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十五話 「アクシデント」
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魔物の数が少ない場所で肩慣らしを済ませた後、アッシュ達は自分達より魔物の数が多くいる場所を選んで順調なペースで魔石を集めていった
『やっぱり魔導士が一人加わるだけで効率が全然違いますね』
『いえ、アッシュさん達が上手く魔物を引きつけてくれているからです。私よりもクウちゃんの方が凄いですよ』
クウの能力の事を伝えていたが、実際目の当たりにするとやはり想像以上だったらしい
そしてアレッサのお陰で分かったことがある
クウの泥の噴射と棘の形をした岩を放つあの技、あれは初級土魔法の"マッドショット"と"ロックバレット"だということ
魔物には多かれ少なかれ魔力が宿っていて強力な魔物は魔法を使ってくるので不思議ではないが、スライムが使うところを見たのは初めてのことだという
吸収したことで魔法を覚えるなんて果たしてそんな事があるのだろうかとも思ったが、魔物の生態についてはまだまだ知らない事が多いので納得せざるを得なかった
『あっ、アッシュさん腕を怪我していますよ』
『え?あぁ、これ位ならかすり傷ですからポーションを使う必要はないですね』
『駄目ですよ。小さな傷でも治しておかないと後が大変なことになったりするんですから。確かポーションがここに・・・』
『いえそこまでしなくても・・・』
アレッサは今まで組んできた他の冒険者と違いよく自分の事を見てくれている
ダンジョンに潜っていれば傷を負うことなんてザラにあるが、自分の為に薬を使ってくれる者なんて思わず感極まってしまいそうになる
『ありました!待って下さい、今開けますから』
アレッサはポーションが入っている瓶を見つけ、栓を引き抜き傷の部分に振りかけようとした
だがそこで予想外の出来事が発生する
なんとクウがポーションを瓶ごと飲み込んでしまった
あまりに一瞬で状況が理解できず思わず固まってしまう二人
我に返ったアッシュが恐る恐るアレッサの方を見てみると、固まったまま目には涙が溜まっていた
『私の・・・最後のポーションが・・・』
『えっ最後!?す、すみません!こらクウ!それはアレッサさんのポーションだろ!吐き出せー!』
人の物に手を出すとは思わなかったので慌ててクウを持ち上げ必死に揺すり吐き出すよう言うが、結局ポーションは戻ってこなかった
クウにしっかりと言い聞かせ、アレッサにはひたすら謝り持っていた物と同じポーションを弁償した
一波乱あったもののその後もアッシュ達はダンジョンの探索を続行
アレッサの実力が想定していた以上だったので、予定していた一階層での戦闘は正直物足りなかった
アッシュ自身も普段から戦っている時お陰で確実にレベルアップしている
荷物持ちをしていた頃では味わえなかった感覚だ
そこでアッシュは予定を変更し、二階層に行くか提案を持ちかけることにした
『この道を真っすぐ進んでいけば二階層に行くことができるんですがどうします?今日は一階層までの予定でしたが・・・アレッサさん?大丈夫ですか?』
背後を振り返るとアレッサが少し苦しそうにしており息も荒くなっていた
思えば戦闘を終えると毎回この様な状態になっている気がする
『も、問題ないです。それよりせっかくここまで来たんですから二階層も見てみたいです』
『そうですか・・・?じゃあちょっとだけにしておきましょうか。無理はしないで下さいね』
気丈に振舞ってはいるがやはり少し辛そうに見える
アレッサの状態を考え二階層は少し覗くだけに留めることにした
二階層に入ったらまずは周囲を念入りに確認した
階段付近に魔物の気配はなし、それを確認したことでアッシュはホッとした
前回のミノタウロスの出現はイレギュラーな事態だったのでこの階層にいないのは当たり前なのだが、命の危機に晒された場所なので必要以上に警戒してしまう
『どうかしましたか?』
『あ、あぁすみません。行きましょうか』
この二階層は一階層と魔物の種類は大して変わらず、以前グレイがこの場で話したことがあるホブゴブリンが出現するようになる位だ
今回は奥までは進まず少し行ったところで折り返すことをアレッサに合図で送る
すると前方から行く手を阻む魔物が現れた
相手は前述話したホブゴブリン
ホブゴブリンはゴブリンと比べて全体的に能力値は高い
だが動きは鈍いので注意して躱せば脅威では無い
今までの様にアッシュが引きつけアレッサが仕留めるというやり方でもいいが、アレッサの状態を考えるとクウと連携して倒すべきか
『アッシュさん、私は大丈夫ですからこれまで通りでお願いします』
アッシュが迷っているのを察したのか、自分からいけると切り出してきた
あまり無理はさせたくなかったが本人がいけると言うのなら信じるしかない
アレッサの言葉に頷き先にアッシュがホブゴブリンに向かっていく
ホブはアッシュに気づき攻撃を繰り出してくるがやはり遅い
攻撃を躱しつつホブの脚を切りつけ更に動きを鈍らせていく
『準備出来ました!離れて下さい!』
合図がくるとアッシュはホブから距離を取る
アレッサの方を見てみると今まで撃っていたファイア・ボールとは異なる槍のような形状をした炎の魔法が完成していた
『ファイア・ランス!』
アレッサが杖を振り下ろすと炎の槍がホブ目掛けて飛矢のように放たれた
アッシュが事前に脚へダメージを与えていたのでホブは避けることができず、炎の槍に貫かれる
腹に風穴ができた状態で反撃が出来るはずもなくホブは力尽きていった
『凄いですねアレッサさん!今のは・・・』
これまで使っていたファイア・ボールよりも威力の高い魔法
見事な魔法に興奮しアレッサの方に向き直ると、そこにはうつ伏せで倒れているアレッサの姿があった
『アレッサさん!』
『やっぱり魔導士が一人加わるだけで効率が全然違いますね』
『いえ、アッシュさん達が上手く魔物を引きつけてくれているからです。私よりもクウちゃんの方が凄いですよ』
クウの能力の事を伝えていたが、実際目の当たりにするとやはり想像以上だったらしい
そしてアレッサのお陰で分かったことがある
クウの泥の噴射と棘の形をした岩を放つあの技、あれは初級土魔法の"マッドショット"と"ロックバレット"だということ
魔物には多かれ少なかれ魔力が宿っていて強力な魔物は魔法を使ってくるので不思議ではないが、スライムが使うところを見たのは初めてのことだという
吸収したことで魔法を覚えるなんて果たしてそんな事があるのだろうかとも思ったが、魔物の生態についてはまだまだ知らない事が多いので納得せざるを得なかった
『あっ、アッシュさん腕を怪我していますよ』
『え?あぁ、これ位ならかすり傷ですからポーションを使う必要はないですね』
『駄目ですよ。小さな傷でも治しておかないと後が大変なことになったりするんですから。確かポーションがここに・・・』
『いえそこまでしなくても・・・』
アレッサは今まで組んできた他の冒険者と違いよく自分の事を見てくれている
ダンジョンに潜っていれば傷を負うことなんてザラにあるが、自分の為に薬を使ってくれる者なんて思わず感極まってしまいそうになる
『ありました!待って下さい、今開けますから』
アレッサはポーションが入っている瓶を見つけ、栓を引き抜き傷の部分に振りかけようとした
だがそこで予想外の出来事が発生する
なんとクウがポーションを瓶ごと飲み込んでしまった
あまりに一瞬で状況が理解できず思わず固まってしまう二人
我に返ったアッシュが恐る恐るアレッサの方を見てみると、固まったまま目には涙が溜まっていた
『私の・・・最後のポーションが・・・』
『えっ最後!?す、すみません!こらクウ!それはアレッサさんのポーションだろ!吐き出せー!』
人の物に手を出すとは思わなかったので慌ててクウを持ち上げ必死に揺すり吐き出すよう言うが、結局ポーションは戻ってこなかった
クウにしっかりと言い聞かせ、アレッサにはひたすら謝り持っていた物と同じポーションを弁償した
一波乱あったもののその後もアッシュ達はダンジョンの探索を続行
アレッサの実力が想定していた以上だったので、予定していた一階層での戦闘は正直物足りなかった
アッシュ自身も普段から戦っている時お陰で確実にレベルアップしている
荷物持ちをしていた頃では味わえなかった感覚だ
そこでアッシュは予定を変更し、二階層に行くか提案を持ちかけることにした
『この道を真っすぐ進んでいけば二階層に行くことができるんですがどうします?今日は一階層までの予定でしたが・・・アレッサさん?大丈夫ですか?』
背後を振り返るとアレッサが少し苦しそうにしており息も荒くなっていた
思えば戦闘を終えると毎回この様な状態になっている気がする
『も、問題ないです。それよりせっかくここまで来たんですから二階層も見てみたいです』
『そうですか・・・?じゃあちょっとだけにしておきましょうか。無理はしないで下さいね』
気丈に振舞ってはいるがやはり少し辛そうに見える
アレッサの状態を考え二階層は少し覗くだけに留めることにした
二階層に入ったらまずは周囲を念入りに確認した
階段付近に魔物の気配はなし、それを確認したことでアッシュはホッとした
前回のミノタウロスの出現はイレギュラーな事態だったのでこの階層にいないのは当たり前なのだが、命の危機に晒された場所なので必要以上に警戒してしまう
『どうかしましたか?』
『あ、あぁすみません。行きましょうか』
この二階層は一階層と魔物の種類は大して変わらず、以前グレイがこの場で話したことがあるホブゴブリンが出現するようになる位だ
今回は奥までは進まず少し行ったところで折り返すことをアレッサに合図で送る
すると前方から行く手を阻む魔物が現れた
相手は前述話したホブゴブリン
ホブゴブリンはゴブリンと比べて全体的に能力値は高い
だが動きは鈍いので注意して躱せば脅威では無い
今までの様にアッシュが引きつけアレッサが仕留めるというやり方でもいいが、アレッサの状態を考えるとクウと連携して倒すべきか
『アッシュさん、私は大丈夫ですからこれまで通りでお願いします』
アッシュが迷っているのを察したのか、自分からいけると切り出してきた
あまり無理はさせたくなかったが本人がいけると言うのなら信じるしかない
アレッサの言葉に頷き先にアッシュがホブゴブリンに向かっていく
ホブはアッシュに気づき攻撃を繰り出してくるがやはり遅い
攻撃を躱しつつホブの脚を切りつけ更に動きを鈍らせていく
『準備出来ました!離れて下さい!』
合図がくるとアッシュはホブから距離を取る
アレッサの方を見てみると今まで撃っていたファイア・ボールとは異なる槍のような形状をした炎の魔法が完成していた
『ファイア・ランス!』
アレッサが杖を振り下ろすと炎の槍がホブ目掛けて飛矢のように放たれた
アッシュが事前に脚へダメージを与えていたのでホブは避けることができず、炎の槍に貫かれる
腹に風穴ができた状態で反撃が出来るはずもなくホブは力尽きていった
『凄いですねアレッサさん!今のは・・・』
これまで使っていたファイア・ボールよりも威力の高い魔法
見事な魔法に興奮しアレッサの方に向き直ると、そこにはうつ伏せで倒れているアレッサの姿があった
『アレッサさん!』
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