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2章: 全面戦争開始!

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 その後しばらくはエルフの戦士と遭遇しなかった。
 まさかこの程度で連中の戦力が蕩尽したとは思えないが、進むと森を抜けて広大な平原が広がっている。
 その遠くに家の点在する小さな集落があった。
「あれが里か」
 いよいよ敵の本拠地に侵入だ。しかも平原にはその集落へ続くと思われる一本の道が通っている。
 このまま一気に進んで殴り込みをかけよう。
 そう思ったところで俺は側面から殺気を感じた。
――うおっ!
 さっきよりも鋭い矢が俺のこめかみを間一髪で掠る。
 紛れもなく手練から放たれた矢だ。
「ちぇっ、まさか外すとはな」
 挿して落胆していない声と共に、複数のエルフが丘陵から姿を現した。
 ここにも結界が張られているのだろうか。
「あらぁ、久し振りにここまでくる人間がいるなんて」
「ええ、腕が鳴ります」
 どうも連中、さっきまでの新米戦士とは比べ物にならない戦力のようだ。
「ここにお前がいるってことは、外で結界を張っていた仲間は全滅ってことだな?」
「ああ、今頃地面で無様にのびているぜ」
「それで、私達の里に何の用があってこんな挑発を?」
「特に理由はないさ。ただ、エルフの女が嫌いだから、見つけたこの里を征服してやろうと思ってな」
「そんな理由で・・・・・・ここに来たこと、後悔しますよ」
 相手はたかが三人。
 野暮ったい喋り方をするエルフと妙にお嬢様気取りのエルフ、それに武人らしくつつましやかなエルフの三人組だ。
 人数は少なくても、一人一人の戦力は侮れないだろう。
 だったらこちらも、命をやり合う位の本気を見せなければならない。
「お前も運が悪いな。まさか里の四天王を三人も一度に開いてすることになるとは・・・・・・」
「あぐっ!!」
「って、おい!!」
 一人が喋っている間に俺が叩き付けた棒が、つつましやかなエルフの脳天を直撃。
「あぴ~~、はぁ~」
 白目を剥いたエルフはフラフラとよろめきながら、やはり大胆に足を開いて倒れ伏した。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

 その場にいる誰もが沈黙だ。
 こっちとしては少しは愉しませてくれると信じて本気で殴りかかったら、あっという間に気絶させてしまった。
 ていうか、こいつ等、自分達のこと四天王とか呼んでいなかったか。
 四天王と言えば、最強四人組のことじゃなかったか。
 そのうちの一人が、早速欠けたんだが。

 
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