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第49話 ノイマン家へいざ、潜入
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馬車に揺られて約20分後…。
「お客様…ノイマン家に到着致しましたが?」
御者が遠慮がちに声を掛けてきた。あ、そうだった。御者側のカーテンを開けて置くのを忘れてしまった。
「ありがとう。降りるわ」
言いながらカーテンを開けると、御者が驚いた顔で私を見た。
「え?お、お客様…ですか…?」
驚くのも無理はない。今の私は黒のメイド服姿に金髪ヘアにメガネをかけているのだから。
「ああ、ごめんなさいね。実は馬車の中で着替えと変装をしたのよ。その為にカーテン閉めたのだけどね」
「あ、そう言えば乗ったときに着替えをすると確かに仰っていましたよね?しかし、まさか変装までされていたとは思いもしませんでした」
「そうよね。その辺りの事情は話していなかったものね。ちょっとこれには訳があってね…でもそこは聞かないで頂戴。誰にも知られてはいけない…2人だけの秘密の話よ?」
私はわざと謎めいたミステリアスな女を演じた。案の定、ゴクリと喉を鳴らしながら御者はコクコクと頷く。
「ありがとう、頷いて貰えると助かるわ。それで?おいくらになるかしら?」
「は、はい。全部で650シリルになります」
「そう、それじゃ1000シリル渡すわ」
1000シリル紙幣を御者に渡すと言った。
「お釣りはいらないから取っておいて」
「え?ですが…」
御者は驚いたように私を見る。
「いいのいいの、このお釣りには…口止め料が入っているのだから気にしないで」
言いながらウィンクする。
「ええっ?!く、口止め料ですかっ?!」
「そうよ。絶対私がこの姿で…ノイマン家へ向かったという話は他言無用だからね。分かった?」
「は、はい!分かりました!絶対に口が裂けても話しません!」
「そう?ありがとう。それじゃ私がこの馬車から降りたら…絶対に後ろを振り返らないですぐに走り去っていくのよ?いい?」
「はい!」
御者は大きく頷く。
「それじゃ降りるわ」
扉を開けて手すりにつかまりながら私は馬車を降りた。すると…。
「ハイ・ヨーッ!」
大きな掛け声をと共に、手綱を握りしめた御者はガラガラと大きな音を立てて馬車を走らせながら、あっという間に見えなくなってしまった。
「フフ…少し脅かしすぎたかしら?」
けれど、私が何故馬車の中でメイド姿に変装し、カツラにメガネまで掛けたのかを御者に問い詰められるのは面倒だったので今の脅しはきっと彼の口を閉ざすには十分だっただろう。
「さて、かつて知ったる我が家…じゃないけど、勝手口から侵入しますか」
私は裏門目指して歩き始めた―。
****
13時―
今の時間は勝手口を出入りする使用人の姿は少ない。何故なら彼等は交代でお昼休憩を取っているからだ。…しかし、それは以前までの話。昨夜はジェフが疲れた様子で帰って来たので確認はしていないのだが、噂に寄ると私がラファエルと離婚したことで給料を支払う事が出来なくなったノイマン家では使用人たちが次々と辞めていったと聞いている。
「この様子だと…働いている使用人が今もいるか分からないわね…」
裏門を開けて、ヒョイと庭を覗き込んでみるもののシンと静まり返っている。いつもならこの庭には洗濯物が干されて、風にたなびいているはずなのに…。
「う~ん…やっぱり洗濯物が干されていない…ということは洗濯する使用人がいないって事よね」
1人納得した私は勝手口の扉を開けて、屋敷の中へと潜入した―。
「お客様…ノイマン家に到着致しましたが?」
御者が遠慮がちに声を掛けてきた。あ、そうだった。御者側のカーテンを開けて置くのを忘れてしまった。
「ありがとう。降りるわ」
言いながらカーテンを開けると、御者が驚いた顔で私を見た。
「え?お、お客様…ですか…?」
驚くのも無理はない。今の私は黒のメイド服姿に金髪ヘアにメガネをかけているのだから。
「ああ、ごめんなさいね。実は馬車の中で着替えと変装をしたのよ。その為にカーテン閉めたのだけどね」
「あ、そう言えば乗ったときに着替えをすると確かに仰っていましたよね?しかし、まさか変装までされていたとは思いもしませんでした」
「そうよね。その辺りの事情は話していなかったものね。ちょっとこれには訳があってね…でもそこは聞かないで頂戴。誰にも知られてはいけない…2人だけの秘密の話よ?」
私はわざと謎めいたミステリアスな女を演じた。案の定、ゴクリと喉を鳴らしながら御者はコクコクと頷く。
「ありがとう、頷いて貰えると助かるわ。それで?おいくらになるかしら?」
「は、はい。全部で650シリルになります」
「そう、それじゃ1000シリル渡すわ」
1000シリル紙幣を御者に渡すと言った。
「お釣りはいらないから取っておいて」
「え?ですが…」
御者は驚いたように私を見る。
「いいのいいの、このお釣りには…口止め料が入っているのだから気にしないで」
言いながらウィンクする。
「ええっ?!く、口止め料ですかっ?!」
「そうよ。絶対私がこの姿で…ノイマン家へ向かったという話は他言無用だからね。分かった?」
「は、はい!分かりました!絶対に口が裂けても話しません!」
「そう?ありがとう。それじゃ私がこの馬車から降りたら…絶対に後ろを振り返らないですぐに走り去っていくのよ?いい?」
「はい!」
御者は大きく頷く。
「それじゃ降りるわ」
扉を開けて手すりにつかまりながら私は馬車を降りた。すると…。
「ハイ・ヨーッ!」
大きな掛け声をと共に、手綱を握りしめた御者はガラガラと大きな音を立てて馬車を走らせながら、あっという間に見えなくなってしまった。
「フフ…少し脅かしすぎたかしら?」
けれど、私が何故馬車の中でメイド姿に変装し、カツラにメガネまで掛けたのかを御者に問い詰められるのは面倒だったので今の脅しはきっと彼の口を閉ざすには十分だっただろう。
「さて、かつて知ったる我が家…じゃないけど、勝手口から侵入しますか」
私は裏門目指して歩き始めた―。
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13時―
今の時間は勝手口を出入りする使用人の姿は少ない。何故なら彼等は交代でお昼休憩を取っているからだ。…しかし、それは以前までの話。昨夜はジェフが疲れた様子で帰って来たので確認はしていないのだが、噂に寄ると私がラファエルと離婚したことで給料を支払う事が出来なくなったノイマン家では使用人たちが次々と辞めていったと聞いている。
「この様子だと…働いている使用人が今もいるか分からないわね…」
裏門を開けて、ヒョイと庭を覗き込んでみるもののシンと静まり返っている。いつもならこの庭には洗濯物が干されて、風にたなびいているはずなのに…。
「う~ん…やっぱり洗濯物が干されていない…ということは洗濯する使用人がいないって事よね」
1人納得した私は勝手口の扉を開けて、屋敷の中へと潜入した―。
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