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2 美月さんの家庭
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2 美月さんの家庭
「お母さん,はい,お薬だよ,置くね」
「ありがとう,今日,学校は行ったのよね」
「大丈夫,心配しないで,ちゃんと,行ってるから」
美月は母子家庭で,さらにお母さんはうつ病になってしまっていた。
お母さんは,美月の父親が亡くなって再婚をした。そして,二人目の結婚相手との間に,5歳の「太陽」と,3歳の「星奈」がいる。しかし,先月,血の繋がっていなかった父は,他に好きな女の人が出来て,家を出ていってしまったのだ。
戸籍や近所からの見た目は両親がいることになっている。だから,母子手当が受け取れず,家計が苦しい。お母さんは,仕事疲れとショックで寝こみ,働いていた会社も辞めざるをえなかった。
社会は,こんな困った家庭に手を差し伸べてはくれない。お母さんは,そのままうつ病となり,薬を飲んで療養している。そのため,弟と妹の世話も含め,家事全般を高校3年生の美月がしなければいけない状況が突然やってきたのだ。
美月は、人ごとのように思っていた、タングケアラーになった。
令和2年度のヤングケアラーの実態に関する調査研究では、子ども本人(中学生・高校生)を対象としたヤングケアラーの全国調査で、世話をしている家族が「いる」と回答したのは、中学2年生5.7%、全日制高校2年生4.1%であるなどの実態がある。
美月は、学校だけでなく、社会的な孤立の問題もあり、ヤングケアラーとして重い責任や負担が伴い、本人の方向性に影響が出るのが心配だ。
美月は、ある日を起点として家庭全般のことを日常的に行っていて苦痛に感じている。しかし、家庭内のプライベートな問題であることから支援が必要であったとしてもわからないのだ。
家族は絶対に私が守る! だって,私しかいないんだ。美月は優しく頑張り屋だった。だから,体操部では将来を期待されている存在で体育大学へ進学し,体操を続け,オリンピックに出たい夢を持っている。つい先日までの,美月の夢だ。
「太陽と星奈,保育園の連絡帳を見せて・・・・・・・・・・」
「お姉ちゃん,今,ゲームしてるから後にして,それより,夕食は,お腹すいた・・」
「わかったから,連絡帳出して,お姉ちゃんの言うこと,聞いて!」
二人の返事はなかった。そこで,次だ,夕食の準備をする。
ビニール手袋をして,大根を切る。
トントントントン~~~~~~~~~~~~
「痛い!」
ビニール手袋の指の先が伸びていて,自分の手を切ってしまったのだ。血が出たので手袋をとって消毒,また,すぐ食事の仕度だ。美月は,自分が情けなくなってしまう。体操をやらせてもらっていて,私は,こんなこともできないんだ・・・。
「お姉ちゃん,腹,減ったよ~~~~~~」
寝ていたお母さんが,
「太陽,美月は魔法使いじゃないから,すぐにはできないよ,待っててね」
太陽と星奈は,ゲームをしたり,テレビを見ている。
美月は,気を取り直して,料理を慎重に作り始めた。
「お姉ちゃん,まだ,もう・・」
「ねえ,太陽,星奈,お願い連絡帳を見せて」
美月は,料理を作りながら,その合間に連絡帳を見る気なのだ。
保育園での造形活動は家庭から持っていくことが多い,また,集金もあるのだ。保育園で必要なものはすべて美月が用意して持たせる。お金は美月が直接,園に持って行き,お母さんのことを聞かれても本当のことは話せず,言葉をにごしている。貯金をくずし,児童手当を計算しても,お金が足りない。そこで,今日,美月は学校を休み保育園に持っていくお金を日払いでもらえる仕事場で働いて支払ったのだ。働いて,その日にお金をもらえる仕事を選んだのだ。やはり,明日も,学校を休んで働かなければ・・。
お母さんは,体が重く,動くと頭痛がする。それでも子ども達のことを心配するので,美月は,お母さんには学校を休んで働いたことは言わず,安心させている。
翔の持ってきてくれたプリントは,洗濯も含め,家事すべてが終わった真夜中過ぎに見て,課題はやった。でも,プリントを学校に持っていけず,明日もお母さんに秘密で働くのだ。
自分の夢,学校,その前に,現実がある。私が家庭のことをやらなければいけない! 長女の私が家族の面倒を見なければ・・,美月はだれにも相談せず,深く思い詰めていた。
メールの着信音が鳴った。今日、プリントを持って来てくれた翔だった。
(今日は突然、ごめん。明日は学校で会えるよね、おやすみ)
翔と話したのは初めてだったから、こうしてメールをくれたのは不思議だけどうれしかった。孤独の扉が少し開いた気持ちだ。
「お母さん,はい,お薬だよ,置くね」
「ありがとう,今日,学校は行ったのよね」
「大丈夫,心配しないで,ちゃんと,行ってるから」
美月は母子家庭で,さらにお母さんはうつ病になってしまっていた。
お母さんは,美月の父親が亡くなって再婚をした。そして,二人目の結婚相手との間に,5歳の「太陽」と,3歳の「星奈」がいる。しかし,先月,血の繋がっていなかった父は,他に好きな女の人が出来て,家を出ていってしまったのだ。
戸籍や近所からの見た目は両親がいることになっている。だから,母子手当が受け取れず,家計が苦しい。お母さんは,仕事疲れとショックで寝こみ,働いていた会社も辞めざるをえなかった。
社会は,こんな困った家庭に手を差し伸べてはくれない。お母さんは,そのままうつ病となり,薬を飲んで療養している。そのため,弟と妹の世話も含め,家事全般を高校3年生の美月がしなければいけない状況が突然やってきたのだ。
美月は、人ごとのように思っていた、タングケアラーになった。
令和2年度のヤングケアラーの実態に関する調査研究では、子ども本人(中学生・高校生)を対象としたヤングケアラーの全国調査で、世話をしている家族が「いる」と回答したのは、中学2年生5.7%、全日制高校2年生4.1%であるなどの実態がある。
美月は、学校だけでなく、社会的な孤立の問題もあり、ヤングケアラーとして重い責任や負担が伴い、本人の方向性に影響が出るのが心配だ。
美月は、ある日を起点として家庭全般のことを日常的に行っていて苦痛に感じている。しかし、家庭内のプライベートな問題であることから支援が必要であったとしてもわからないのだ。
家族は絶対に私が守る! だって,私しかいないんだ。美月は優しく頑張り屋だった。だから,体操部では将来を期待されている存在で体育大学へ進学し,体操を続け,オリンピックに出たい夢を持っている。つい先日までの,美月の夢だ。
「太陽と星奈,保育園の連絡帳を見せて・・・・・・・・・・」
「お姉ちゃん,今,ゲームしてるから後にして,それより,夕食は,お腹すいた・・」
「わかったから,連絡帳出して,お姉ちゃんの言うこと,聞いて!」
二人の返事はなかった。そこで,次だ,夕食の準備をする。
ビニール手袋をして,大根を切る。
トントントントン~~~~~~~~~~~~
「痛い!」
ビニール手袋の指の先が伸びていて,自分の手を切ってしまったのだ。血が出たので手袋をとって消毒,また,すぐ食事の仕度だ。美月は,自分が情けなくなってしまう。体操をやらせてもらっていて,私は,こんなこともできないんだ・・・。
「お姉ちゃん,腹,減ったよ~~~~~~」
寝ていたお母さんが,
「太陽,美月は魔法使いじゃないから,すぐにはできないよ,待っててね」
太陽と星奈は,ゲームをしたり,テレビを見ている。
美月は,気を取り直して,料理を慎重に作り始めた。
「お姉ちゃん,まだ,もう・・」
「ねえ,太陽,星奈,お願い連絡帳を見せて」
美月は,料理を作りながら,その合間に連絡帳を見る気なのだ。
保育園での造形活動は家庭から持っていくことが多い,また,集金もあるのだ。保育園で必要なものはすべて美月が用意して持たせる。お金は美月が直接,園に持って行き,お母さんのことを聞かれても本当のことは話せず,言葉をにごしている。貯金をくずし,児童手当を計算しても,お金が足りない。そこで,今日,美月は学校を休み保育園に持っていくお金を日払いでもらえる仕事場で働いて支払ったのだ。働いて,その日にお金をもらえる仕事を選んだのだ。やはり,明日も,学校を休んで働かなければ・・。
お母さんは,体が重く,動くと頭痛がする。それでも子ども達のことを心配するので,美月は,お母さんには学校を休んで働いたことは言わず,安心させている。
翔の持ってきてくれたプリントは,洗濯も含め,家事すべてが終わった真夜中過ぎに見て,課題はやった。でも,プリントを学校に持っていけず,明日もお母さんに秘密で働くのだ。
自分の夢,学校,その前に,現実がある。私が家庭のことをやらなければいけない! 長女の私が家族の面倒を見なければ・・,美月はだれにも相談せず,深く思い詰めていた。
メールの着信音が鳴った。今日、プリントを持って来てくれた翔だった。
(今日は突然、ごめん。明日は学校で会えるよね、おやすみ)
翔と話したのは初めてだったから、こうしてメールをくれたのは不思議だけどうれしかった。孤独の扉が少し開いた気持ちだ。
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