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2話
しおりを挟むそれほどに傷ついていた。
正直自分で想像していた程度以上に傷ついている感じであった。
それでも時は流れて。
ついにやって来るモイールと妹の結婚式。
私はそれを体調不良で休むことにした。
到底参加できる状態ではなかったのだ。
「それじゃ、行ってくるわねお姉さま」
「いってらっしゃい……」
「参加してくれないなんて酷い姉。でもまぁいいわ。お姉さまなんていなくたって幸せにはなれるもの」
姉である私の欠席を妹は良く思っていないようであった。
――そして彼女は帰らぬ人となった。
結婚式中事件が起きた。武装組織の男たちが会場に武器を持って乱入してきたのである。特に怨みがあるわけではなかったようだが、男たちは好き放題暴れて。その結果、参加者は皆殺され、新郎新婦もその白色の衣を真っ赤に染め上げられて死へと誘われた。
モイールの一族も、我が一族も、ほぼ全員が死亡した。
助かったのは私と私の看病のために残ってくれていた母だけ。
結婚式――人生最高と言っても過言ではないその瞬間に、妹らは地獄へと叩き落されたのだ。
「こんなことになるなんて、ね……」
「大丈夫? 母さん」
「ええ。でもショックで。今はちょっと……ふらふらしてしまいそうだわ。どうしても……まだ心が追いつかないの」
母はかなり衝撃を受けていたけれど。
「でも、貴女が生き残って良かった。体調不良を良かったなんて言いたくはないけれど……本当ならわたしたちだって死んでいたのだから、そう考えれば貴女だけでも生き残ってくれたことに感謝するし体調不良にも感謝したい気持ちだわ」
それでも。
小さな奇跡、小さな幸福を、噛み締めていた。
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