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「ゴンドラル侯爵家のブランド様と私が婚約ですか?」
休みの日の昼下がり、のんびりと過ごしているとお父様から呼び出された。
「ゴンドラル侯爵から申し込みでね。向こうは我が家からの融資目的だろうが、クラリスにしても侯爵夫人になれるなら悪い話では無いと思って承諾した。クラリスがランスに好意を持っている事は知っていたが、ランスもリンカ嬢との婚約が決まったのだ。気持ちを切り替えてブランド君と幸せになれば良い」
私は幼馴染みのカマル子爵家のランスが好きだった。
ステフィン伯爵家はお兄様が継ぐので、私は子爵家であるけれどランスのお嫁さんになれるならそれで良かった。
けれどランスは、学園に入学すると同じ子爵家のリンカさんと恋に落ち婚約してしまったのだ。
もうランスと婚約が出来ないのなら誰でも一緒だ。
ブランド様は私より1つ歳上。
紳士的な態度で、送り迎えをしてくれ、とても優しい。
けれど幼馴染みのマリアさんと良く一緒に居るのが気になる。
だからと言って、私を蔑ろにする事もないし、私もランスと仲良くしていたしと気にしない様にした。
結婚式は私が学園を卒業してから挙げる事になっていた。
そして今日、無事に結婚式を挙げたのだが…。
結婚式が終わり、披露宴が始まる前に夫になったブランドと会場入りする為に控え室で待っているとブランドは、今までの優しい姿が嘘の様に怖い顔をして私に告げた。
「これで父上の命令に従った。父上からお前と結婚しないなら爵位は継がせぬ!等と馬鹿な事を言われ、この3年間は本当に苦痛の毎日だった。だがお前と結婚したこれからは俺の好きにさせて貰う。お前と寝室を共にする事はない。俺には愛する女がいるんだ。父上から早く爵位を譲って貰い、お前とは離婚する。お前もそのつもりでいてくれ!」
確かに私達の結婚は政略結婚。
2人の間に恋愛感情は無かったけれど、ブランドに嫁ぐからは夫婦として寄り添い共に頑張って行ければと思っていたが…その必要も無い様だ。
披露宴ではお互いが別行動をした。
私は仲の良い友達と一緒に過ごし、彼はマリアさんと数人の友達と話していた。
「クラリス!結婚おめでとう」
「ありがとう、お兄様」
「しかし何でお前達夫婦は別行動なんだ?」
「その事で今度、話があるので時間を作ってくれる?」
お兄様は、何か有ったのだと悟り、明後日に家に居てくれると言った。
披露宴が終わるとブランドは、皆と飲みに行ってくると言って出掛けて行き、その日は帰って来なかった。
次の日のお昼過ぎに帰って来たブランドは、二日酔いで気分が悪いのかマリアさんが送って来た。
「奥様、ブランドは自由になれるのが嬉しくて飲み過ぎちゃったみたいで、昨日はあたしのベッドで寝てしまったの。二日酔いだというのに、あたしの寝顔を見たらムラムラしたのか頑張っちゃって♪」
「そうですか…そんなに体調が悪いのであれば無理して帰って来ずにマリアさんに看病して頂いた方が早く良くなったのではないのですか?今からでもマリアさんの所に一緒に戻られても構いませんよ?」
マリアさんは、私が悔しがる事を期待していた様だが、昨日のブランドの宣言で彼に対して寄り添う気持ちも何もかも消失した。
「そうかっ!ならばお前が屋敷を出ていけ!!この屋敷には俺とマリアが住む!」
「畏まりました」
私は部屋に戻ると荷物を纏める様に侍女に告げた。
「おいっ!荷物は置いていけ。この屋敷から何1つ持ち出す事は許さん!!」
何を言っているのだ!?
私が持っていこうとしている品は全てステフィン家が用意して持たせてくれた物。
「私の嫁入り道具は私の物。ステフィン家が用意した物は全て持ち帰らせて頂きます。ゴンドラル侯爵家の物は持ち出しません。それで宜しいですか?」
「まあ、それで良い。マリア、この部屋は君が使えば良い。家から君の荷物を運ばせよう!」
そう言うとブランドとマリアさんは数人の使用人を連れて出掛けて行った。
さあ戻る前に私も花嫁道具を運び出さないと!
使用人に指示を出し、家具を運び出す。
ステフィン家からの物と共に私はステフィン家に戻った。
お父様は驚いていたが、お兄様は昨日の私の様子から驚きはしなかった。
お父様は、ゴンドラル侯爵に直ぐに文を出し、離縁届けを取り寄せた。
「クラリス、申し訳ない。まさかブランド君がそんな事を考えていたなんて」
「ゴンドラル侯爵は我が家からの融資の為に爵位を餌にブランドを脅したのでしょうね…。彼は、融資の事を知らなかったのかしら?まあもうどうでも良いですけれど」
何か廊下が騒がしい。
ノックもせずに部屋に入って来たのは、ブランドだった。
「クラリス!マリアの荷物を持って屋敷に戻ってみれば、殆どの家具が失くなっているではないかっ!!ステフィン家からの物しか運び出さない約束だろう!?」
「ええ、そうですわ。私はステフィン家からの物しか運び出しておりません。あの屋敷でゴンドラル家からの物は貴方の物だけです。何も間違っていませんわ」
ブランドは、驚いて狼狽えている。
「ブランド君、クラリスを訪ねて来るのに愛人と共に来るとは…」
そこに青い顔をしたゴンドラル侯爵もやって来た。
「ブ、ブランド。ステフィン伯爵からお前がクラリスを屋敷から追い出したと連絡が…なぜマリアがここに?」
ゴンドラル侯爵も、ブランドの後ろに居るマリアを見て全てを察した様だ。
直ぐにブランドを殴り付け、自分は土下座をしてお父様に詫びている。
お父様は、どうしたものかと私の顔を見て困っていた。
「ステフィン伯爵家の次期当主として申し上げる。妹クラリスはブランド子息と離縁させる。侯爵家への融資は勿論打ち切りとなり今までの融資金も慰謝料も払って貰う」
「そ、そんな事になったら、我がゴンドラル侯爵家は…」
「没落するでしょうね。ですが侯爵、次期当主が此では遅かれ早かれ同じでしょう。どうやら彼は貴方を追いやって当主の座に着こうとしていた。自分の能力も分からない方の様だ」
自分から当主の座を奪おうとしていたと聞いた侯爵は腹を括った。
「屋敷と領地を売りお金はお返しする。爵位も返上し夫婦で細々と暮らす。ブランド、お前の慰謝料は、自分で何とかしろ!ステフィン伯爵、クラリス嬢、済まなかった」
ゴンドラル侯爵が去ると、殴られ呆けていたブランドがマリアに袖を引っ張られ正気に戻る。
「えっと…父上も帰ったし、俺らも帰るか!?」
「あっちょっと帰る前に離婚届にサインをお願いします」
ブランドは、差し出された書類に何も考えずにサインをし、マリアさんと腕を組んで帰って行った。
私も直ぐにサインをし、執事に書類を役所に届ける様に渡す。
ブランドは、自分の愚かな行為に気が付いていない。
継ぐ爵位が失くなり、平民になる事も…。
休みの日の昼下がり、のんびりと過ごしているとお父様から呼び出された。
「ゴンドラル侯爵から申し込みでね。向こうは我が家からの融資目的だろうが、クラリスにしても侯爵夫人になれるなら悪い話では無いと思って承諾した。クラリスがランスに好意を持っている事は知っていたが、ランスもリンカ嬢との婚約が決まったのだ。気持ちを切り替えてブランド君と幸せになれば良い」
私は幼馴染みのカマル子爵家のランスが好きだった。
ステフィン伯爵家はお兄様が継ぐので、私は子爵家であるけれどランスのお嫁さんになれるならそれで良かった。
けれどランスは、学園に入学すると同じ子爵家のリンカさんと恋に落ち婚約してしまったのだ。
もうランスと婚約が出来ないのなら誰でも一緒だ。
ブランド様は私より1つ歳上。
紳士的な態度で、送り迎えをしてくれ、とても優しい。
けれど幼馴染みのマリアさんと良く一緒に居るのが気になる。
だからと言って、私を蔑ろにする事もないし、私もランスと仲良くしていたしと気にしない様にした。
結婚式は私が学園を卒業してから挙げる事になっていた。
そして今日、無事に結婚式を挙げたのだが…。
結婚式が終わり、披露宴が始まる前に夫になったブランドと会場入りする為に控え室で待っているとブランドは、今までの優しい姿が嘘の様に怖い顔をして私に告げた。
「これで父上の命令に従った。父上からお前と結婚しないなら爵位は継がせぬ!等と馬鹿な事を言われ、この3年間は本当に苦痛の毎日だった。だがお前と結婚したこれからは俺の好きにさせて貰う。お前と寝室を共にする事はない。俺には愛する女がいるんだ。父上から早く爵位を譲って貰い、お前とは離婚する。お前もそのつもりでいてくれ!」
確かに私達の結婚は政略結婚。
2人の間に恋愛感情は無かったけれど、ブランドに嫁ぐからは夫婦として寄り添い共に頑張って行ければと思っていたが…その必要も無い様だ。
披露宴ではお互いが別行動をした。
私は仲の良い友達と一緒に過ごし、彼はマリアさんと数人の友達と話していた。
「クラリス!結婚おめでとう」
「ありがとう、お兄様」
「しかし何でお前達夫婦は別行動なんだ?」
「その事で今度、話があるので時間を作ってくれる?」
お兄様は、何か有ったのだと悟り、明後日に家に居てくれると言った。
披露宴が終わるとブランドは、皆と飲みに行ってくると言って出掛けて行き、その日は帰って来なかった。
次の日のお昼過ぎに帰って来たブランドは、二日酔いで気分が悪いのかマリアさんが送って来た。
「奥様、ブランドは自由になれるのが嬉しくて飲み過ぎちゃったみたいで、昨日はあたしのベッドで寝てしまったの。二日酔いだというのに、あたしの寝顔を見たらムラムラしたのか頑張っちゃって♪」
「そうですか…そんなに体調が悪いのであれば無理して帰って来ずにマリアさんに看病して頂いた方が早く良くなったのではないのですか?今からでもマリアさんの所に一緒に戻られても構いませんよ?」
マリアさんは、私が悔しがる事を期待していた様だが、昨日のブランドの宣言で彼に対して寄り添う気持ちも何もかも消失した。
「そうかっ!ならばお前が屋敷を出ていけ!!この屋敷には俺とマリアが住む!」
「畏まりました」
私は部屋に戻ると荷物を纏める様に侍女に告げた。
「おいっ!荷物は置いていけ。この屋敷から何1つ持ち出す事は許さん!!」
何を言っているのだ!?
私が持っていこうとしている品は全てステフィン家が用意して持たせてくれた物。
「私の嫁入り道具は私の物。ステフィン家が用意した物は全て持ち帰らせて頂きます。ゴンドラル侯爵家の物は持ち出しません。それで宜しいですか?」
「まあ、それで良い。マリア、この部屋は君が使えば良い。家から君の荷物を運ばせよう!」
そう言うとブランドとマリアさんは数人の使用人を連れて出掛けて行った。
さあ戻る前に私も花嫁道具を運び出さないと!
使用人に指示を出し、家具を運び出す。
ステフィン家からの物と共に私はステフィン家に戻った。
お父様は驚いていたが、お兄様は昨日の私の様子から驚きはしなかった。
お父様は、ゴンドラル侯爵に直ぐに文を出し、離縁届けを取り寄せた。
「クラリス、申し訳ない。まさかブランド君がそんな事を考えていたなんて」
「ゴンドラル侯爵は我が家からの融資の為に爵位を餌にブランドを脅したのでしょうね…。彼は、融資の事を知らなかったのかしら?まあもうどうでも良いですけれど」
何か廊下が騒がしい。
ノックもせずに部屋に入って来たのは、ブランドだった。
「クラリス!マリアの荷物を持って屋敷に戻ってみれば、殆どの家具が失くなっているではないかっ!!ステフィン家からの物しか運び出さない約束だろう!?」
「ええ、そうですわ。私はステフィン家からの物しか運び出しておりません。あの屋敷でゴンドラル家からの物は貴方の物だけです。何も間違っていませんわ」
ブランドは、驚いて狼狽えている。
「ブランド君、クラリスを訪ねて来るのに愛人と共に来るとは…」
そこに青い顔をしたゴンドラル侯爵もやって来た。
「ブ、ブランド。ステフィン伯爵からお前がクラリスを屋敷から追い出したと連絡が…なぜマリアがここに?」
ゴンドラル侯爵も、ブランドの後ろに居るマリアを見て全てを察した様だ。
直ぐにブランドを殴り付け、自分は土下座をしてお父様に詫びている。
お父様は、どうしたものかと私の顔を見て困っていた。
「ステフィン伯爵家の次期当主として申し上げる。妹クラリスはブランド子息と離縁させる。侯爵家への融資は勿論打ち切りとなり今までの融資金も慰謝料も払って貰う」
「そ、そんな事になったら、我がゴンドラル侯爵家は…」
「没落するでしょうね。ですが侯爵、次期当主が此では遅かれ早かれ同じでしょう。どうやら彼は貴方を追いやって当主の座に着こうとしていた。自分の能力も分からない方の様だ」
自分から当主の座を奪おうとしていたと聞いた侯爵は腹を括った。
「屋敷と領地を売りお金はお返しする。爵位も返上し夫婦で細々と暮らす。ブランド、お前の慰謝料は、自分で何とかしろ!ステフィン伯爵、クラリス嬢、済まなかった」
ゴンドラル侯爵が去ると、殴られ呆けていたブランドがマリアに袖を引っ張られ正気に戻る。
「えっと…父上も帰ったし、俺らも帰るか!?」
「あっちょっと帰る前に離婚届にサインをお願いします」
ブランドは、差し出された書類に何も考えずにサインをし、マリアさんと腕を組んで帰って行った。
私も直ぐにサインをし、執事に書類を役所に届ける様に渡す。
ブランドは、自分の愚かな行為に気が付いていない。
継ぐ爵位が失くなり、平民になる事も…。
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