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後編

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「これ好きだよね、あっくん。めっちゃ腰震えてんじゃん」
「あぅっすき……っすきぃい! ああっきもちい!」
「かわいいよ」

 耳から脳みそへ働きかけるように、口を寄せて囁き入れたら、あっくんは「んんん!」と零しながら全身を震わせた。眉を垂らして、腰をくねらせて。まるで俺の声が好きだと言ってるみたいに。

「亀頭チュコチュコすんのも好きだもんね、ほら」
「ふぁあっ、あ、あっ、すっきぃ、チュコチュコきもちいぃ!」

 指で亀頭を軽く絞めて、扱いてやる。さっき出した篤志の精液が指に纏わりついて、クチュクチュいやらしい音を放ちながら絡む。
 空いている手で乳首をカリカリと優しく掻きながら、亀頭を激しく弄んでやったら、篤志は狂ったように喘ぎ泣いて、すっかり俺の虜になっていく。

「あっあっやあ、こぉちゃん! こぉちゃんの手ぇきもちいい! ちんちんクチャクチャにされて、乳首カリカリされて、おれっおかしくなっちゃううぅ!」
「そうやって自分で煽ってんだ、まじあっくんエロすぎ」
「あっダメ、いく、ンいっちゃう!」

 はい。『イッちゃう』は『止めて』の合図。仰せのままに手をパッと放すと浮いた腰をベッドに打ち付けて、荒い呼吸を繰り返す。呼吸が整ってきたらもう一度。軽く竿を扱いてから、また亀頭を手のひらで包んでクルクルと撫でくり回してやる。
 これを三回も繰り返せば、篤志は喘ぎの混ざった呼吸を胸でしながら、涙をこぼすんだ。
 あぁ。可愛いな。なんで俺のじゃないんだろ。俺だったらこの快感を、毎日だって与えてあげられるのに。篤志のして欲しいことなら、何だって叶えてあげるのに。
 股間のモノは篤志の痴態にあてられて、デニムパンツの中で痛いくらいに張り詰めてる。
 だけどソレを悟られないように、俺は篤志の体に触れない絶妙な加減で腰を引いた。

「ぁああン! はっはあっダメ、だめだめ!」

 震える手で俺の手首を掴んで止めようとしてくる。それを俺は掴み返して外すと、あっさり手をどけて枕を握った。

「んん、も、いきたい、イきたいぃ」
「いいよ。イッちゃえ」

 左手でタマを転がすように揉みながら、右手で射精を促すように竿を扱いてやる。すると篤志は気持ちよさそうに声を上げながら、勢いよく白濁を飛ばした。

「っはあ、はあ、あっんぅ」

 それでも、イって終わりじゃない。放ったばかりの敏感な亀頭をまた、俺は手のひらで包んでクルクルと撫でまわしてやる。

「あっあっ待って!」
「待っていいの?」
「や、やだぁっ……ンンン」

 篤志の『待って』は口だけ。それを俺は分かってる。だから俺は手を止めずに、亀頭への刺激を続ける。クルクル、チュコチュコ。コイツが息を止めて我慢することで、余計にいやらしい水音が室内を支配する。

「エッチだね、この音。どっからしてるのかな?」
「んぅ、おれの……ちんこぉ」
「誰が、してくれてる?」
「こぉたろ……っンン」
「そう、俺だよ。覚えておいて?」

 コクコクと、何度も首を縦に振る。頬を紅潮させて、眉を垂らして、瞳を潤ませて。

「っはあ、あンもぉ、きてる! 潮でちゃうぅ!」
「出しちゃえ」
「ッ、っくぅう! あっや……ンンーッ」

 腹筋に力が入ると同時に、プシャッと潮が勢いよく噴出した。ビシャビシャと、いつまでも止まらない。クルクル撫で回す俺の指の隙間からもそれが溢れていく。

「ああーすっげ……」

 止めていた息を吐き出してゼェゼェと呼吸を繰り返している。そうしてまた息を詰めると、止まりかけた潮がまた吹き出す。

「っは、はあっ、止まんなぃ」
「止まんないね……ほら、まだ出るよ」
「あっあっもおやぁ!」

 俺の親指で鈴口擦られて、噴きまくってる。俺の手で、気持ちよくなってる。かわいい、可愛い。愛おしくて堪らない。
 だけど俺は飽くまでも『親友』だから、この思いをカタチにすることはできない。
 俺は、こいつの性欲を満たすために使われてる、ちょっと特殊なただの親友だから。

「あっくん、気持ちよかった?」
「ん……ありがと、航太朗」
「……今度は、お尻も試してみる?」
「ん、試してみたい」
「色んなこと、挑戦してみようね」
「ぅん……」

 くったり脱力したカラダ。ゆっくり呼吸を整えながら、虚ろな目をしてふにゃふにゃとした口調で俺の問いに答える。やがて篤志は俺の腕の中で目を閉じて、寝息を立て始めた。

「あっくん? 寝ちゃったか」

 普段はしっかり男らしいのに、こういう時だけ甘えた声出してメス堕ちすんのがいい。
 彼女は知らない。俺しか知らない、篤志の秘密。
 俺は篤志をそっと抱え上げてベッドに寝かせると、風呂場に行ってタオルをお湯で濡らし、ホットタオルを作った。そうして静かに戻ってベッドサイドに腰掛け、色んな液体で汚れた体を優しくキレイに拭き取ってやる。
 ここを出たらこの身体は、また彼女のものになるんだ……

「……ねぇあっくん……俺のモノになってよ」
「……」

 篤志の胸板、心臓の辺りにそっと、手で触れる。
 寝落ちしている篤志からは、静かな寝息しか聞こえない。

「彼女と別れて……俺だけの……あっくんでいて」

 俺は卑怯だ。こんな時にしか、想いを伝えられない。
 親友とは言い難い物凄く醜くて重たい感情が、込み上げてくる何かに喉を絞められて目頭にジンと痛みを伝え、瞳が涙で滲んでいく。

「好きだよ、あっくん」

 気付かれないように、俺は彼の頬にそっと、唇を落とした。
 高校時代に知り合って、意気投合していつの間にか一緒にいるのが当たり前になっていた親友。
 俺がゲイだって知っても、普通でいてくれた。
 大事だったんだ、すごく。
 だから篤志とは一生親友でいよう、そう思えていたのに。
 いつの間にか俺だけ、恋に変わっちゃってたんだよなぁ。

「はは、つら……」

 漏れ出てしまった空笑い。
 俺は汗で張り付いた篤志の前髪を指先で避けると、もう一度だけと心で唱え、彼の額にキスをした。




→『ゲイの親友に囲われたいと願う彼女持ちのサイテーな俺の話』へ続く
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