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11-1 策士オズワルド

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 話はエルウィン達が出発した直後に遡る――。


「フン。ようやくエルウィン達は出発するのか。全くいつまでも待たせおって……」

オズワルドは城の3階にある自室の窓から、エルウィン達が馬に乗って次々と雪原を宿場村へ向けて走って行く姿を見つめていた。

「10人の部隊が3つ……30人態勢で出るのか。中々良い勘をしておるな……ダリウスの部隊も確かそのぐらいの人数だったはず…」

そこへ乱暴に扉が叩かれる音が室内に響き渡った。

ドンドンッ!!

『オズワルドッ!いるのだろうっ?!』
『ここを開けろっ!!』

扉の外で声が聞こえた。

「チッ!奴等か……全く煩い輩どもだ」

オズワルドは忌々し気に舌打ちをすると、扉に向かった。


ガチャ…

鍵を開けて扉を開くと目の前に、鼻息を荒くしたバルドとドミニコが立っていた。

「これはこれはお二方、お揃いで一体どうされましたかな?何か私に御用でしょうか?」

オズワルドは2人の参謀に向かって笑みを浮かべた。

「当然だ、用があるからお前を訪ねたのだろう?」

「話がある。入れて貰うぞ」

バルドとドミニコはオズワルドの返事も聞かず、脇をすり抜けると部屋の中に勝手に入り込んできた。
そしてソファに座るとオズワルドを見た。

「何をしておる?」
「早く座れ」

まるで自分の部屋のようにふるまう2人に苛立ちを感じつつもオズワルドは2人の向かい側のソファに腰を下ろした。

「今朝から南塔の奴らの様子がおかしいのだ」

「貴様のことだから何か事情を知っておるのではないか?」

オズワルドが座った途端、ドミニコとバルドが交互に尋ねて来た。

「ええ、勿論知っておりますぞ?」

膝を組むと、オズワルドは頷いた。

「何?やはりそうか……。教えろ、一体連中に何をした?」

バルドが身を乗り出してきた。

「ええ、アリアドネが攫われたのです。ダリウスと言う人物によってね。それで南塔の選りすぐりの騎士団長たちがエルウィン様と一緒に敵の後を追いかけて行ったのですよ」

オズワルドの言葉に2人の参謀は目を見開いた。

「…な、何だと…?一体誰が攫われたのだ?」
「ダリウスとは何者なのだっ?!」

オズワルドは2人の今更の反応に呆れてしまった。

「やれやれ……全くお2人には呆れましたな?一体今まで越冬期間中何をされていたのだ?よもや本当に冬ごもりされていたのではなかろうな?」

背もたれに寄り掛かるとオズワルドは苦笑した。

「だ、黙れっ!たかだか騎士団長と言う身分だけで我らを馬鹿にする気かっ!」

「そうだ!貴様よりも我らはずっと長くこの城でランベール様を支えてきたのだぞっ?!」

ドミニコとバルドが怒りで真っ赤な顔で詰め寄るもオズワルドは2人を小馬鹿にした態度を崩そうとはしない。

「仕方ない。何も分かっておられない無知なお2人に説明して差し上げましょう。アリアドネと言う娘がダリウスと言う『カシュア』国の第一王子に本日誘拐されたのだ。ちなみにアリアドネと言う娘はエルウィン様の妻になるべく、越冬期間直前にこの城にやってきた女性だ。彼女は下働きの女として、間諜として城に忍び込んでいたダリウスに見初められた為に攫われてしまった。ついでに言うとランベール様がエルウィンに地下牢に入れられたのはアリアドネに手を出そうとしたからだ。その事で激怒したエルウィンがランベール様を地下牢に閉じ込めたのですよ」


「な、何だと……?」
「ば、馬鹿な…我々の知らない話ばかりではないか!」

情報量があまりに凝縮されているので、ドミニコとバルドが戸惑うのは無理も無い話であった。

「さて、こんなことをしている暇はありません。すぐに行動しなければ」

オズワルドは立ち上がった。


「待て!何処へ行く!」
「そうだ!もっと詳しく説明するのだっ!」

バルドとドミニコは立ち去ろうとするオズワルドを必死で止めようとした。

「その話ならまた後にして頂きたい。これから我々はこのアイゼンシュタット城を乗っ取る為、反乱を起こすのです。エルウィンが他のことに気を取られている今の内にね。全て片付いたその時に…先ほどの話を詳しく聞かせて差し上げますよ」

オズワルドは不気味な笑みを浮かべてバルドとドミニコを見た。

「生意気な青二才からこの城を乗っ取りたいのなら……私に従うことですな」


「「……」」

オズワルドの雰囲気に押され…2人は当然の如く、頷くのだった――。

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