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第6章 1 新学期と転入生

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 夏休みも終わり、9月に入った。今日から新学期である。

「ヒルダ様、今日から学校が始まりますね。」

「ええ、そうね。」

「今日はクラス編成の発表ですね・・・。」

野菜スープを飲みながらカミラは言う。

「ええ、そうね・・・お兄様には特進クラスに入れるように頑張れって言われたけど・・大丈夫かしら?」

ヒルダはエドガーに言われた後、ますます勉強に励んだ。そして半月ほど前、ヒルダ達は学校へ行き、クラス分けテストを受けてきたのだ。

「どうですか?ヒルダ様、自信のほどは?」

「そうね・・・手ごたえはあったわね・・・。もし今回特進クラスに入れなくても、まだ1年あるわ。駄目だったら1年後を目指して頑張るわよ。」

「流石はヒルダ様ですね。私も応援しております。」

ポッポーポッポー

その時、壁に掛けてある鳩時計が8時を知らせた。

「あ、もう8時だわ。そろそろ学校へ行くわね。」

ヒルダは席を立った。

「そうですね。もう出られた方がよろしいですね。」

カミラもヒルダを見送る為に立ち上がった。

足を引きずりながら、ヒルダは廊下へ出ると学校指定のベレー帽をかぶり、スクールカバンを背負うとカミラの方を振り向いた。

「それじゃ、行って来るわね。カミラ。」

「はい、行ってらっしゃいませ。」

そしてヒルダはカミラに見送られながら学校へと向かった。


 アパートメントの階段を降り、メインストリートの前に降り立つとヒルダは両手を組んで目を閉じた。

「どうか・・特進クラスに入れていますように・・・。」


 ヒルダは高校卒業後は働きに出るつもりで、進学の予定は全く無かった。
だが、エドガーはヒルダに勉強を促し、特進クラスに入れるように頑張れと言った。
何故エドガーがそのような台詞をヒルダに言ったのかは分からないが、エドガーの期待にヒルダは応えたいと思っていたのだ。

祈りを終えたヒルダは前を向いて、学校へと向かった―。

学校へ着くと、もう掲示板の前には生徒達で溢れていた。あちこちで歓喜の声や落胆の声が聞こえてくる。

「私は・・何所のクラスになったのかしら・・。」

人混みをかき分けながら、2年生のクラス編成が張り出されている掲示板を探している時、ヒルダは人混みに押されて転びそうになった。

「キャッ!」

「危ないっ!」

すると背後から両肩を支えられた。驚いたヒルダが振り向くと、そこにはマイクが満面の笑顔で立っていた。

「おはよう、ヒルダ。良かった・・・間に合って。」

「お、お早う。マイク。」

ヒルダは警戒心をあらわに挨拶を返した。

「ヒルダ、クラス編成は見たかい?」

そんな様子のヒルダに全く気付かない様子でマイクは気さくに声を掛けてくる。

「いいえ・・まだよ。」

するとマイクは言った。

「ヒルダ、喜んでよ!僕とヒルダは同じ特進クラスに入れたんだよ?他の連中は駄目だったけどね。」

「あ・・そ、そうなの・・・。」

(特進クラスに入れたのは嬉しいけど・・・マイクだけって言うのは嫌だわ・・。)

「さあ、ヒルダ。一緒に新しいクラスへ行こうよ。ほら、手を引いて上げるからさ。」

マイクはヒルダの手を握りしめたが、ヒルダは言った。

「マイク、手を放してくれる?1人で歩きたいの。」

ヒルダはピシャリと言った。

「あ・・・そうかい、分ったよ。」

マイクは渋々手を離したが、思った。

(何、もう邪魔なあいつらはいないんだ。この1年でヒルダと距離を詰められれば・・きっと僕たちは恋人同士になれるはずさ。)

そしてマイクは笑みを浮かべた―。


 新しいクラスに着いたヒルダとマイクは出席番号順に座ると、隣の席の女生徒が声を掛けてきた。

「おはよう、貴女がヒルダね?」

「え、ええ・・そうだけど?」

「貴女ってすごいのね。マイクに次いで2番目に成績が良かったんですって。」

「え?そうだったの?」

「ええ、そうよ。あ、自己紹介が遅れたわね。私はマドレーヌ。よろしくね?」

「あ・・よろしく、マドレーヌ。」

その時、新しい担任の男性教師が入って来た。

「皆、今日からこのクラスの担任になったブルーノ・ダグラスだ。今日から転入生が入って来る。さあ、中へ入りなさい。」

そして、教室へ入って来た人物を見てヒルダは息を飲んだ。

「ル・ルドルフ・・・・。」

現れた少年は・・・かつてヒルダが愛したルドルフだった―。

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