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第二章
20ヒロインと悪役令嬢②
しおりを挟む「光の精霊だ」
嘘だぁ!
ぐっちゃんが光の精霊だなんて聞いてないよ!
バサバサ!
「風の精霊までも!」
「殿下、泉を御覧ください」
傍にある泉を見ると水が迸り、出て来たのは私が飼育係としてお世話をしている亀さんだ。
「水の最高位の精霊ですわ!」
は?
聖霊っておかしくね?
だって亀さん、普通に学園の生徒に虐げられてたんだけど。
私は浦島太郎気分で助けただけだよ?
そんで放課後時々一緒にお菓子食べてただけ。
「グレイシア!その女を…」
「無礼者、言葉を弁えなさい」
「は?」
ぐっちゃんは私を抱きしめヒロインを睨みつける。
「何だこの女は」
「さっきから無礼三昧な。主様になんという口の利き方」
「ぬし?」
何だその呼び方は!
「精霊殿、お聞かせいただきたい。真の聖女となる乙女はこの場いるだろうか」
「ああ」
「やっぱり!さぁ私の…」
やっぱり聖女はヒロインなんだ。
だって主役だもん。
なんて思っていたら。
バチッ!
「え?」
静電気のようなものが見えた瞬間天井から雷が落ちた。
「きゃああああ!」
「えっ…」
ヒロインに直撃した。
「うっ…何で」
黒焦げになった聖女。
一応生きてはいるけど、すごいな。
普通は死ぬわよ。
「愚か者。神の領域に軽々しく踏み込むとこうなるのだ」
「アクアシス、随分過激ね」
「当然の報いだ」
つーか随分カッコいい名前だな。
見た目はカメさんなのに。
「女神も何故こんな手違いをしたのか。この娘は確かに光の魔力を授かったが、それだけだ」
「何を言っているの…私は」
這いつくばりながら手を伸ばそうとするヒロインにカメさんは睨む。
「昔は光の魔力を持つにふさわしくても聖霊は常に人を見極めている。お前は役目を放棄し魔力をコントロールする事も無く自分の為に使ったであろう」
「私は…」
「現に今の私を醜いと言って見向きもしなかったな?他の生徒も私に気づかず石を投げて来たな」
「精霊になんと無礼な!」
いや、私も知らなかったのだけど。
「私に優しくしてくれたのはこの子だけだ。パンくずをくれたぞ」
「レティーぃぃ!お前はなんというものを」
「お父様!」
やっぱり来ていたのか。
遠路はるばるご苦労様ですお父様。
でも変な方向に進んでないか?
「なんで…何でよ!」
「えっ…」
「こんなのシナリオになかったわ!悪役令嬢の癖に何で精霊に好かれているのよ…こんなの許せない!」
這いつくばっていたヒロインが私を睨みつける。
この殺意の籠った目は何処かで見た事がある。
「あんたなんて…アンタなんて!」
ドクン!
私を認めないという目。
何処までも蔑むような瞳は前世で見た。
あの目と同じ。
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