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17-27 凍りつく者たち
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「辺境伯!この女はお前の大事な女なのだろう?!」
カルタン族のリーダーはアリアドネを羽交い締めにしながら、短刀を突きつけている。
「アリアドネッ!!」
途端にエルウィンの動きが止まり、顔が青ざめる。そしてその場にいる全員の動きがピタリと止まり、2人の動向に注目する。
「クックック……やはり、そうか!」
そして更にアリアドネの首筋に短刀をあてる。
「!」
冷たい短刀の感触と恐怖でアリアドネは声にならない悲鳴を上げる。
「よせ!アリアドネに手を出すな!」
叫ぶエルウィン。
「そうか?止めてほしいか?辺境伯よ。だったら今すぐ剣を手放せ!」
その言葉に騎士たちは固唾をのんで見守る。エルウィンは相手の不意打ちを狙うのが得意な事はこの場にいる騎士たち全員が知っている。
誰もが、きっとエルウィンの頭の中には何か戦略があるに違いないと考えていた。
しかし――。
「分かった!!」
エルウィンは返事をするやいなや持っていた剣をあっさり手放してしまった。
カラーン……
乾いた音を立てて地面に落下するエルウィンの剣。
「う、嘘だろう!」
「エルウィン様が剣を捨てた!」
「信じられない!!」
「本気ですか?!エルウィン様!!」
騒いだのは当然騎士たちであった。
「うるさいっ!!」
それをエルウィンが一喝する。
「アリアドネに万一のことがあったらどうするつもりだ!!それなら剣を捨てたほうがマシだ!!」
「ゲッ!!」
「嘘だろうっ?!」
「本気なのだろうかっ?!」
「エルウィン様が剣を捨てるだって!」
「戦うことしか脳がないのに!!」
騒然とする騎士たち。
一方、剣を捨てたエルウィンをアリアドネは信じられない気持ちで見つめていた。
(あのエルウィン様が……こんな……私なんかの為に剣を捨てるなんて……)
これに喜んだのはカルタン族の男たちであった。
「野郎ども!辺境伯はすっかり腑抜けになった!よし!奴を含めてここにいる騎士共を全員片付けてやる!少しでも抵抗すればこの女の命は無いからな!」
アリアドネを羽交い締めにしたままリーダーが吠える。
(そ、そんな……私のせいで、また皆さんに迷惑を……!もう誰も犠牲にしたくないのに……!)
覚悟を決めたアリアドネが声を振り絞って叫んだ。
「エルウィン様!私の事は構わずに戦って下さい!!私はどうなっても構いませんから!!」
「そんなこと出来るか!!お前に万一のことがあったらどうするんだ!!戦えるはずないだろう!!」
エルウィンが叫び返す。
『!!!!』
エルウィンの言葉にアイゼンシュタットの騎士たちを含め、カルタン族の男たちまでがその場で凍りつく。
まさか血も涙もないと恐れられる辺境伯が、女性の為に戦うことを放棄するとはおおよそ考えつかないことだったからである。
「よ、よし!お望み通り、お前ら全員……ぐわぁっ!!」
突然リーダーは叫び、アリアドネを手放した。
一瞬何が起こったか分からず、その場に立ち尽くす一同。
「ぐああああっ!!目が!!俺の目がぁああ!!」
リーダーは右目を抑えて地面に倒れ込み、転げ回る。
「やったね!」
「流石はお兄ちゃん!」
ミカエルとウリエルが木の上から姿を現した。ミカエルの手にはスリングショットが握りしめられている。
「アリアドネ様っ!!」
突如物陰からマティアスが飛び出してくると、アリアドネの腕を掴んで背後に引き寄せた。
「な、何だ?!何が起こった!」
「畜生!」
「隠れていた仲間か!」
騒ぎ出すカルタン族の男たち。
「エルウィン様!アリアドネ様はお任せ下さい!!」
カインが剣を持って建物の陰から飛び出してきた。
「分かった!!」
エルウィンは剣を拾い上げると、カルタン族達に突っ込んでいく。
「貴様ら……!覚悟しろーっ!!」
そして雄叫びを上げてエルウィンに続くアイゼンシュタットの騎士たち。
もはや……カルタン族の残党達は、『戦場の暴君』と呼ばれるエルウィンの敵では無かった――。
カルタン族のリーダーはアリアドネを羽交い締めにしながら、短刀を突きつけている。
「アリアドネッ!!」
途端にエルウィンの動きが止まり、顔が青ざめる。そしてその場にいる全員の動きがピタリと止まり、2人の動向に注目する。
「クックック……やはり、そうか!」
そして更にアリアドネの首筋に短刀をあてる。
「!」
冷たい短刀の感触と恐怖でアリアドネは声にならない悲鳴を上げる。
「よせ!アリアドネに手を出すな!」
叫ぶエルウィン。
「そうか?止めてほしいか?辺境伯よ。だったら今すぐ剣を手放せ!」
その言葉に騎士たちは固唾をのんで見守る。エルウィンは相手の不意打ちを狙うのが得意な事はこの場にいる騎士たち全員が知っている。
誰もが、きっとエルウィンの頭の中には何か戦略があるに違いないと考えていた。
しかし――。
「分かった!!」
エルウィンは返事をするやいなや持っていた剣をあっさり手放してしまった。
カラーン……
乾いた音を立てて地面に落下するエルウィンの剣。
「う、嘘だろう!」
「エルウィン様が剣を捨てた!」
「信じられない!!」
「本気ですか?!エルウィン様!!」
騒いだのは当然騎士たちであった。
「うるさいっ!!」
それをエルウィンが一喝する。
「アリアドネに万一のことがあったらどうするつもりだ!!それなら剣を捨てたほうがマシだ!!」
「ゲッ!!」
「嘘だろうっ?!」
「本気なのだろうかっ?!」
「エルウィン様が剣を捨てるだって!」
「戦うことしか脳がないのに!!」
騒然とする騎士たち。
一方、剣を捨てたエルウィンをアリアドネは信じられない気持ちで見つめていた。
(あのエルウィン様が……こんな……私なんかの為に剣を捨てるなんて……)
これに喜んだのはカルタン族の男たちであった。
「野郎ども!辺境伯はすっかり腑抜けになった!よし!奴を含めてここにいる騎士共を全員片付けてやる!少しでも抵抗すればこの女の命は無いからな!」
アリアドネを羽交い締めにしたままリーダーが吠える。
(そ、そんな……私のせいで、また皆さんに迷惑を……!もう誰も犠牲にしたくないのに……!)
覚悟を決めたアリアドネが声を振り絞って叫んだ。
「エルウィン様!私の事は構わずに戦って下さい!!私はどうなっても構いませんから!!」
「そんなこと出来るか!!お前に万一のことがあったらどうするんだ!!戦えるはずないだろう!!」
エルウィンが叫び返す。
『!!!!』
エルウィンの言葉にアイゼンシュタットの騎士たちを含め、カルタン族の男たちまでがその場で凍りつく。
まさか血も涙もないと恐れられる辺境伯が、女性の為に戦うことを放棄するとはおおよそ考えつかないことだったからである。
「よ、よし!お望み通り、お前ら全員……ぐわぁっ!!」
突然リーダーは叫び、アリアドネを手放した。
一瞬何が起こったか分からず、その場に立ち尽くす一同。
「ぐああああっ!!目が!!俺の目がぁああ!!」
リーダーは右目を抑えて地面に倒れ込み、転げ回る。
「やったね!」
「流石はお兄ちゃん!」
ミカエルとウリエルが木の上から姿を現した。ミカエルの手にはスリングショットが握りしめられている。
「アリアドネ様っ!!」
突如物陰からマティアスが飛び出してくると、アリアドネの腕を掴んで背後に引き寄せた。
「な、何だ?!何が起こった!」
「畜生!」
「隠れていた仲間か!」
騒ぎ出すカルタン族の男たち。
「エルウィン様!アリアドネ様はお任せ下さい!!」
カインが剣を持って建物の陰から飛び出してきた。
「分かった!!」
エルウィンは剣を拾い上げると、カルタン族達に突っ込んでいく。
「貴様ら……!覚悟しろーっ!!」
そして雄叫びを上げてエルウィンに続くアイゼンシュタットの騎士たち。
もはや……カルタン族の残党達は、『戦場の暴君』と呼ばれるエルウィンの敵では無かった――。
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