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18-14 叫ぶエルウィン
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「い、一体……アリアドネが王太子殿下に連れて行かれたとは……どういうことなのだ……?」
痛みに耐えながら青ざめた顔でエルウィンはマティアスに尋ねた。
「あ……ま、まさか……」
スティーブが口元を抑える。
「何だ?スティーブ。何か心当たりがあるのか……?だ、大体……何故王太子殿下がこの村に……?」
エルウィンは鋭い眼光で睨みつけた。
「エルウィン様……恐らく王太子殿下は我々の後を追って……いえ、アリアドネ様の後を追って『ウルス』へやって来たのではないかと思います」
マティアスは鎮痛の面持ちで答えた。
「な、何だって……?うっ!」
声を荒らげたエルウィンだが、背中の痛みに呻いた。
「落ち着いて下さい!背中の傷に障ります!」
なだめるシュミットにエルウィンは言い返した。
「落ち着けだと?!無茶を言うな!アリアドネが……王太子に奪われてしまったんだぞ?!」
「いいえ……大将、それは多分違いますよ」
スティーブが静かに話す。
「違うだと?何故そんなことが言える!」
「それは『生命の雫』と呼ばれる液体の為ですよ」
「『生命の雫』?一体それは何だ……?」
「良く聞いて下さい、大将……」
スティーブは重い口を開いた――。
エルウィンが受けたカルタン族の毒は城にあるどの解毒薬も効果が無かったこと。そして薬士から、王族のみが所有する『生命の雫』という液体なら解毒可能だということを教えられたこと。
そしてその液体を譲ってもらう為に王都へ向かおうとしていた矢先、偶然にもマクシミリアンが現れたこと。
そこへアリアドネが姿を見せるとマクシミリアンに2人だけで話をさせるように命じられ……その後、『生命の雫』を渡されたこと。
スティーブの説明を聞いたエルウィンはキルトを握りしめ、ギリギリと歯を食いしばった。
「そ、それでは……アリアドネは『生命の雫』と引き換えに……王太子に連れて行かれたというのか……?」
「ええ……恐らくは……」
スティーブが静かに返事をする。全員が口を閉ざし、室内は重苦しい雰囲気に包まれる。
「ふ……ふざけやがって……!!」
エルウィンは激痛に顔を歪めながら、ベッドから降りようとした。
「何をされるおつもりですか?!エルウィン様っ!!」
エデルガルトが慌ててエルウィンの両肩を抑える。
「師匠!放して下さい!すぐに……アリアドネを追わなければ……!」
「いいえ!放しませんぞ!エルウィン様はたった今目が覚められたばかり!しかも普通の者ならばとっくに死んでいたほどの猛毒が10時間以上も体内に残っていたのですぞ?!行かせられるはずがないでしょう?!」
「ですが!アリアドネが!!」
「落ち着いて下さい、エルウィン様!」
「そうですよ!大将!その身体で無茶だ!」
「止めるな!離せ!!」
「エルウィン様!いい加減にして下さい!!」
するとそれまで黙っていたマティアスが叫んだ。
「マティアス……」
エルウィンがマティアスを見る。
「エルウィン様はお分かりにならないのですか?恐らくアリアドネ様は王太子殿下に頼んだに違いありません。エルウィン様の命を助けてくださいと。アリアドネ様がどんな気持ちで自分と『生命の雫』を引き換えたのか……。それは何としてもエルウィン様に死んでほしくなかったからなのですよ!!今、アリアドネ様の元へ向かえば約束を反故したことになってしまいます!王族に歯向かうことになるのですよ!」
「く……くそっ……!アリアドネ……ッ!!」
エルウィンはまるで血を吐くように叫んだ――。
痛みに耐えながら青ざめた顔でエルウィンはマティアスに尋ねた。
「あ……ま、まさか……」
スティーブが口元を抑える。
「何だ?スティーブ。何か心当たりがあるのか……?だ、大体……何故王太子殿下がこの村に……?」
エルウィンは鋭い眼光で睨みつけた。
「エルウィン様……恐らく王太子殿下は我々の後を追って……いえ、アリアドネ様の後を追って『ウルス』へやって来たのではないかと思います」
マティアスは鎮痛の面持ちで答えた。
「な、何だって……?うっ!」
声を荒らげたエルウィンだが、背中の痛みに呻いた。
「落ち着いて下さい!背中の傷に障ります!」
なだめるシュミットにエルウィンは言い返した。
「落ち着けだと?!無茶を言うな!アリアドネが……王太子に奪われてしまったんだぞ?!」
「いいえ……大将、それは多分違いますよ」
スティーブが静かに話す。
「違うだと?何故そんなことが言える!」
「それは『生命の雫』と呼ばれる液体の為ですよ」
「『生命の雫』?一体それは何だ……?」
「良く聞いて下さい、大将……」
スティーブは重い口を開いた――。
エルウィンが受けたカルタン族の毒は城にあるどの解毒薬も効果が無かったこと。そして薬士から、王族のみが所有する『生命の雫』という液体なら解毒可能だということを教えられたこと。
そしてその液体を譲ってもらう為に王都へ向かおうとしていた矢先、偶然にもマクシミリアンが現れたこと。
そこへアリアドネが姿を見せるとマクシミリアンに2人だけで話をさせるように命じられ……その後、『生命の雫』を渡されたこと。
スティーブの説明を聞いたエルウィンはキルトを握りしめ、ギリギリと歯を食いしばった。
「そ、それでは……アリアドネは『生命の雫』と引き換えに……王太子に連れて行かれたというのか……?」
「ええ……恐らくは……」
スティーブが静かに返事をする。全員が口を閉ざし、室内は重苦しい雰囲気に包まれる。
「ふ……ふざけやがって……!!」
エルウィンは激痛に顔を歪めながら、ベッドから降りようとした。
「何をされるおつもりですか?!エルウィン様っ!!」
エデルガルトが慌ててエルウィンの両肩を抑える。
「師匠!放して下さい!すぐに……アリアドネを追わなければ……!」
「いいえ!放しませんぞ!エルウィン様はたった今目が覚められたばかり!しかも普通の者ならばとっくに死んでいたほどの猛毒が10時間以上も体内に残っていたのですぞ?!行かせられるはずがないでしょう?!」
「ですが!アリアドネが!!」
「落ち着いて下さい、エルウィン様!」
「そうですよ!大将!その身体で無茶だ!」
「止めるな!離せ!!」
「エルウィン様!いい加減にして下さい!!」
するとそれまで黙っていたマティアスが叫んだ。
「マティアス……」
エルウィンがマティアスを見る。
「エルウィン様はお分かりにならないのですか?恐らくアリアドネ様は王太子殿下に頼んだに違いありません。エルウィン様の命を助けてくださいと。アリアドネ様がどんな気持ちで自分と『生命の雫』を引き換えたのか……。それは何としてもエルウィン様に死んでほしくなかったからなのですよ!!今、アリアドネ様の元へ向かえば約束を反故したことになってしまいます!王族に歯向かうことになるのですよ!」
「く……くそっ……!アリアドネ……ッ!!」
エルウィンはまるで血を吐くように叫んだ――。
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