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しおりを挟む「……エレンお前……姫に一体何をしている……!!」
フィランの後ろには折り重なる団員達の屍。
エレンは握っていたエリーシャの手を放しフィランに向き合った。
「いくら団長と言えど姫様を傷付ける事は許しません!」
「私は姫を傷付けたりなどしない!」
「いいえ!今の団長に冷静に話が出来るとはとても思えません。」
エリーシャをその背に隠すようにしてエレンはフィランの前に立ちはだかった。
「なら力づくで通る。」
フィランの目が据わったその時だった。
「もう止めて……止めて下さいフィラン様!」
名を呼ばれフィランはハッとしたようにエリーシャを見る。
「姫……」
「皆さんフィラン様を想って……助けて下さったんでしょう?私ならもう逃げません。逃げないから……!」
フィランはしばらくエリーシャを見つめた後、一歩ずつ近付いて行った。
「エレンさん……ありがとうございます。私行きます。」
「姫様……」
「大丈夫。ちゃんと話し合ってきますから…」
そしてエリーシャはエレンに微笑みかけたのだがその瞬間だった。
「あれっ?エレン様!?」
エリーシャの視界から突如エレンが消えた。
「え?えっ!?」
そして今さっきまでエレンのいた場所にはいつの間にかフィランが立っていた。
「きゃあっ!!」
フィランはエリーシャを担ぎ上げ部屋の外へと向かって歩き出す。
「待ってフィラン様!ちゃんと話を……!!」
その瞬間、エリーシャの目に飛び込んできたのは壁にめり込むようにして倒れるエレンだった。団員達は床に横たわりながら連れ去られようとしているエリーシャに手を伸ばす。もう皆半泣きだ。
あまりの事に何も言えなくなってしまったエリーシャは、抵抗するのを止め大人しく担がれたのだった。
*
フィランはエリーシャを連れて外に出ると、指笛を吹いた。
すると辺り一面に風が巻き起こる。
「……ノエル……!」
ゆっくりと降りてきたノエルは翼をたたんだあと、エリーシャを見て目を細めた。
そしてまるで“放してあげろよ”と抗議するように鼻先でフィランをつつく。
するとフィランは意外にもあっさりとエリーシャを地面に下ろした。
自由になったエリーシャはノエルに駆け寄り抱きついた。
「ノエル……ごめんね。私あの日、あなたにとても嫌な役割をさせてしまったわ……。」
「キュウ……」
ノエルは“気にするな”とでも言うように優しく頬を擦り寄せる。
(……ノエルは優しいわ……御主人様はこんななのに……)
エリーシャの脳裏に屍と化した団員達が甦る。
「ノエル」
感動の再会に浸らせるつもりもないのかフィランはノエルに飛ぶ準備を促した。
ノエルは渋々といった感じで翼を広げる。
「きゃっ……」
フィランは何も言わずエリーシャを横抱きにし、ノエルの背に乗った。
そして二人を乗せてノエルは飛び立つ。
「どこへ行くのですか……?」
しかしフィランは答えなかった。
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