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17-12 宿場村の2人

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 エルウィンが重い恋煩いですっかり落ち込み、騎士たちがアリアドネとヨゼフの捜索隊を組んでいた頃――。

 アリアドネはヨゼフと共にアイゼンシュタット城から最も離れた宿場町の宿屋で遅めの朝食を食べていた。


「アリアドネ。良かったのかい?ここは他の宿屋に比べても随分立派な宿屋じゃないか」

 チーズをたっぷり挟んで焼き上げたパンにオムレツ、そして野菜スープという少し豪華な朝食を前にヨゼフが心配そうに尋ねてきた。

「ええ、大丈夫です。ヨゼフさん、宿代は気にしないで下さいね。お金ならありますから」

 笑顔で返事をするアリアドネ。

 アリアドネは今、エルウィンから受け取っとた300万レニーがある。ここの宿代は1泊2日でも2人で4000レニーだったので、十分過ぎる余裕があった。

(それに……この先困ったことがあれば、いざと言うときは髪を切って売ればいいわ)

 アリアドネの金の髪はとても美しく、腰まで届く長さがある。女性の髪……特に金の髪は高値で売買されていた。
この髪を切って売ればそれなりの金額にはなりそうだ。

 しかし、その話はヨゼフにはしない。何故ならヨゼフはアリアドネの金の髪を褒めてくれるからだ。お金を得る為に売る等と言う話をすれば、きっと悲しむに違いない。

(ヨゼフさんの為にもこの事は隠していないと……)

「ヨゼフさん。夜通し馬車を走らせていたのですから、今日はここで宿泊していきましょうね?」

「ありがとう、アリアドネ」

 そして2人は和やかに会話をしながら食事を続けた――。



****


「よし!準備が整ったな!それでは今から2人の行方を探しに行くぞ!」

 馬上からスティーブが一斉に指示を出す。

『はい‼』

 その言葉に、集められた騎士たちが一斉に返事をする。騎士たちの中にはマティウスとカインの姿もあった。

「あの、エルウィン様はいつお見えになるのですか?」

 マティウスが手を上げた。

「う……そ、それは……」

 スティーブが口ごもった時、馬車に乗って同行するミカエルとウリエルが答えた。

「エルウィン様はリアが逃げちゃって落ち込んでいるんだ」

「だから僕達が代わりにリアを探しに行くんだよ」


 その言葉に一斉にざわめく騎士たち。

「何だって……?」
「あのエルウィン様が?!」
「まさか人並みに落ち込むことがあるなんて……」
「やはり逃げられてしまったのか……」

 しかし、王都へ同行したマティアスとカインはエルウィンが変化したことを知っているので、思わず苦笑いをしてしまった。

「ミカエル様、ウリエル様。あまりそのような話は……エルウィン様の権威に関わることでもありますから」

 スティーブは狼狽えながら2人に声を掛けた。

「もうそんなことはどうでもいいよ!早くリアを探しに行こう!皆、出発だ‼」

『はい‼』

 ミカエルの言葉に騎士たちは一斉に返事をする。

 いつの間にか、騎士たちを率いるのはミカエルになっていた――。

 



 

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