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本編

両想いの報告*アルフォンスside*

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「アル。話があるんだ」


アリスがマックスと保健室に行った日の放課後。
マックスにそう呼び止められて、僕はすぐに分かってしまった。

結局、マックスもアリスを好きになったんだと。そして、僕が欲しくて欲しくて堪らなかったものを、もう手に入れてしまったのだと。


前にも二人で話した図書室へ移動してから、マックスは真っ直ぐに僕の目を見て、無慈悲な一言を告げた。


「アリスと両想いになった」


両想い?
なにソレ。つい最近友達になったばかりのクセに、両想い??

やっぱり、あの時の僕の勘は当たっていたんだ。一番の危険人物。
マックスは易々と、僕からアリスを奪ってしまう相手。


「……それで?」

「前に、好きにならないでと言っていただろう?分かったと答えたのに、好きにならないでいる事が出来なかった。だから」

「だから、報告?」

「ああ。謝る気はない」


……最初から気付いていたんでしょ?
もしかしたら、アリスを好きになるかもしれないって。だから、『分かった』とだけ答えたんだ。
マックスは一度も、『約束する』とは言わなかった。ただ、『分かった』とだけ。

アリスが自分から好きになった場合の事も訊いてきてたしね。
本当に君は…………


「ズルいよ、マックス」

「…………アル」


マックスの瞳が、大きく見開かれた。ボルドー色の瞳が、窓から差し込む夕焼け色に染まってキラキラして見える。


「ずっとずっと欲しかったのに。子供の頃からずっと。それがまさか、こんなぽっと出の奴なんかに、あっさり持っていかれるなんて」

「……………」

「あの時、アリスを一人にさせなければ良かった。そうすれば、マックスと出会う事も、友達になる事もなかったのに」

「……アリスは友達が欲しかったみたいだが……」

「知ってるよ。……でもね、この学園には碌な奴がいないから」

「それでずっと牽制していたのか?」

「……男だけね。でも、ただでさえ女の子達は、アリスの存在を疎ましく思ってる。そんな中、アリスが男の友人ばかり増やしていったらどうなると思う?」

「それは……」


アリスが誰かに傷つけられるのは嫌だ。
僕はどう思われてもいい。
でも、アリスだけは。


「僕が近付いてくる女の子達を無下にしなかったのは、アリスへ敵意を向けさせない為だ。アリスは何も気付いてないと思うけど、たまに嫌がらせもあった。フィリップ殿下も気付いていたと思う。だから忙しい中、わざわざ休み時間に様子を見に来ていたんだろうけど……」

「……それは逆効果だった訳だな」

「そう。根はいい人なんだけど、やっぱり馬鹿なんだよね。殿下って」

「不敬だぞ」

「今いないから平気でしょ」


そう。皆、子供の頃からアリスが好きだった。一人よく分からない大人も混じってるけど。


「……前に噂で聞いたのだが、レジーもアリスが好きなのか?」

「さぁ?子供の頃はアリスに興味を持っていたと思うけど、今は分からない。まず会う事がないし」

「そうなのか……」


今は全く会っていないのに、そんな噂がたつのも、女の子達の仕業だろう。もしくはマリアーノ様かな。

ずっとずっと守ってきた。
これからも、僕が守っていこうと思ってた。

アリス。僕だけのお姫様。


「アリスと付き合うなら、普段から色々気をつけてね」

「……いいのか?」

「いいわけないよ。だけど、忠告はする。アリスを放り出すつもりはないからね。それに……」

「それに?」

「まだ僕は諦めたくない。……マックスが、アリスと両想いになったからって浮かれて油断してたら、すぐに攫っていくから」

「……それは油断出来ないな」


マックスが、ほんの少し笑った。
僕も笑って返す。
本当は今すぐ泣きたいけど、君の前で泣いたら、負けを認めたみたいで悔しいから。


「マックス」

「なんだ?」

「アリスを……泣かさないでよね」

「……善処する」


ちょっと待って。
そこは素直に頷くところだろ。
善処するってどういう意味?

まさかこいつ……


僕がジトッとした目で見つめると、マックスは視線を泳がせながら地雷を踏んだ。


「ちょっと、その……アリスが可愛くてつい……」


?!!


「な、な、なにやっ……」

「いや!まだ何もしていない!!その、決定的な事は何も!!ただその、キスは…………」


き、き、キス?!!


「き、君がそんなに手の早い男だとは思ってもみなかった!!一発殴らせろ!!!」

「待て、アル!!落ち着け!!」

「浮かれまくりじゃないか!!普通そんな事、報告する?!君なら任せられるかもなんて、一瞬でも思った僕が馬鹿だった!!僕、絶対引かないからな!!!」

「す、すまない!!悪かった!!だから、アル、落ちつ……」

「歯ァ食い縛れえええええ!!!」



バコォォォォンン!!!



……くっそ!!
結果的に、殴ったのは僕だけだったのに、僕の拳もかなり負傷した。
硬すぎてやってられないよ!!

君は保健室で保険医から手当てを受ければいい!僕はアリスに手当てしてもらうから!!


「やっぱりアリスは任せられないっ!!」

「すまない、アル。お前の拳……」

「あーもー煩い!!この脳筋!!謝らないでよ、腹立つから!!さっさと保健室に行きなよ!!」

「……いや、これくらいなら冷やすだけで……」

「ホント腹立つ!!!」


絶対認めないから!!
というか、婚約もしてない内に手を出すのは絶対に許さないからっ!!!


教室に行ったら、待っていたアリスに驚かれたが、男同士の話をしていたと言ったら納得してくれた。

勿論、マックスには僕のハンカチを投げ付けてやった。冷やすなら僕のハンカチで十分でしょ。
いちいちアリスを煩わせないでよね!


「ハンカチ貸してくれるなんて、アルは優しいな」


ホント腹立つっ!!!!!



* * *

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