女装男子だけどね?

ここクマ

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第4章 女装男子とラブラブに

24 僕をもう…呼ばないで…side絽衣

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 カランカラン

音を立てて、扉が開く。

「…冬也君…?」

いつも居るはずの、君の姿はそこには居なかった。

「…居ねぇ、な…。一応、closeにはなってたけど…こっちの鍵が開いてるってことは…上か?」
「…そう、かもね…。」

後から入ってきた影坂がそう言って、カウンターの奥にある階段へ向かう。


…嫌な予感がした。

行ってはいけないと、そう思った。

「……いかねぇの?」

「…行く、けど…」

「……。先いけ。俺は、下で待ってる。」

「ぇ?」

「…俺は、ここに居る。」

影坂は、そう言ってカウンター席に座った。僕に「行け」と目で訴えながら。

僕は、それに弱々しく頷いて、カウンターの奥へ行き階段に足をかけた。

ザーッと雨の音がして、そう言えば外は雨が降って居たなと思い出す。

(…嫌な、感じ…。)

二階へ上がって、冬也君の部屋へ真っ直ぐ行こうと思った。でも、いつも閉まっているはずの弟君の部屋が少し開いていて…。

(…冬也君、いるのかな…)

本当は、ノックをした方がいいと思うけど…弟君だったら気不味いし…チラッと見ていたらノックしよう、と思ってそっと、中を覗いた。

「…これで、いいんだよね…」
「…?…冬也さん?」

(…なん、で…?)

そこには、ベットの上で体育座りしてる男の人を抱きしめる冬也君がいた。

(あの人は、弟?でも、だとしたら、なんで…抱き締めて?)

「…真琴は、俺の恋人になるの?」

(え…)

冬也君が、腕の中に話しかける。
その声が、あまりにも優しくて、でも、少し震えていて…本気なんだって、思った。

そこから、息が苦しくなった。

ギシッ

少し立ちくらみがして、床が鳴った。その瞬間、冬也君と目があった。

「、っ、…は、…ろ、ぃ、くん?」

冬也君は、目を大きく開けてから泣きそうな顔になった。それから、震える声を詰まらせながら僕を呼んだ。

「ごめん」

僕は、冬也君にそう言った。そう言ってから、自分が涙を流していることに気がついた。

「っ、絽衣君!待って!」

僕は、自分の涙を乱暴に拭ってその場から逃げた。冬也君の声が後からかけられる。

「絽衣?!」

下に行くと待っていた影坂が僕を驚いたようにみた。

「ごめん、帰る!」

「は?おい、待てって!」

「絽衣君!待って!」

 影坂と同じようなタイミングで冬也君が僕を呼んだ。
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