ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第七部可憐な皇女と聖騎士

5.敵国の情勢

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夕暮れ時、勤務時間が終ったエステルは調べ物をしていた。


もちろん調べることは決まっている。

エルラド帝国。
歴史はアルカディア以上に古く、現在は君主を務めるのは大公。


まだまだ男尊女卑が当然の情勢で、女性が君主となる国は少ない。
その所為で他国から常に責められている状態が続いていたのだがモントワール侯爵夫人の働きかけにより、一時は共通の強敵を打つという名目で停戦することとなった。

ただし一時的にだ。
未だに双方の対立は厳しく、平和条約を結ぶべく第四皇女を嫁がせることにより平和条約が結ばれた。



「元は敵国、しかも貴族派にとっては面白くないわね」

過去の情報を洗いながらしながらもう一度情報を洗う。
敵国の姫君が嫁ぐとなれば、色々問題が生じるし。

特に生活習慣も違うのだから敵国に嫁いだ皇女の胸中はいかがなものなのか。

「当時は孤立した状態だったのよね」

王太子であるエドワードは公務に縛られていたし、政治的な理由で表だって庇えば争いが起きる。

最悪の場合皇女が裏で王太子を操っていると吹聴する者も多い。


「王宮内で無邪気で歩く優しいだけの姫は生き残れないわ」

周りは甘い言葉を囁き、諫めることはしない。
したとしても、他の連中に離されてしまい、都合のいい言葉だけを並べる侍女達に利用されてしまうのだから。


(革命の原因はあの方じゃない)


表向きは王妃が国の国庫を使いつくして贅沢の限りを尽くした言われていたが、国のお金を一人で使い切れるなんてありえないし、先代からの赤字はあった。


(現段階ではそこまでの赤字はないはず…)


好きを盗んでカミュの所持する国家予算や帳簿を盗み見したので間違いない。

物価は若干上がっているが、この程度ならば問題ない。


(それに腑に落ちないわ)


王太子妃時代に何度か会う機会はあったが、派手好きではなかったし。
むしろ慎ましやかな皇女のイメージが強かった。


(どこでどう変わった?)


記憶をたどるも、解らない。


「どうすべきか…このままではアントワネット様が王宮の魔女の餌食になるわ」


「奇遇ですわね。私もそう思っておりましたのよ」

「え?」

背後から声が聞こえ振り向くと、不敵に微笑むモントワール侯爵夫人が微笑んでいた。


「侯爵夫人!」

「硬くならなくて結構。貴方は私の義娘になるのだから」

「は?」


ニコニコと微笑みながらも何故か怖いと感じる。
毅然とした態度に余裕の微笑は女宰相と言わしめるだけの器量がうかがえるので下手な発言はできないのだが…


「先程のお話、じっくりお聞かせいただけないかしら?」

「お話…とは」


「あら?調べておいでだったんでしょう?未来の王太子妃様を」


完全にバレていた。
既に隠すことはできず逃げることも叶わなかった。
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