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第二部 第一章 囚われのヴィヴィアン
6 接触 リーヴァイSide
しおりを挟む――――ヴィー⁉
何がどうしたと言うのだ!!
ただこの何とも言い様のないねっとりとまた禍々しい靄の様な澱がほんの一瞬、そう今は全く感じてはいない。
だがその刹那、そして確実にヴィーへ何かの異変を感じ取ってしまった!!
まさかこれより……。
いやまだ恐らく始まりもしてはいない……筈。
だが俺がこうして……と言う事は――――。
「如何なさいました旦那様」
「あ、いや……何かがヴィーに……」
無表情と言うか能面が通常使用とばかりの一片の感情すら感じさせない態度とその物言い。
こいつは俺の幼馴染であり優秀な執事兼秘書官そして――――俺の最も信頼する片腕のバード。
「何か引っ掛かりましたか?」
「いや何も……だが……」
「ならば大事ないのではないのでしょうか。抑々当公爵邸と申しますか奥方様におかれましては貴方の少々重過ぎる……いえ厳重な重防御結界がこれでもかとご本人の承諾なしに、それこそ蟻の入り込む隙間さえ与えない程の厳重且つ最高難度の結界を施されておいでなのでしょう。重苦しい貴方の愛情だけでなく今となってはその張り巡らされた結界の解除法さえ既に解らない程のモノを貴方はしれっと涼しい顔で、いいえそれだけではありませんよね。まあ国家と大公家のこれからの繁栄の為に仲良く房事を勤しまれるのはまことに結構。ですがその際に奥方様の胎内へも浮気防止の魔法陣を毎度仕掛けておいでなのは些かやり過ぎかと思いますよ」
同性と致しましては……とバードは清々しい面持ちでしれっと何気に不愉快な発言を堂々と述べる。
おまけによく手入れのなされているだろうモノクルは、こう言うシチュエーションに限って厭味がましくもきらりと光るのだがしかし問題はそこではない。
「お、おい、屋敷とヴィーの結界云々はこの際どうでもいいが何故男であるお前がヴィーのっ、そのヴィーの……」
「奥方様へ施された浮気防止の魔法陣ですか?」
「ああ……」
興奮する俺と対照的に何処までも冷静に応えるのはバード。
長年の、長過ぎる付き合いとは申せヴィーの子宮内部へ施した魔法陣までも確認出来るのは術を発動した夫である俺自身。
そしてもう一つは決して認めたくはないがヴィーのあの愛らしくも温かくまた柔らかい、一度入れば絶対に放さないとばかりにぎゅうぎゅうと実に心地良く締め付けてくるだろう彼女の甘く芳しい花弁の中へ侵入した者だけだ!!
まあそれに関して余り大きな声では言えないが実際俺以上の力を有する者だな。
俺の魔力を完全に打ち消さない限りは彼女の花弁へ触れた瞬間侵入しようとした者のモノは本体より無様にもちょん切れるのだからな。
目の前のバードはまさかと思うがそこまでの愚行を働く奴ではないし、第一見た感じでは身体の異変は何も感じられない。
「……ったく当たり前ですよ。己の何がちょん切れた時点で貴方の前には絶対に現れませんと申しますか、天と地がひっくり返ろうとも私は奥方様へ不埒な行動もまた想いすら持ち合わせてはおりません」
流石に冷静沈着なバードでさえもほんの一瞬だが自身の股間をさっと抑えているのを見る事が出来て俺は実に愉快な気持ちとなる。
こいつでも何がちょん切れるのはやはり耐えられないのだと――――だが!!
「おいその物言いでは俺の愛しいヴィーに魅力がないとでも言うのか!!」
何時何処ででも美味しくついつい食べてしまいたくなる程にこの狂おしい劣情は生涯収まらない自信だけはしっかりとある。
それ程までに俺のヴィーは幾つになろうと愛らしくもまた可愛い。
惜しむらくはヴィーの18歳より以前の姿を……まあ前世では生まれた瞬間から、いやしかしあれは純粋に彼女の父親として愛し子を見守ってきたものであり父子の情と夫婦の愛情とはまた違う。
「何を下らない事を……あの御方があの御方であられる限り私は男女の情と言うよりもです。忠実なる僕として恐れ多くも敬愛しているのですよ。色々なモノに塗れていらっしゃる貴方と違ってあの御方は如何なる事があろうともその御心は一切穢れる事のない無垢そのものなのです。今はそれよりも現在私の悩みは貴方の穢れがあの御方の心を侵食仕舞い兼ねないかと毎日が冷や冷やものですよ」
本当に心底辟易とした口調で言うのをやめてくれバード。
それでなくとも最近シンディーとお前は何かと似てきているのだからな。
とは言え――――だ。
ほんの一瞬とは言え何者かがヴィーへ接触を試みた可能性を否定出来ない。
愛するヴィーの周囲に張り巡らされた結界に恐れをなし諦めてくれたのならばそれでいいのだが万が一、もし奴が力を取り戻しているのであればきっとこれだけでは済まないだろう。
取り敢えず視察を直ぐに済ませると共に一刻も早くヴィーの元へ戻らねば……。
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