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お父様とお母様は目を白黒させています。

それもそうでしょう。無理矢理婚約に持ち込もうと目論んでいた相手が、何の連絡もなく急にやって来たのですから。

「シュカ様……これは一体どういう……」

お父様は混乱して、上手く言葉が出てこないようですね。

「アリス、支度が出来ているようでしたら、すぐに出発しましょう。ユーネル伯爵がお待ちです」

シュカ様ったら、お父様を完全無視しています。状況説明をしてもらおうと思ったのですが、自分でした方が早そうですね。

「シュカ様、お二人に説明したら出発しますわ。……お父様、お母様、私はあなた方と正式に絶縁したということです。手続きは既に完了していますわ。その上で、私は昨日付でユーネル伯爵家の養子となりました。そしてシュカ様と正式に婚約したのです」

お父様の最後の願いを聞き入れてシュカ様と婚約するなんて、とても良い娘だと思いませんか。

「な、なっ……」

それなのにお父様もお母様も、もう一言も発しなくなってしまいましたね。

「そういうことですので、彼女はもうこの家の人間ではありませんし、僕の大切な婚約者です。これ以上、外まで聞こえるような大声で怒鳴り散らすようでしたら相応の対処をいたします」

シュカ様が私の肩を抱き、静かにお二人に警告しました。

お母様は膝から崩れ落ち、お父様は青筋を立てています。

「ふ、二人して大人をからかうのは止めなさい!絶縁なんて……親の許可なく出来るわけないだろう!?それにユーネル伯爵がお前のような娘を欲しがる訳がない!」

まだ私達の発言が嘘だと思っていらっしゃるのね……。

「お父様、私は先日16歳の誕生日を迎え、成人いたしましたのよ?成人している場合、絶縁を申請するのに両親の許可は必要ありません。それに……ユーネル伯爵と私が親子になるきっかけは、お父様自身が与えてくださったのですよ?私を無理矢理パーティーに送り込んでくれたこと、感謝していますわ」


娘の誕生日も覚えていない父親ですが、ユーネル伯爵と出会わせてくれたことには感謝しています。

ユーネル伯爵と夫人は、招待状なしにパーティーに来た私の事情を聞いてくれ、私の置かれている状況を理解し、救いの手を差し伸べてくれたのです。



「まったく……アリスの実のご両親がこの二人だという事実の方が信じがたいですね。これ以上は話の無駄ですから、行きましょう」

「はい、シュカ様」

あまり時間をかけると、シュカ様やユーネル伯爵にご迷惑がかかりますものね。

二人で荷物を持って家を出ようとすると、後ろから怒鳴り声がしました。

「親に対してこんな不義理が通ると思うのか?!お前ら、絶対に許さないからな!」

一体何を言っているのでしょう。

「何か勘違いをなさっていますが、私はあなた方の娘ではありませんので」

一応さようなら、と声をかけて家を出ました。元父親は最後まで怒鳴っていましたし、元母親はずっと泣いていましたが、もう他人ですので関係ありませんね。

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