ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第四部帰省とお家事情

18.対話不可能

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門番の制止も聞かずに入っって来るヘレンに周りの人間は距離を置く。



(何をやっているの…)

サンマルク大聖堂は王都でも格式の高いとされているのに何故騒ぎを起こすのかエステルには解らない。

止めに行くべきかと思い、前に出ようとした。


「待て」

「クロード殿下?」

仲裁に入ろうとするエステルを止めに入るクロードは首を横に振った。


エステルが見守る中、二人の令嬢が立ちふさがった。


「ヘレン様」

「ローニャ様、リズベット様」

あくまで貴族の令嬢らしく振る舞うローニャは穏便にすませようとしていた。

背後にはリズベットがエレニーを守るように傍にいる。


「声を荒げないでください。ここは神聖なる大聖堂ですわ」

「ローニャ様」

警備の騎士達は申し訳なさそうにするが笑顔を向ける。


「大丈夫ですわ。皆さんは持ち場にお戻りになってください」

「ですが…かしこまりました」

最初は渋ったが、ローニャに再度言われてしまい心配しながらも持ち場に戻る。


「ここは多くの方が神に祈りを捧げる場所です。神聖なる場所を汚すような真似はなさらないでください」

「まぁ!そのような言い方…」

「お声をあげないでくださいませ」

ヘレンが声をあげようとするもローニャはさらに厳しく言い聞かせる。


「聖女エルキネス様がお眠りになっている場所です」


「ヘレン様、貴方様は猊下に宗教に関わる場の立ち入りを禁じられたはず。なのにどうしていらしたのですか?」

リズベットができるだけ穏やかに尋ねる。


「禁じられたのは小さな教会や神殿のみですわ。サンマルク大聖堂は我が一族も多額の寄付をしているのですから問題なくてよ」

((アンタじゃないわ!!))

内心で毒を吐く二人。
実際寄付をしているのはヴィオラで現在はエステルも多額の寄付金をしているのだ。

さも自分が寄付しているような言い回しに苛立つ。


「それに本日は私をモデルにした絵が飾られていると聞きましたの」

「「は?」」

「聖女のモデルよ言うのが少々不満ですが…先日の非礼は許して差し上げましてよ?エレニー様」

さらに展示会の出来事は一方的にエレニーの所為だということになっている。


「教皇様に泣きつくのはどうかともいますが…まぁ寛大な心で許して差し上げますわ」

(この女‥今すぐぶん殴りたいわ)

(抑えてください…私も同じ気持ちですわ)

ローニャとリズベットの気持ちは一つだった。
何を勘違いしたらそういう結論出るのか解らないし、ここまで自分の都合のいい様に考えられるヘレンに周りが呆れるのを通り越して引き気味だった。


「展示会でエレニー様を侮辱したのはどなたですの?」

「第一宗教を馬鹿にしたのはヘレン様でございましょう?それを猊下が咎めたのです」

「私は猊下いらしたなんて知りませんでしたわ。私を陥れるためにあのようなことをなさるなんて!」

((なんでそうなるの!))


教皇がいなければいいわけではない。
そんなことも解らないのかと二人は思ったが、言葉が一切通じない。


「教皇様も私を誰かと気づかなかったのでのようなことをおっしゃったのですわ」

既に穏便に話しをしようという気にもならなかった二人は疲れた表情をしていた。


「それで私のモデルの絵は…」


二人を押しのけて絵を探すと中央に飾られている絵が目に入る。


「エレニー様、貴方は目が悪いんですの?私の髪はブロンドですわよ」

「存じております」

「ならば何故白髪…しかも青紫の瞳ではありませんか!」

絵を遠目から見てヘレンは文句を言う。
自分とはまるで似ていない。

責めるような言葉を告げられるも、逃げることはしなった。

「白髪ではなく銀髪です」

「はい?」

「モデルは貴方様ではございません。聖女のモデルはエステル様です」


はっきりした口調で告げられた。


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