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第三章 生誕祭

九話

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 そして、現在。
 ヘイルとブランゼン、シャオンにファスティにアイリスは、プツェン達とともに玻璃の城に来ていた。

(どうして……私まで……)

 ついこの間来たばかりの城に、また来ることになってしまったアイリスは、心の中で疑問をぐるぐるさせる。アイリスまで城に来る事になったのも、プツェンが関係していた。
 場所替えの提案をヘイルがした時、

「あら、それなら、アイリスさんも一緒に来れない? 私、アイリスさんとお話するのも、目的の一つだったのよ」

 と言ったのだ。
 ヘイルは無理に付き合わなくて良いと言ってくれたが、アイリスはそれを退ける理由を見つけられず、「どう? アイリスさん」と問いかけるプツェンに、頷いてしまう。
 そして、子竜こども達を帰し、残った皆はアイリス以外竜へ──翼有りへと変わり、アイリスはヘイルの肩に乗って、城まで来た、という次第だった。

「もう、待っててって言われてるのに、すぐ飛び立ってしまわれるんですから。何か騒動を起こさないかと心配しましたよ」

 一の客間にて、ソファに座るプツェンにそう言っているのは、赤毛に茶の瞳の、プツェンとそう変わらない背丈をした女性だった。

「ごめんごめん。でも、私がどこに行くか見当がついてたから、ウェアベル達もここで待機してたんでしょう?」
「それはそうですけど」

 城に着き、一の客間に通された時、そこには三名の竜がいた。全員プツェンの護衛だそうで、この、赤毛の女性はウェアベル・グロックブラン、緑の髪の男性はアズ・ブロアーク、黒髪の女性はティーパス・ヴィアーレットだと、一竜ひとりひとり丁寧に名乗ってくれた。
 そして、水色の髪の竜──ルウォーネも、

『プツェン様の魔力パートナーを務めさせていただいております、ルウォーネ・ヘルウォートと申します。以後、お見知りおきを』

 と、涼やかな声と綺麗な動作の礼をする。
 アイリスは彼らとこの状況に戸惑いながらも、「アイリス・リストァルと申します。皆様、はじめまして」と、なんとか礼を返した。

「で、なんで来た? プツェン」

 先ほど城の侍女達が追加で持ってきてくれた砂糖菓子を口にするプツェンに、対面に座るヘイルが問いかける。

「だから、お忍びよお忍び。少し羽を伸ばしに来たの。それに私、前に言ったじゃない」
「何を」
「アイリスさんに会ってみたいって。忘れちゃった?」

 可愛く小首を傾げるプツェンに、ヘイルはまた、溜め息を吐く。

「……言っていたな、そういえば」

 しかし実行するとは。と、言葉が続けられる。
 大きなソファの、ヘイルとブランゼンの間に座っているアイリスは、それを聞いて、

(私に、会いたかった、と、以前に言っていた? ヘイルさんがプツェンさんに、私の事を話したのかしら……?)

 と、胸の内の疑問が増した。

「──で、ヘイル。一つ質問なんだけど」

 プツェンは持っていた紅茶のカップをソーサーに置き、改まった口調で、こう言った。

「アイリスさんからヘイルの魔力を感じるんだけど、なぜかしら?」

 にっこりと柔らかく笑むその顔の奥から、悪戯っ子のような気配が漏れる。

「……お前……」

 ヘイルは苦い顔になり、ブランゼンもシャオンも、少し固い表情になった。

(? どうして、そんな反応を……あ)

 アイリスはそこで、思い出す。

 ──玻璃の都の長である俺がアイリスに魔力を渡すと、どう問題になるかだが。
 ──何かあるとすると他の都の竜が、特に長がどう思うか、ね。

 以前に、そう、ヘイルとブランゼンが言っていた。
 だから、誤魔化す、とも。

(わ、私、大変な事を……?!)

 アイリスの背中に緊張が走る。ここで、どういう返答をすれば良いのか、何が正解なのか、アイリスはどうにかその答えを導き出そうとする。
 ──しかし。

「……どうせ見当は付いているんだろう? プツェン」

 ヘイルは苦い顔のまま、そう言った。

(えっ?)
「あら、バレてた?」


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