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「王よ。何にそこまで心を乱されているのです。聖女としての能力を一つ見せれば良いこと。その娘は確かにずっと立っているだけではないですか。もとより、聖女の力を見せながらのパレードではなかったのですか。話が違うのは王の方ですぞ」

本来は聖女見せびらかしパレードだもんね。
まさか本当に姿を見せるだけで、聖女の力は見せないつもりだったのだろうか。

真美ちゃんが今、操られている状態なのは確かだけど、もしかしてその状態だと聖女の力はやはり使えないのだろうか。
……ってか、本当に私達は聖女なのかな。
無理やりこの世界に連れてこられて、今日まで経つけど、私には正直、自分が聖女であるという自信も確証もなかった。
魔物を倒し、瘴気を払うってたって、どうやるの?っていうのが正直なところだ。
もしかしたら、真美ちゃんも教えてもらっていなかったら、いくら命令しても聖女としての力を見せるなんて出来ないのではないだろうか。
だって、教えてもらってないんだもん。
出来ないものは出来ない。
いくら、命令されようと、それは変わらないのではないか。

だから、王様は聖女の力のお披露目の場だいうのに、していないのか。
だとしたら、相当のバカだ。
そもそも、私をその辺に売ろうとしたのも浅はかだ。
もし、真美ちゃんが聖女としての力を持っていなかった場合を全然考えていなかったということだ。

……この国。本当の意味で大丈夫なんだろうか。さすがにそこまでの考えなしだとは思いたいんだけど、……この王様の様子からして、私の考えはビンゴなんじゃないんだろうか。

「そんなに言うなら、仕方ない。聖女や。こいつらに力を見せてやれ。本来は神聖な術。頭が高い。何をしている。頭を垂れよ!跪け!」


バッと王様は両手を広げた。
まるで自分が術を使うみたいな大袈裟な仕草に呆れる。
騎士も含め、その場にいる全員が跪いた。
まるでなにかの儀式のようで、側から見たら滑稽あるいは異様に見えるだろう。

「えっらそうに……」
「お前わりと言うな」

ボソッと行ったのに、その言葉をわざわざ拾ってくるエド。

「お前。王様によくあんなこと言えたな」
「でも、それを言うためのパレードなんじゃないの」
「そうだけど。普通は言えねぇよ」
「こう言う機会じゃなきゃ王様に会えないんだから仕方ないでしょ」
「そりゃそうだが……で?俺たちはいつまでこうしてりゃいいんだ?そろそろ聖女様の術とやらは発動したのか」
「……王?」

跪かせて、少し経つ。
何も変わった様子はない。
私達が疑念を持って王様を見ると、もう汗ダラダラで、さっきの激昂はどこいっちゃったの?ってくらいに動揺してる。

「今日は聖女も疲れている。力を披露するのはまた今度だ。もう帰る」

その言葉に驚いたのは私達だけではなかった。

「今日のパレードで結界を披露されるご予定では?」
「聖女は疲れている!今日のパレードは中止だ!」
「そんなわがままが通じると本気で思っていらっしゃるのか」
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