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17-6 埋まらない溝
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「とにかく、もうお前はメイドの仕事はしなくていいからな?誰か他の者を2人の専属メイドにしようと考えている。だからゆっくり休みといい」
にこやかに話すエルウィンの姿に、益々アリアドネは暗い気持ちになっていった。
(もう……ミカエル様とウリエル様の後任の専属メイドのことも考えていらっしゃるのね。出来ればもう少しだけ、お2人のお世話をしたかったけれども……)
アリアドネは悲しい気持ちを押し殺し、エルウィンに頭を下げた。
「はい、謹んでお受け致します。それでは今日で、私のメイドの仕事は終わり……ということですね?」
「ああ、そうだ。今迄ご苦労だったな」
「はい。それでは……失礼致します」
アリアドネ様、ではこちらをお持ち下さい」
シュミットは机の上に置かれたバッグを手に取ると、アリアドに渡した。中には300万レニーもの大金が入っている。
アリアドネにとっては……重みのあるお金だった。
「ありがとうございます。お世話になりました、エルウィン様。そしてシュミット様」
「ああ、気にするな」
「今迄お勤め、ご苦労様でした」
「はい、それでは失礼致します」
アリアドネは2人に頭を下げると、部屋を出ていった。
パタン……
扉が閉ざされると、シュミットはエルウィンに声を掛けた。
「エルウィン様」
「何だ?」
肘をついて座るエルウィンはシュミットを見る。
「アリアドネ様のご様子……何やら妙ではありませんでしたか?」
「そうか?俺にはいつもと変わらない様子に見えたが?」
「そうでしょうか……?何だか元気が無いように見えたのですが……」
「何故そう思う?メイドの仕事はやらなくても良いし、300万レニーもの大金を渡したんだ。当分金に困ることはないと思うぞ?だが、もし無くなったらまたすぐに渡すつもりでいるがな?」
「はぁ……」
(駄目だ、エルウィン様は人の心の機微に疎い方だ。尋ねた自分が間違えていた)
上機嫌のエルウィンを見て、シュミットは心の中でため息をつくのだった――。
****
アリアドネは自室に戻り、エルウィンから手渡されたバッグを部屋に置くと、ため息をついた。
「まさかこんなに早く退職金を受け取ることになるなんて……。もう少しここにいたかったわ……」
けれど、アリアドネの脳裏に今迄この城で起こった事件が蘇ってきた。
ランベールの殺害から、ダリウスによる拉致。自分を探しにエルウィン達が城を出た直後にオズワルドがクーデターを起こし……ロイが犠牲になってしまった。
「そうだわ、私はここにいてはいけない……。私がいなければ、何も事件は怒らなかっただろうし、ロイは死ぬことは無かったのだわ」
自分は解雇されて当然なのだと、改めてアリアドネは思った。
「この退職金を貰えただけ……ありがたいと思わなくては。きっと、これはエルウィン様の温情ね。だとしたら、一刻も早くこの城を出なければ。こうしてはいられないわ」
アリアドネは頷くと、すぐにある場所へ向かう為に自室を後にした――。
にこやかに話すエルウィンの姿に、益々アリアドネは暗い気持ちになっていった。
(もう……ミカエル様とウリエル様の後任の専属メイドのことも考えていらっしゃるのね。出来ればもう少しだけ、お2人のお世話をしたかったけれども……)
アリアドネは悲しい気持ちを押し殺し、エルウィンに頭を下げた。
「はい、謹んでお受け致します。それでは今日で、私のメイドの仕事は終わり……ということですね?」
「ああ、そうだ。今迄ご苦労だったな」
「はい。それでは……失礼致します」
アリアドネ様、ではこちらをお持ち下さい」
シュミットは机の上に置かれたバッグを手に取ると、アリアドに渡した。中には300万レニーもの大金が入っている。
アリアドネにとっては……重みのあるお金だった。
「ありがとうございます。お世話になりました、エルウィン様。そしてシュミット様」
「ああ、気にするな」
「今迄お勤め、ご苦労様でした」
「はい、それでは失礼致します」
アリアドネは2人に頭を下げると、部屋を出ていった。
パタン……
扉が閉ざされると、シュミットはエルウィンに声を掛けた。
「エルウィン様」
「何だ?」
肘をついて座るエルウィンはシュミットを見る。
「アリアドネ様のご様子……何やら妙ではありませんでしたか?」
「そうか?俺にはいつもと変わらない様子に見えたが?」
「そうでしょうか……?何だか元気が無いように見えたのですが……」
「何故そう思う?メイドの仕事はやらなくても良いし、300万レニーもの大金を渡したんだ。当分金に困ることはないと思うぞ?だが、もし無くなったらまたすぐに渡すつもりでいるがな?」
「はぁ……」
(駄目だ、エルウィン様は人の心の機微に疎い方だ。尋ねた自分が間違えていた)
上機嫌のエルウィンを見て、シュミットは心の中でため息をつくのだった――。
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アリアドネは自室に戻り、エルウィンから手渡されたバッグを部屋に置くと、ため息をついた。
「まさかこんなに早く退職金を受け取ることになるなんて……。もう少しここにいたかったわ……」
けれど、アリアドネの脳裏に今迄この城で起こった事件が蘇ってきた。
ランベールの殺害から、ダリウスによる拉致。自分を探しにエルウィン達が城を出た直後にオズワルドがクーデターを起こし……ロイが犠牲になってしまった。
「そうだわ、私はここにいてはいけない……。私がいなければ、何も事件は怒らなかっただろうし、ロイは死ぬことは無かったのだわ」
自分は解雇されて当然なのだと、改めてアリアドネは思った。
「この退職金を貰えただけ……ありがたいと思わなくては。きっと、これはエルウィン様の温情ね。だとしたら、一刻も早くこの城を出なければ。こうしてはいられないわ」
アリアドネは頷くと、すぐにある場所へ向かう為に自室を後にした――。
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