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第2章 55 本屋にて
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彩花の後を追いながら思った。
「それにしても助かった…万一自転車で出掛けられようものなら後をつけることができなかったものな…」
だが、念の為に今後のことを考えて自転車は用意したほうがいいかもしれない。
あの周辺は歩くと駅までは最低でも15分はかかる。だが自転車があれば10分以内に駅に着くことが出来るのだ。
うん?だが待てよ?
俺が彩花とさっさと恋人同士になってしまえば後をつける必要は無くなるから自転車なんか必要なくなるじゃないか。
「そうだ…その為には何かきっかけを作って彩花に話しかけないと…」
彩花に話しかけるチャンスを伺いながら、俺は尾行を続けた―。
****
いつの間にか駅前にやってきていた。
彩花は相変わらずぶらぶらと暇そうに歩いている。
「良かった…この様子だと、恐らく恋人はいないだろうな…」
しかし、そこまで言いかけてふと思った。
そう言えば何回か前のタイムリープでは彩花は自分では気付いていないようだったが、椎名という男と不倫関係にあった。
もし、恋人が椎名だとしたら土日は会えるはずが無いだろう。会うとしたら平日しかないはずだ。
彩花が椎名と関係を持っていないことを祈るばかりだった…。
彩花は駅前から商店街へと入っていった。
そして、アーケード街を歩きながら色々な店を窓越しに眺めている。
「彩花…どこの店に入るつもりだ…?」
見ていると彩花は不意に自動ドアをくぐり抜け、店内へと消えていく。
慌てて後を追い…店を見上げた。
「何だ、本屋か…」
彩花が入っていったのは本屋だった。
何か買いたいものでもあるのだろうか…?
「入るか…」
俺も彩花にならって店内へと入った。
店内はさほど混雑していなかった。
入り口の一番手前の雑誌コーナーには中年男性がパラパラと立ち読みしている姿がある。
彩花…どこにいるんだ?
少しの間、店内を探していると彩花の姿を発見した。
本を取りたいのか、背伸びをして腕を伸ばしている。
「そうか…高くて手が届かないのか」
これはまたとないチャンスかもしれない。
俺は彩花に近づき、少し距離を空けたところで立ち止まって声を掛けた。
「あの、よければ取ってあげましょうか?」
「え?」
大きな目を見開いて俺の方を振り返る彩花。
その姿を見るだけで、彩花に対する愛しさが胸にこみ上げてくる。
「あ、あの…」
戸惑う彩花に更に声を掛ける。
「いえ、たまたま本を取ろうとしている姿が目に入ったので…声を掛けたんです。どの本ですか?取って上げますよ」
「あ…そ、それでは…この棚の一番上にある本なのですが…」
「どれです?」
本を確認する為に彩花の近くに行くと、彼女のシャンプーの香りが俺の鼻をくすぐる。
「あの本です。『時短節約料理術』という本なのですが…」
彩花が恥ずかしそうに教えてくれた。
「ああ、分かりました。これですね」
今の俺は子供の時のちびで痩せっぽちじゃない。身長だって180cmあるし、ボクシングで身体だって鍛えている。
もう…あの頃の俺じゃないのだから。
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
頭を下げる彩花。
「いえ」
そして俺は彩花から少し距離を空け、隣のコーナーに移動した。ここで本を読むふりをしながら様子を伺おう。
…そしてすぐに俺は後悔した。
この本棚に並べられている本は俺が全く興味のない囲碁の本が置いてあるコーナーだった。
「…」
心の中でため息をつきながら、全く興味の無い囲碁の本を手に取って彩花の様子をそっと伺った―。
「それにしても助かった…万一自転車で出掛けられようものなら後をつけることができなかったものな…」
だが、念の為に今後のことを考えて自転車は用意したほうがいいかもしれない。
あの周辺は歩くと駅までは最低でも15分はかかる。だが自転車があれば10分以内に駅に着くことが出来るのだ。
うん?だが待てよ?
俺が彩花とさっさと恋人同士になってしまえば後をつける必要は無くなるから自転車なんか必要なくなるじゃないか。
「そうだ…その為には何かきっかけを作って彩花に話しかけないと…」
彩花に話しかけるチャンスを伺いながら、俺は尾行を続けた―。
****
いつの間にか駅前にやってきていた。
彩花は相変わらずぶらぶらと暇そうに歩いている。
「良かった…この様子だと、恐らく恋人はいないだろうな…」
しかし、そこまで言いかけてふと思った。
そう言えば何回か前のタイムリープでは彩花は自分では気付いていないようだったが、椎名という男と不倫関係にあった。
もし、恋人が椎名だとしたら土日は会えるはずが無いだろう。会うとしたら平日しかないはずだ。
彩花が椎名と関係を持っていないことを祈るばかりだった…。
彩花は駅前から商店街へと入っていった。
そして、アーケード街を歩きながら色々な店を窓越しに眺めている。
「彩花…どこの店に入るつもりだ…?」
見ていると彩花は不意に自動ドアをくぐり抜け、店内へと消えていく。
慌てて後を追い…店を見上げた。
「何だ、本屋か…」
彩花が入っていったのは本屋だった。
何か買いたいものでもあるのだろうか…?
「入るか…」
俺も彩花にならって店内へと入った。
店内はさほど混雑していなかった。
入り口の一番手前の雑誌コーナーには中年男性がパラパラと立ち読みしている姿がある。
彩花…どこにいるんだ?
少しの間、店内を探していると彩花の姿を発見した。
本を取りたいのか、背伸びをして腕を伸ばしている。
「そうか…高くて手が届かないのか」
これはまたとないチャンスかもしれない。
俺は彩花に近づき、少し距離を空けたところで立ち止まって声を掛けた。
「あの、よければ取ってあげましょうか?」
「え?」
大きな目を見開いて俺の方を振り返る彩花。
その姿を見るだけで、彩花に対する愛しさが胸にこみ上げてくる。
「あ、あの…」
戸惑う彩花に更に声を掛ける。
「いえ、たまたま本を取ろうとしている姿が目に入ったので…声を掛けたんです。どの本ですか?取って上げますよ」
「あ…そ、それでは…この棚の一番上にある本なのですが…」
「どれです?」
本を確認する為に彩花の近くに行くと、彼女のシャンプーの香りが俺の鼻をくすぐる。
「あの本です。『時短節約料理術』という本なのですが…」
彩花が恥ずかしそうに教えてくれた。
「ああ、分かりました。これですね」
今の俺は子供の時のちびで痩せっぽちじゃない。身長だって180cmあるし、ボクシングで身体だって鍛えている。
もう…あの頃の俺じゃないのだから。
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
頭を下げる彩花。
「いえ」
そして俺は彩花から少し距離を空け、隣のコーナーに移動した。ここで本を読むふりをしながら様子を伺おう。
…そしてすぐに俺は後悔した。
この本棚に並べられている本は俺が全く興味のない囲碁の本が置いてあるコーナーだった。
「…」
心の中でため息をつきながら、全く興味の無い囲碁の本を手に取って彩花の様子をそっと伺った―。
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