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43:さすが親子ですね
しおりを挟む「え?両親にもモヤが?」
落ち着いてソファに座り、タイテーニアは最初の目的を果たした。
オベロニスに視た事を報告したのだ。
「はい。お義父様には、主に黒と中量の赤が。お義母様には青が」
黒は恨み、赤は愛憎絡みの執着、青は妬みである。
「パーティーの時は、服の色と紛れてそれほど判らなかった……いえ、パーティーで増えたのかもしれません」
実際、パーティーが終わった後のシャイクス家も、青黒くて凄かったのだ。
両親には、タイテーニアが見えるモノの事を話してあった。
今までは半信半疑だった両親も、パーティー後には完全に信じていた。
パーティー後、タイテーニアはシャイクス家の家族の体を、無言でパタパタと叩いて払った。
「あら、体が軽くなったわ」
「頭痛が消えた」
シャイクス家は今まで見下される側だったので、今回初めてタイテーニアに汚れを落とされたのだ。
理由無くグズっていたロビンも、すぐに機嫌が直った。
「それでもオーベン程じゃ無いですけどね」
タイテーニアは苦笑する。
仕事から帰って来た時のオベロニスは、毎日驚く程の汚れを纏っていた。
オベロニスと出会ってから気付いたのだが、あのモヤは、直接会わないと付着しないのだ。
レストランで会ったパティシエのように、会わない間に溜めに溜めて、会った時に纏わりつくのだろう。
次の社交の場では、自分も凄い事になりそうだと、タイテーニアは今からうんざりする。
限りなく黒に近い青に纏わりつかれる自分を想像して、ブルリと体が震えた。
それよりも、今は義両親の件よね!とタイテーニアは首を振る。
「オーベンほど影響を受ける体質では無いみたいだけど、決して良いモノでは無いわ」
「勝手に消える事はあるのか?」
オベロニスの質問に、タイテーニアは首を傾げる。
「多分ですけど、相手の思いが無くなったり、モヤの大本の人が亡くなれば薄くなるのかな?とは思ってます」
そうでないと、老齢の人は全員モヤだらけになっている筈だからだ。
「それで、久し振りに見た父に……」
オベロニスが言葉を濁した。
実の父が母親以外の女性に過度に執着されているのだ。
何と言って良いのか迷ったのだろう。
「お義父様もかなりの美丈夫ですものね。さすが親子ですね」
タイテーニアは苦笑いをするしかなかった。
「では、明日の朝の野菜の収穫時に、土埃を払う体で実行します!」
タイテーニアが胸の前で拳を握る。
「殴るんじゃなくて、払うんだよな?」
オベロニスの視線は、胸の前で握られた拳だ。
「当たり前じゃないですか!これは、気合いの握り拳です!」
引っ込めるのかと思いきや、タイテーニアは拳を高く掲げた。
「それでは両親の事、お願いするよ」
掲げたタイテーニアの拳を手に取り自分に引き寄せたオベロニスは、それにチュッとくちづける。
「な、な、な!」
焦る可愛い妻を抱きしめようとして、オベロニスは思わぬ抵抗にあう。
腕の中のタイテーニアは、オベロニスの胸を両手で押していた。
「あ、明日は朝早く起きるんですから、きょ、今日は駄目ですからね!」
抱きしめようとしただけなのに、朝から今夜の営みを拒否され、微妙な気持ちになったオベロニスだった。
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