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13 レイア

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「失礼します」


入ってきたのは、少しツリ目で赤髪を高く一つに結えている、若いメイドだ。


白襟に紺ワンピースのメイド服に身を包む彼女はギョッとした目でこの部屋を見渡し、私を見るなり眉を顰めた。


私を見つめる目は冷ややかで、彼女の眉間に寄っていく皺はどんどん深くなっていく。


それは、荒れ果てた物置小屋で変な生き物でも見たような顔だった。


きっと客観視するとそうなんだろう。


私の灰色の髪は腰くらいまで箒のようにボサボサに伸びている。


肩から下の毛は複雑に絡みついて塊になっているので、結構切らないと櫛すらまともに通らないだろう。


そしてこの黄ばんだ白い綿のワンピースも、さっきまで泣いていた酷い顔も、相当醜悪に見えるはずだ。


この部屋だって、何十年も放置されていた物置のような離れの一室。


家具はどこか破損していたり、壊れているものがほとんどだし、椅子やテーブルもガタガタする。


多分、メイドの部屋の方が綺麗なのだろう。


「彼女はレイアです。
5年前からこの屋敷で働いております。
旦那様が唯一この離れに立ち入ることを許した優秀なメイドです」


フレディがそう紹介すると、レイアは盛大なため息をついて彼を睨む。


「何なのよここ。
これが人の住む場所なの!?
なにこれ、ハリネズミのバケモ……」


うっ……


私を指差しながら言うレイアの反応は、思っていたより数段切れ味があった。


そして、レイアが最後まで言わないうちに、フレディはレイアの口にハンカチをぐいっと突っ込んだのだった。


「んんむぐぅぅっ!」


レイアは手足をバタつかせ苦しげに暴れる。


「エリーゼ様を愚弄するなと言ったはずだ」


そのエメラルドの瞳はレイアを鋭い眼光で睨みつけ、指がめり込むほどにレイアの顎をぎゅううと掴んでいる。


もはや、私はこの空気の中で頭が痛くなってきた。


「口の利き方がなっていない者を入れてしまい、大変申し訳ありません。
本来ならば代わりの者を呼ぶ所ですが、離れに立ち入る許可が下りているのはレイアのみでした。
耳障りなことを言わないように、このまま作業させます。
さぁ、エリーゼ様はこちらにお掛けください」


フレディは器用にも片手でレイアの顎を掴みながら引きずり、もう一方の手で私をハイテーブルの椅子に座らせた。


「レイア、エリーゼ様の髪を肩に付くくらいで切るんだ。
口の中のハンカチを取ることは許さない」


……ハンカチを口に入れたまま作業できるのかな。


すると、レイアはフレディを睨みつけると腰に下げている鋏を持って、私の座る椅子の背後に立った。


この部屋に鏡は無いので、作業の様子は全くわからないだろう。


レイアが私の髪に触れた、その時だった。


全身に鳥肌が立ち、この世の終わりを感じる。


なに、この、殺気は……





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