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前編
しおりを挟む我が婚約者ビフェロガートは王子でありながら女遊びが酷いうえ違法行為にまで手を出しておりさらに婚約者である私に対してやたらと暴言を吐いてくるという悪質な人物である。
「フィーナ! 貴様! 言っていたお菓子はまだ届いていないのか!」
「言っていたお菓子とは一体何でしょうか」
「何だと!? 言っただろう! 昨日! 明日届くからと! まさかもう忘れたというのか!?」
「お聞きしていません」
「クソが!! ――ああもうこれだから我が便所婚約者は。フィーナ、貴様、どれだけ役立たずなんだ!!」
こんな理不尽なことを言われることだって多々ある。
「貴様はとことん不細工だな」
「そうでしょうか?」
「ああそうだ! 俺が言っているんだから確かなことだよ、貴様は王国一の不細工女!」
「……ではなぜ婚約破棄しないのでしょう?」
「知るか! 婚約させられたのは俺の意思じゃない! カスがくだらんことを聞くな、今後何も発するな!」
散々な言われよう、ということだって、珍しいことではない。
ビフェロガートはとにかく暴言を吐くことが好きだ。そして私を侮辱することも。彼が私を手放さずにいるのは、恐らく、好き放題言えるサンドバッグ的存在が必要だからなのだろう。そうでなければとうに捨てているはず。なんせ少しも愛していないのだから。
そんなある日、あまりにも酷い言葉を並べられたので。
「ビフェロガートさん、それ以上暴言を吐かれるのであれば、私も叱るべき対応をします」
さすがに耐えられず反撃に出ることにした。
「何だと? ……貴様のような馬鹿に何ができる」
「情報を出すのです。世に。貴方が日夜行っている違法な取引について」
「な」
「ご自分のことですから、ご存知でしょう?」
私だって人間だ。心を持っている。何を言われても平気なわけではないし、何を言われても我慢して大人しくしていられるわけではない。
「な、何を……言い出すんだ。嘘を並べるな! 貴様のような愚かな女が俺の何を知っているというんだ。所詮くだらん脅しだろう!」
今になって慌て出すビフェロガート。
「いいえ。取引の証拠、こっそり集めていましたから」
そんな彼には笑みを向けてやろう。
そう、どこまでも綺麗な、純粋な笑みを。
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