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第一部

番外編 グウェンドルフ・フォンフリーゼの鍾愛 おまけ②*

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「んっ、あ、ん……」

 目の前でレイナルドが押し殺した喘ぎ声を漏らす。
 ならすために入れた指で中を擦ると、軟膏で滑りが良くなった彼の後孔からは湿った音が響いた。

「んんっ、ん、あぅ」

 ラタンチェアの背もたれに背を預けた彼が頭を後ろに擦り付けて悶えるのを私はじっと見下ろして目を細めた。
 中を解すために、私はレイナルドを椅子に座らせたまま彼の膝を折り曲げて足を持ち上げた。背もたれに傾斜があるため足を持ち上げれば上手く後ろの窄まりが見える体勢になったのだが、そんな格好をさせられるとは思わなかったらしい彼が顔を真っ赤にして猛烈に抵抗したので、持ち上げるのは片足だけになった。少しやりづらいが、彼が羞恥に泣きそうだったので妥協した。
 そんなに恥ずかしがらなくても彼の身体はもう隅々まで見ているのだが、それを言うと蹴られそうなのでやめておく。もう何度も身体を重ねているにも関わらず、相変わらず恥ずかしがる彼も可愛らしい。普段は鷹揚としていて冷静なところもあるレイナルドが、快感に溶けると表情も態度も可愛くなるのが堪らなく愛しいと思う。

 広さのある座面に私も片膝をついて、彼の片足を肩に担ぐように引っ掛けた。籐の椅子はフレームがしっかりした木で補強されているのか二人分の体重がかかっても持ち堪えている。

「んっ、んっ、あっ」

 解れてきたところで二本の指を抜き差しすると、彼が震えて高い声をあげた。中の比較的浅いところの、性器の内側に面した場所にどうやら彼の弱い部分があるらしく、そこに指を当てて擦ると彼はびくびく震えて身悶える。擦ると足に力が入るが、不思議と中は緩んでいく。

「あっ、あ、んん」

 声を殺しながら顔を隠そうと、彼は肩にかけたバスタオルをしきりに手で引っ張っている。あいにく背中に挟まっているためタオルは少し短く、顔を完全に隠すには長さが足りない。私としては彼の顔が見れて好都合だった。必死に快感に抗おうとする表情がこの上なく可愛い。

「んっ、ん、そこばっか触んな」

 下がり切った眉で目に涙を浮かべて言われても煽られているようにしか感じないのだが、私もそろそろ限界なので素直に動きを緩めて彼に触れるだけの口付けを落とす。

「レイナルド、後ろからと私の上に乗るのなら、どちらがいい」
「んっ、え?」

 潤んだ目が戸惑ったように揺れる。
 私の問いの意味を把握して目尻を赤く染めた後、彼はタオルの端を握りしめたまま目を伏せた。

「……後ろ」

 上に乗るのはやはりまだ恥ずかしいらしい。
 確かにベッドでしていてもあまり上には乗ってくれない。前戯の時は気にしないようだから、もしかしたら上に乗ると体重がかかって奥まで突き入れられそうで怖いのかもしれない。
 もう少し慣れるまで時間が必要だなと再確認して、私は指をそっと引き抜いた。

「んんっ」

 眉を寄せて震えた彼の頬にキスをしてから、持ち上げていた足を下ろし、彼を支えながら後ろ向きに体勢を変えさせた。
 痛くならないように肩にかけていたバスタオルを敷いてから椅子の座面に膝で乗り上げさせ、手は背もたれに掴まるように促した。私も座面に片膝を乗せたまま彼の身体が安定するように腰と胸の前に手を回す。
 私の手が触れるとぴくっと反応した彼は少し緊張して肩をすくめた。赤く染まっているうなじに口付けて、「入れるぞ」と確認すると小さく頷く。

「あ、んっ」

 先端を押し込むとびくっと肩が揺れ、支えた腰が少し逃げた。それを押さえて少し強引に先の張り出した部分まで入れてしまう。くっと彼が息を呑むが、そこを超えると楽になるので悪いと思いながらも彼を押さえ込んだ。

「はっ、……あ」

 一番きつい部分が入った後で、彼がぎゅっと背もたれを握っていた手の力を微かに緩めた。
 彼の力が抜けたところでそのまま半分ほど中に収める。彼も上手く息を吐いて私の動きに呼吸を合わせてきた。

「ふっ、んん」

 熱い内膜が絡みつくように締め付けてきて強く突き入れたくなるが、理性で耐える。
 背もたれに手をついて浅く息を吐くレイナルドの後頭部や首筋にキスを落としながら、彼の中が馴染むのを待った。初めの頃に比べて彼もだいぶ慣れてきたが、何度入れても彼が痛くて苦しいのではないかと毎回心配になる。

「大丈夫か」
「ん……うん。大丈夫」

 彼の返事を聞いてほっと息をつき、しばらく彼の背中や腰を撫でていると、呼吸が落ち着いたら逆に煽られてきたのかレイナルドが顔だけこちらに向けてきた。

「ん……も、いいから、動いて」

 じれったそうに潤んだ目で強請られると破壊力がある。思わずまだ狭い隘路に腰を奥まで突き入れていた。

「あっ、んんっ」

 慌てて顔を前に戻したレイナルドが背もたれに掴まり直す。少し強引だったかもしれないと反省したが、中を広げるように突くと彼の中は次第に緩んできた。口から漏れる声の甘さから快感を拾っているようなのがわかって安心する。思えば、この前の魔力暴走の時に私がやらかしてしまった時から、確かにレイナルドは感じやすくなったと思う。

「あっ、ん、ふぁ」

 椅子の上だとやはり安定感が悪いのか、彼の身体が動きに合わせてブレる。胸の前に回した手も腰に回して支えた。揺すりながら浅い場所にある彼の弱いところを探り、奥まで突き入れる途中でその場所を擦る。

「んんんっ、あっ、やっ」

 びくっと震えた彼の腰が逃げようと反る。それを押さえて強めに突き上げると軟膏で濡れた中がぎゅっと締まって絡みついてくる。持っていかれそうになるのを息を詰めてやり過ごした。
 彼の立ち上がったものも一緒に握って中を擦りながら扱くと、内壁がぐにゃぐにゃに収縮して私の熱に纏わりついてきて気持ちが良い。

「あっ、あ、ん、グウェ、グウェン」

 びくびく震えながらレイナルドが私の名前を呼ぶ。その声音が少し切実だったので、私は動きを緩めた。

「どうした」
「んっ、これ、掴まるところ細くて、怖いっ、やっぱお前の上、乗りたいっ」
「っ」

 危うく彼の中に出してしまうところだった。

 動きを止めてまじまじと彼の後頭部を見ると、彼は上気した顔で私の方を振り返った。赤くなった目元が少し不安げに私を見上げる。

「上で怖くないか」
「ん。ぎゅってするから大丈夫。落ちないように抱えて」
「……わかった」

 彼はこのタイミングでこれを無自覚に言っているのだろうか。
 私が日頃から心配しているのは彼のこういうところなのだが、レイナルドはわかっているのだろうか。いや、わかってはいないんだろう。
 いずれにしろ、これ以上話していたら無体を働いてしまう。私は頷くと彼と体勢を入れ替えた。

 私が椅子に座り、抱き合うように彼を上に乗せる。二人分の体重がかかった椅子は少し軋んだが、壊れることはない。激しく動くのは危ないかもしれないが、この安定感なら続行しても問題ないだろう。

「んっ、んんっ、ふあ」

 もう一度彼の中に屹立を埋め直すと、自重で沈んでいった彼はひくひく震えながら私にしがみ付いてきた。腕を首に回されて密着されると動きにくいがその分幸福感があって良い。私も彼の薄い身体に腕を回して抱きしめた。
 私が座るとゆとりは少ないが、椅子の座面の端に折り曲げた足がついたようで彼の身体が安定する。ほっとしたのか彼の肩から力が抜けた。

「大丈夫か」
「んっ、うん……やっぱこの方がいい。グウェンキスしたい。キスして」

 快感に緩んだ顔で安心したように笑ってそんなことを言うから、私は真顔になって彼をこの先一体どうしたらいいのかと本気で自問した。こんなに無防備で、危なすぎるのではないか。彼は今までどうやって好意を寄せてくる人間の手をかわしてきたのか。彼の悪友のおかげであるならば、私はプリムローズ卿に改めて感謝しなければならない。
 背中に回していた片方の手をレイナルドの頭の後ろに回して引き寄せ、唇を塞ぐ。

「んっ、ん」

 すぐに舌を出してきた彼に応えて私も彼の唇に吸い付きながら舌を絡めた。

「ん、すき、グウェン」

 キスの合間に珍しくそんなことを言われたので私は少し驚いて、それから身に染み渡るような幸福を覚えた。彼の唇を軽く食んで「愛してる」と囁くと、レイナルドは目元を緩めて嬉しそうに微笑む。
 口付けを深めると中が締まり、じわじわと私の熱と混じり合うように内壁が収縮した。強請るように締めてくるので気持ちが良い。もうこれ以上は耐えられないところまできていたので、私は彼の腰を掴んで軽く揺すり上げた。

「んっ、あっ」

 途端に溶けた声を上げるレイナルドももう限界が近かったようで、キスをしながら私の動きに合わせて控えめに腰を動かしてくる。

「んっ、んっ、ふっ、」

 大きく動くのは椅子に制約があって難しいので、彼の弱いところを狙ってぐりぐり擦ると、ぎゅっと中が締まった。

「あっ、ん、んんっ」

 彼が目をぎゅっと閉じて肩まで赤く染まり震える。爪先に力が入ったタイミングで彼の細い腰をぐっと持ち上げて、引き下ろしながら奥まで強く突き上げた。

「んんんっ、んあっ」

 びくっと震えた彼が達して熱を吐き出す。
 その瞬間身体が揺れて彼の両足が座面から滑った。がくんと椅子から足が落ち、バランスを失った彼の身体が深くまで私の上に落ちる。

「あ……ッ、っ」
「っ」

 声にならない衝撃が走ったのか、彼は目を見開いてがくがく震えた。中が強く引き絞られるように締まり、驚いて引き抜くのが間に合わなかった私も彼の中に出してしまった。私が中に放ったことで彼はまたびくっと震えて小さく喘ぐ。

「ぁ……」

 慌てて彼の両膝を掬い、腰の後ろを支えて抱えた。
 細かく震える彼が私の手の動きにも反応して身体を揺らす。大きく見開かれた目からぽろりと涙が溢れた。繰り返し収縮する内膜が中に入ったままの私のものに絡みついてくるが、腰を突き入れたくなる衝動を理性で抑え込んだ。

「レイナルド、大丈夫か」

 心配して顔を覗き込むと、浅く息を吐いていた彼は私と目を合わせてゆっくり瞬きする。

「なに、これ……今いったのに、出てない」

 まだ小さく震えながら彼が混乱して私を見る。
 安心させるように抱きしめると、レイナルドも私に身体を預けて大きく深呼吸した。

「大丈夫か」
「うん。……強烈なのがきたからびっくりしただけ」

 すぐに平常心を取り戻したらしい彼の返事を聞いて私も安心する。彼の呼吸と身体の反応が落ち着いてきたところで、私は先程の彼の問いに答えた。

「さっきのことなら、この前の魔力暴走の時にも君は最後の方では何度か出さずに達していたが」
「……え?」

 そう言うと、彼は愕然とした顔をして私を見てきた。
 あの時は私も理性が吹き飛んでいたのでやめてやれなかったが、記憶ははっきりと残っている。確かに彼は終盤何度か出さずに達していたように思う。レイナルドは意識が朦朧としていたようだったので、覚えていないのは無理もないが。
 あの日のことを思い出したのか、彼は真っ赤になって俯いた。

「それ、マジで言ってる?」
「私がしつこくしすぎたのが悪いが、君は泣きながら出さずに何度かいっていた」
「……俺、最近お前にヤバいところばっかり晒しすぎな気がするんだけど」
「そんなことはない。私は君の新しい一面が見られて嬉しい。それに私は君のことなら全て知りたいし、全部見たい」
「……それはそれで、何か危ない気がすんだよな……」

 彼は呆れたような声を出して小さく息を吐いた。
 まだ赤らんだ顔でもぞっと動き、責めるような目で私を見てくる。

「中に出しただろ」
「すまない、間に合わなかった。そこで洗おう」
「いや、いい。後で自分でやる」
「駄目だ。責任を持って私がやる」

 きっぱり言うと、彼は少し困ったような顔をしてから視線を逸らして唇を尖らせた。

「グウェンにやってもらうと、変な気分になるから……」

 言いながら目尻が赤く染まってくる。
 もしかして、これは誘われているんだろうか。
 真顔になった私の顔をちらりと見たレイナルドは、怯んだような顔をしてから視線を彷徨わせ、それからもう一度私を見て苦笑した。「仕方ないな」と呟いた彼が私の肩に手をついて耳元に口を寄せてくる。

「じゃあやって。……なるべくお手柔らかに頼む」

 そう小さな声で囁いてきた彼に、私はやはり誘われているんだなと都合よく解釈することにした。

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