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「ぎゅーーーー!!」
「え? 乗れって言ってるの?」

「ぎゅーーーー!」

 私たちはルビーの背に乗り、今まで通ってきたルートを逆走して飛んでいく。
 急斜面を登って戻るのが困難だと思っていた通路だが、あっという間に洞窟の出入り口まで来れた。
 出入り口は岩に閉ざされたままだったのだが……。

「ぎゅーーーー!!」

 ──ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 ルビーの咆哮で岩が再び開いたのだ。
 洞窟を難なく脱出して、そのまま空を飛んでいた。
 かなりの速度なのに風の抵抗が全くないのは、ルビーの力で障壁を発動しているからなのだろう。

「おぉ!! まさか空から国を一望できるとは!!」

 カルム様たちは興奮しながら空からの景色を堪能している。

「……凄い。今までに見たことのない眺め」
「ルビー、助かったわ。私たちじゃ洞窟からこんなに早く出られなかったもの……」

 背中を撫でて褒めてあげると、『ぎゅーーーー!』と喜んで更に空高く上り、そのまま王都へ向かって高速飛行を始めた。


「ルビー、ちょっと寄り道してくれる?」
「ぎゅーーー!」

 私たちの帰りを待ってくれている御者の元へ先に向かった。
 このまま王都へ帰ってしまって、いつまでも待たせてしまうわけにはいかない。

 あっという間に御者の元へ到着した。
 彼はルビーを見て慌てて逃げ出そうとしていたが、私たちがいることに気がついたようで落ち着きを取り戻したようだった。

 カルム様がルビーのことを説明してくれ、御者も理解してくれたようだ。

「では、我々は馬車で戻ります。聖女様と聖獣様のお力をすぐにでも発揮して王都を救ってください」
 御者には申し訳なかったが、いくら大型化したルビーでも、馬車を背負って飛ぶことはできない。

「申し訳ございません。せめてこれをどうぞ」
 私は何個か持っていた水筒を御者に渡した。

「水ですか!? しかも重い。満タンじゃないですか!」
「私たちは大丈夫です。先ほど浴びるほど水を飲むことができましたし、これは御者さんのために汲んでおいた水です」
「ありがとうございます!」

 早速ゴクゴクと、美味しそうに飲んでいた。
 馬にはイデアが再び具現化魔法で水を用意して飲んでもらう。
 流石に馬が満足して飲み干せるほどの水は汲めなかったのだ。

「水がこれほど美味しいものだとは……。生き返った気分です!」

 御者に深くお辞儀をして、再びルビーに乗って王都へ向かった。

 ♢

「殿下! もう王都が見えてきましたよ!」
 ルビーの活躍であっという間に帰還した。

 そして……。

「ぎゅーーーー!!」
 長年水とは無縁だった大地が……王都が……。


 ようやく……ようやく恵の雨がパラパラと降り始めるのだった。
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