああ……、どうりで。」
遊びで爆発させたのではなく、学習中に失敗しただけか。
「あの……。リアム様は学習中でしたよね。お邪魔して申し訳ございません。こちらは、大丈夫なので戻ってください。」
ミラは申し訳なさそうに言う。
「そうさせていただくか。」
関わっても面倒そうなので、そう言って俺は元の場所に戻ろうとする。
「待てリアム。」
今まで黙っていたレオンが呼び止める。
「……?」
「ミラ様。もしよろしければ、私が代わりに家庭教師をいたしましょうか?
その様子だと、しばらくは家庭教師の方が治療で来られないので、お一人で勉強することになりますよね。
丁度リアムも魔法制御の学習をこれから行うところなのです。」
「え?」
ミラが驚いた顔をしてこちらを見る。
驚いているのはこちらも同じだ。
「(え、ちょっと!何考えてるの?
やんちゃな王女様が一緒だったら大変になるかもしれないでしょ。)」
「(ああ。だが、比較対象がいた方が上達しやすいかなと思ってな。
加えて、ここで王族に媚び売っとけば、将来役に立つかもしれねえし。
リアムだって、ここで王女と仲良くなっとけば、将来ノアの側近になる時に後ろ盾になってもらえるかもしれねえぞ。)」
「(た、たしかに。)」
そう聞くと、誘わない理由はないか。
そう思ってから、ミラの方を見ると、少し考えていたが、口を開いた。
「まあ!Sランク冒険者様に魔法を訓練していただけるのですか。
是非お願い致しますわ。」
「お。では早速、イーサン様にご連絡を……。」
「大丈夫ですわ。
お父様ならどうせ断りませんし。それより、早く行きましょうリアム様!」
そう言うや否や俺の手を引くミラ。
お転婆と言われるだけあって行動が早い。
「ああ……。ちょっと!」
それを見たルーカスとレオンは、「((これは…先が思い浮かばれるな。))」と念話で伝えて来た。
「……ってそんなことより助けてえええ。」
お互い5歳児ということもあったが、実は既に身体強化魔法をこの年で無意識にマスターしていたミラに力負けして、
その日の晩落ち込んだリアムだった。
なおミラは後日、彼女を怒れない王ではなくノアにがっつり叱られたそうだ。
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[キャライメージ]
「さて、まずは魔法の命中率の上げ方と魔力制御について学ぶか。」
「お願いします。」
俺は強くなるために、レオンに魔法の稽古をつけてもらうことにした。
「一般的に、魔法には広範囲に相手を牽制する用の魔法と、相手に当てるため用の魔法がある。」
「盤面を動かす用の魔法と、相手にダメージを与える用の魔法ということ?」
「そういうことだ。どっちを使えば良いかは戦局にもよるな。
侵略戦なのか、籠城戦なのか、防衛戦なのか、はたまた乱戦なのか。
自分達が今どういうルールで戦争しているのかにもよる。」
「ふーん。」
よく分かんないけど、前世でやっていたゲームが現実になっているような感じかな?
なんとなく、説明の仕方もeスポーツの解説っぽい。
「おそらく、お前が今回の戦争で期待されているのは、固定砲台になって不利盤面を有利盤面にすることだから、広範囲魔法をうまく使うことだろうな。
……っとまあ、いきなり説明をしても分からねえよな。
大体の場合戦場においてルール理解度が1番高いのは、指揮官だ。
指揮官のルール理解度が高くなかったら、戦術に幅が出ないし、相手の戦闘方法を柔軟に対策できないしで、勝てないからな。
だから、基本はヘンリー様の意見通りに動いとけばいい。」
「う、うん。……って、俺って固定砲台としての役割を期待されていたの?
てっきり、前線に出てバリバリやると思ってたよ。」
「ああ。俺がお前に前線での経験を積ませたいのは、戦争においては前線で、生き残り続けながら、敵を倒しまくるのが1番確実に勝てる方法だからだ。
リアムが目指すべきなのは、前線に出て、敵を倒しまくりながら盤面を操作し、
味方を援護して出来るだけ生き残らせられる最強の固定砲台だな。」
前線で敵を殺しまくったら勝てるのはそれはそうだろう。
小難しいこと言ってる割には脳筋だな。
シンプルだからこそ強い戦術なのかもしれないが。
「というか、それは、固定砲台とは言わないんじゃ。前線砲台とか。」
「前線砲台。良い名前だな。
ルーカスを上手く使いながら立ち回れば、出来る可能性は充分あると思うぜ。」
『まあ、俺は1人でも敵の兵を壊滅させられる力はあるがな!』
ルーカスは自信満々に言う。
頼れる相棒だ。
「それをやると目立ちすぎるからなしだ。
それこそ、俺たちは人里離れて住まなければいけなくなる。
お前はともかく、リアムが文明の力を使わずに生きるのはきついぞ。」
『ああ。分かってる。もどかしいぜ。』
「さて、魔法を使った前線での戦いにおいて最も重要になるのは、
魔法を敵に当てる力、これをエイムと言うんだが、エイムを上達させることだ。」
「ふむ?」
んん……?急に聞き慣れた言葉が出てきたような。
「そして、優れたエイムに1番必要なのは精神力だ。“エイムの乱れは心の乱れ”と言うことわざもあるくらいだ。」
「へ、へー。」
絶対ゲームガチ勢だった転生者が作った言葉だろ。ことわざってことは、この世界では昔の人か。
通りでさっきから妙にゲームの戦闘解説っぽかったわけだ。
「次に大事なのは魔力制御だ。
自分の魔力を状況に応じて適切に制御することを学ばないと、魔力をうまくコントロールが出来ず、周辺に被害を与えてしまう。」
どおおおん…!!!
その時、爆発音がした。
音のした方を見ると、王宮の一室の、窓と壁の一部が破壊されていた。
「こんなふうにな。」
なんでもないようにレオンが言う。
「え、ちょ。た、助けないと。」
「へ?あ……ああ。どうせあれはお転婆王女の仕業だろうけどな。一応行くか。」
「お転婆王女?ミラ様のことか?」
「ああ。噂だと相当やんちゃらしいな。
ほら、王宮に着いた最初の日も人払いをしてもらったのに、勝手に入ってきただろ?」
「ああ。そういえば、お菓子の香りに釣られてしまったとか言って、入って来てたね。」
「そーそ。あれだけではなく、他のところでもやらかしているらしくてな。
今回は、魔法を使おうとして失敗したというところか。
王女は魔力量も多いらしいから、制御もしづらいんだろ。」
「へー。豊富な魔力量羨ましい。」
俺自身の魔力量は平均より少ないくらいだ。魔力量は鍛えれば多少は増えるらしいが、基本は才能がものをいうらしい。
「お前は、他のスキルが恵まれているから必要ねえだろ。
それに、魔力量が多く立って適切に扱えなかったら、宝の持ち腐れだ。」
「たしかに。って、それより早く様子を見に行かないと。」
「ああ。」
そんな話をしながら、俺たちは音のする方へ走り出した。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
現場に着くと、ミラと掃除に当たっている使用人がいた。
あれだけの規模の爆発があったのに、ミラには、傷どころか洋服の破れひとつ見当たらない。
「ミラ様。大丈夫ですか?」
「あ、リアム様!それにレオン様も。ご機嫌麗しゅう。」
相変わらず優雅に挨拶するミラ。
しかし、この場の雰囲気には似つかわしくないな。
「ところで、これはどう言った状況ですか?」
大体推測するが一応聞く。
「家庭教師の方に教えていただきながら、魔法制御について学んでいたのですが、失敗してしまいまして。
先生が庇ってくれたので、私は無事でした。お騒がせいたしました。」
「ああ……、どうりで。」
遊びで爆発させたのではなく、学習中に失敗しただけか。
「あの……。リアム様は学習中でしたよね。お邪魔して申し訳ございません。こちらは、大丈夫なので戻ってください。」
ミラは申し訳なさそうに言う。
「そうさせていただくか。」
関わっても面倒そうなので、そう言って俺は元の場所に戻ろうとする。
「待てリアム。」
今まで黙っていたレオンが呼び止める。
「……?」
「ミラ様。もしよろしければ、私が代わりに家庭教師をいたしましょうか?
その様子だと、しばらくは家庭教師の方が治療で来られないので、お一人で勉強することになりますよね。
丁度リアムも魔法制御の学習をこれから行うところなのです。」
「え?」
ミラが驚いた顔をしてこちらを見る。
驚いているのはこちらも同じだ。
「(え、ちょっと!何考えてるの?
やんちゃな王女様が一緒だったら大変になるかもしれないでしょ。)」
「(ああ。だが、比較対象がいた方が上達しやすいかなと思ってな。
加えて、ここで王族に媚び売っとけば、将来役に立つかもしれねえし。
リアムだって、ここで王女と仲良くなっとけば、将来ノアの側近になる時に後ろ盾になってもらえるかもしれねえぞ。)」
「(た、たしかに。)」
そう聞くと、誘わない理由はないか。
そう思ってから、ミラの方を見ると、少し考えていたが、口を開いた。
「まあ!Sランク冒険者様に魔法を訓練していただけるのですか。
是非お願い致しますわ。」
「お。では早速、イーサン様にご連絡を……。」
「大丈夫ですわ。
お父様ならどうせ断りませんし。それより、早く行きましょうリアム様!」
そう言うや否や俺の手を引くミラ。
お転婆と言われるだけあって行動が早い。
「ああ……。ちょっと!」
それを見たルーカスとレオンは、「((これは…先が思い浮かばれるな。))」と念話で伝えて来た。
「……ってそんなことより助けてえええ。」
お互い5歳児ということもあったが、実は既に身体強化魔法をこの年で無意識にマスターしていたミラに力負けして、
その日の晩落ち込んだリアムだった。
なおミラは後日、彼女を怒れない王ではなくノアにがっつり叱られたそうだ。
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