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8 シャロンの本性
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力を解放した後、息を荒くしながらもシャロンのお兄様の様子を伺う。
幸いにも、瞑っていた目が開いたのだ。
「兄上!!」
「……ここは……、シャロン……? 俺は一体」
「兄上は半年間も眠り続けていたのです! ですが、ここにいるエルシラの不思議な力で救ってくれたのじゃ」
「そうか……エルシラと言ったか、ひとまず礼を言う」
「いえ、お目覚めになられてよかったです」
重くのしかかっていた肩の荷が降りてホッとしている。
どうして昏睡状態になったかはわからないが、最高クラスの力で放てばなんとか治せることがわかった。
これは私にとっても大きな経験でもある。
何より、シャロンが泣きながら喜んでいる姿を見れて嬉しかった。
「エルシラよ、妾だけでなく兄上までも救ってくれて感謝してもしきれぬ! 今日は是非王宮でゆっくりしていただきたいのじゃ。そうだ、母上にも紹介せねば!」
「女王陛下に!?」
「もちろんじゃ! 母上もきっと御喜びになられるであろう」
願ってもない申し出だ。
これで私の目的が達成できるかもしれない。
そういえば、シャロンも旅に行くとか言っていたような気がしたが……。
「シャロンの旅はもういいの?」
「何をいうか。旅に出ようとした目的は兄上を治すため。もう達成してしまったのじゃ」
言っている意味が、この時の私にはよくわからなかった。
「エルシラと言ったな。俺は生き返ったような気分だ……。もう歩いても平気なのか?」
「私の力は完全回復ですから。病気になられる前の状態になっているはずなので、通常通りに生活できますよ。ただ、これほど長い間動かなかったのですから筋力と体力の回復はされた方がいいかと思います」
「そうか、承知した」
筋肉までは増幅したりはできない。
こればっかりはシャロンのお兄様の努力とリハビリで回復してもらうしかないのだ。
「申し遅れてすまない。俺はクラルド=プランタン。名目上は王子となるが、そんなふうには見えないだろう?」
「そんな滅相もございません!」
まぁぶっちゃけ、口調が俺っていうのも気にはなっているが、たまにそういう王子がいたりする国もあったからな。
口調がどんなんであっても王子に変わりはない。
「俺がこんなんだから、妹のシャロンが無理して王様のような口調をするようになってしまってな。もう少し年齢相応の可愛らしい口調でもいいと思うんだが」
「兄上、妾は真剣なのです。王族として──」
「シャロン、冷蔵庫にプリンがあるぞ」
「え!? どこどこー!? ……あ!」
コントかよ。
でも、クラルド殿下が言っているように、シャロンは素になったときの仕草や口調や表情がとても可愛いとは私も思う。
ところでプリンはわかるけど、レイゾウコってなんだ?
「妾をからかいおって……」
シャロンが剥れているが、これも彼女の素なのだろう。
うん、可愛い!
シャロンばかりを見ている理由は、クラルド殿下が微笑んでいる姿が尊すぎて見ることすらできないのだ。
おそらく、この国で女性から絶大な人気を誇っているに違いないだろう……。
顔を膨らませながらご立腹のシャロンと、なぜか後ろからついてくるクラルド殿下と共に、私は女王陛下と対談するための応接室へ向かった。
早くも本来の目的であった手紙の内容を直接聞くことができるかもしれない。
幸いにも、瞑っていた目が開いたのだ。
「兄上!!」
「……ここは……、シャロン……? 俺は一体」
「兄上は半年間も眠り続けていたのです! ですが、ここにいるエルシラの不思議な力で救ってくれたのじゃ」
「そうか……エルシラと言ったか、ひとまず礼を言う」
「いえ、お目覚めになられてよかったです」
重くのしかかっていた肩の荷が降りてホッとしている。
どうして昏睡状態になったかはわからないが、最高クラスの力で放てばなんとか治せることがわかった。
これは私にとっても大きな経験でもある。
何より、シャロンが泣きながら喜んでいる姿を見れて嬉しかった。
「エルシラよ、妾だけでなく兄上までも救ってくれて感謝してもしきれぬ! 今日は是非王宮でゆっくりしていただきたいのじゃ。そうだ、母上にも紹介せねば!」
「女王陛下に!?」
「もちろんじゃ! 母上もきっと御喜びになられるであろう」
願ってもない申し出だ。
これで私の目的が達成できるかもしれない。
そういえば、シャロンも旅に行くとか言っていたような気がしたが……。
「シャロンの旅はもういいの?」
「何をいうか。旅に出ようとした目的は兄上を治すため。もう達成してしまったのじゃ」
言っている意味が、この時の私にはよくわからなかった。
「エルシラと言ったな。俺は生き返ったような気分だ……。もう歩いても平気なのか?」
「私の力は完全回復ですから。病気になられる前の状態になっているはずなので、通常通りに生活できますよ。ただ、これほど長い間動かなかったのですから筋力と体力の回復はされた方がいいかと思います」
「そうか、承知した」
筋肉までは増幅したりはできない。
こればっかりはシャロンのお兄様の努力とリハビリで回復してもらうしかないのだ。
「申し遅れてすまない。俺はクラルド=プランタン。名目上は王子となるが、そんなふうには見えないだろう?」
「そんな滅相もございません!」
まぁぶっちゃけ、口調が俺っていうのも気にはなっているが、たまにそういう王子がいたりする国もあったからな。
口調がどんなんであっても王子に変わりはない。
「俺がこんなんだから、妹のシャロンが無理して王様のような口調をするようになってしまってな。もう少し年齢相応の可愛らしい口調でもいいと思うんだが」
「兄上、妾は真剣なのです。王族として──」
「シャロン、冷蔵庫にプリンがあるぞ」
「え!? どこどこー!? ……あ!」
コントかよ。
でも、クラルド殿下が言っているように、シャロンは素になったときの仕草や口調や表情がとても可愛いとは私も思う。
ところでプリンはわかるけど、レイゾウコってなんだ?
「妾をからかいおって……」
シャロンが剥れているが、これも彼女の素なのだろう。
うん、可愛い!
シャロンばかりを見ている理由は、クラルド殿下が微笑んでいる姿が尊すぎて見ることすらできないのだ。
おそらく、この国で女性から絶大な人気を誇っているに違いないだろう……。
顔を膨らませながらご立腹のシャロンと、なぜか後ろからついてくるクラルド殿下と共に、私は女王陛下と対談するための応接室へ向かった。
早くも本来の目的であった手紙の内容を直接聞くことができるかもしれない。
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