ヤンデレ育成論

やぶへび悶々丸

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Lv.7 病んではございませんよね。

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『今週も幸紀様と帰って来ないの?』

お母さんが電話口で心配そうに声をあげた。

「うん、幸紀様が部活の自主練したいからって。あとテストが近いのでお勉強に集中したいそうで。大丈夫、幸紀様はお元気だよ」

がじがじ。乳首が齧られて声が漏れそうになるのを抑える。

『そう…あまり根詰めないようにお伝えしてね。それで、志寿緒が戻って来た時に話そうと思ってたんだけど、高校からは普通に公立校に通わない?』

「え、それは…」

『せめて高校くらいはちゃんと通った方がいいと思うの。自分のためだけに少しは学生らしい思い出作らないと後悔すると思うよ。幸紀様はお父さんと説得するし奥様や旦那様にかけ合ってもいい。学校側にお願いして寮室にハウスキーパー入れる事だってできるんだよ』

「…いや、いい。色々考えてくれてありがとう。でも、もう少し幸紀様のお世話したいから。高校生活より幸紀様の方が大事だから」

それじゃ、と電話を切った。
乳房を鷲掴んで歯を立てている幸紀様の目が合う。長い睫毛が僅かに揺れていた。

「しずお」

大丈夫大丈夫、と胸の中にある幸紀様を抱き込む。本当に大丈夫かなんか知らない。

「ずっと一緒におります。しずおは高等部でも。だってしずおは幸紀様の為にこの世界に存在しているので」

私の中身は大人だ。別に今更普通の学生生活なんて惜しくない。怖くて仕方がない。幸紀のためにと思ってした事が全て裏目に出てしまったらどうしよう。

「うん、分かってる。だから不安にさせないで」

「…幸紀様、約束は覚えてますか?」

勿論、と啄むように唇が触れる。三回。
微笑むお顔がまだあどけなくって愛くるしい。痛くて苦しい事をされて自由を奪われだって、ずっとずっと失いたくない気持ちが強い。

「他の人の恨みを買うような事をしてはいけませんからね。自分の思いを無理矢理にでも果たそうとして、無理な事をなさらぬよう…」

「しない。意味ないししたくもならない。なんで、しずおがそんなに心配するか分からないんだけど。そんなに他の人に何も思わないよ」

幸紀様はそう仰るがやっぱり不安は拭えない。不安がってばかりでもいけないのだが。

「気になる人がいたら、しずおにまず相談してくださいね。恥ずかしがらずに」

なにそれ、と未来を知らない幸紀様はひとごとのように笑った。

いや、ひとまず安心しよう。
そもそも幸紀様は性癖が歪んでいるだけで、ヤンデレになってない。病んではいない筈だ、うん。
だって原作みたいに暗い陰鬱な雰囲気ではない。会話も一方的ではない、ちゃんと通じる。ひとつの些細な事を膨らませて曲解したりしない。急に感情がぶれる不安定さは…最近はない。精神的には安定してきている、ちゃんとご機嫌を取っていれば。
決してヤバい奴ではない。普通のお坊っちゃま中学生だ、多分…。


「垣内さんって、古賀寧君のただの使用人なんだよね?なんか距離感おかしくない?笑」

部活も終わりかけ、黒板を雑巾で拭いていると3年生の女子部員5人に囲まれてあれよあれよと言う間に女子更衣室に連行された。
さすがにもう慣れたが、ここ銘条学園というのはセレブと非セレブの格差がすごい。
勿論一般家庭から入学する生徒も勿論いるのだが、ものすごく肩身の狭い思いをするし、権力者の子息令嬢の機嫌を損ねていじめられる事もある。それで学校を辞めていく子もいる。
私は比較的攻撃をされていない方だ。使用人で、幸紀様に基本的にくっついてあまり一人にならないからだ。ただこうしてたまに文句をつけられる事もある。幸紀様は弓道部の女子生徒にとってちょっとしたアイドルみたいな存在だ。

「そう言われましても、私はあくまで古賀寧 幸紀 様のお世話をする為にこちらの学校に通っていますので…。私は私の任務をまっとうしているだけでございます。気に障ってしまいましたらすみません」

深々と恭しく頭を下げる。プライドなんか全くない。早く受け流して戻らないと、という一心だった。

「そんな事言って、古賀寧君個人的に好きなんじゃないの。一人で独占しようと唆してるんでしょ」

「古賀寧君の寮室に住んでるし、いかがわしい事してるって皆言ってるよ。ねぇ、どうなの」

そのあたりはまさに「そう」なのだが、そうですなんて答えられる訳がなかった。
でも別にあれは排泄に近い意味合いだと思うので、彼女達が想像するものとは大分違う。

「私は勿論幸紀様をご尊敬しております。そして、全ての決定権は幸紀様にありますので…申し訳ございません」

私に何か言ったって何にも変わらない。もう幸紀様は私の言うことなんか素直に聞いてはくれない。この人達は一体何をして欲しいのかよく分からない。ただ文句を言いたいだけなのか。

「はぁ?何よそれ。辞めちゃえいいじゃん。庶民がいると貧乏臭いのよ、いなくなってくれない?」

突き飛ばされて、バランスを崩してまんまと転んでしまった。
へたり込んで哀れっぽい情けない顔をつくって彼女達を見上げる。憂さ晴らしになるように。

「まさか卑しい生まれのあんたが、古賀寧さんに特別扱いされてるとか勘違いしてないわよね」

「本当これだから庶民って浅はかだわ。本当なら部活動に所属する事すらこの学園では許されないのよ。幸紀様の使用人だからといって許されて」

「あらあら。次顔見せたらあなたが矢取りの時に手元狂ってしまうかもしれませんわね。痛くしたらごめんなさいね」

「お優しくてらっしゃるのね。霰もない姿でも晒しあげて、二度と学園内で姿を見せられないようにしてもいいのに」

「…」

何も言えない。ここで反抗的な事を口にすれば拘束時間が長引くと分かっている。
深々と頭を下げてひたすら許しを請う。別にこの方達に何もしていないし、何に対して謝ればいいか分からないけど。

「やだ、別に土下座なんかしてもらいたい訳じゃないの。古賀寧さんに必要以上に近くにいるのが見たくないだけ。分かってくれるよね?立場弁えてる上級国民の私達の言うこと聞けるよね?」

「それはできかねます」

口をついて出てしまった言葉に自分で嫌になる。でもどうしても曲げられない。当たり前に従えない。

「私の主人は幸紀様なので、幸紀様のご意向無しに皆様の指示に従う事ができません。誠に心苦しいのですが私にとっては上級国民の令嬢である皆様よりも、幸紀様の意思や命令以上の方が大切なのでございます」

自分で言って、ため息が出た。
いい。別にこれで事故を装って矢で射たれてもいい。どんな虐めや辱めを受けてもいい。幸紀様を裏切るくらいなら私が痛い目見ればいい。

「このっ…」

鬼の形相で怒鳴られようとした頃に、女子更衣室の扉をノックする音が響いた。彼女達は無視しようとしたが、小さく開いた隙間から男子生徒の声が響いた。

「すみません。こちらに垣内 志寿緒はいませんか。道場には見当たらないので探しているんです」

幸紀様だった。
しん、と場が静まり返った。お互い目配せしてどうするか悩んでいるようだった。今だ、と思って声をあげた。

「おります。失礼しました、今伺います」

私を引き止めようと声も出すことも出来ず、遮る事もできない。私は立ち上がって何の障害もなく女子更衣室を出た。


外に出るとやはり幸紀様がいた。勝手にいなくなった事を怒られるかと思ったが、何も咎められなかった。なぜか頭を撫でられた。とてもたくさん。

「…もしかして聞いていましたか」

恐る恐る聞くと、幸紀様はあっさりと「うん」と答えた。

「しずおの姿見えなくて部長に聞いたら、連れてかれたよって教えてくれた。まったく人のいる場所で攫うとか間抜けだよね。それに僕を舐めすぎ」

いつものように食堂に向かうのかと思ったら、自室に向かう道順で手を引かれる。食事は後で持ってきて貰おう、と幸紀様は微笑んでいた。柔らかな綺麗な笑顔なのになぜか薄寒いものを感じた。

「だ、だめですよ。約束でしたよね、人の恨みを買わないって」

勿論、と幸紀様は答える。
自室に着いて幸紀様を見上げる。身長はもう昨年には抜かされた。

「見せて。傷とかつけられてはいない?」

「はい。暴行はされていません」

制服を脱いで下着も外す。裸を晒す。肌には幸紀様に付けられた歯型とか内出血とかしかない。

「そのようだね。でも、みすみす連れていかれたのは良くない。抵抗したり僕の所まで逃げれなかった?」

「同じ部活動に所属する方々で先輩もいらしたので、角を立てたくなく抵抗するべきではないと判断しました」

「しすおが自分で言ってたよね。僕の意思や命令の方が大切だって。僕は君に近くにいてほしいし他人に連れていかれるなんて許せないから、次からはそうして」

「はい、申し訳ありません…」

「なにシュンとしてるの?怒ってはないよ。こういう場面に遭遇した時にどうすべきか具体的に教えてなかったから仕方ない。それにしずおが他人に従わなかったのは嬉しかったよ」

脱がして、と幸紀様は両手を上げたのでブレザーとスラックスを脱がしてハンガーにかける。ワイシャツをボタンを外している最中に腰に幸紀様の手が回っていた。

「…お口をお使いになりますか」

ううん、と左耳の上あたりで幸紀様がお返事する。
レザーソファに座りこんだ幸紀様に誘導されて跨ぐように膝を立てる。性器同士が擦り、何かの拍子でずぶずぶ音を立てて繋がる。

「はぁ…気持ちい」

「ぁ、あぁ」

「しずおは、体調不良という事で三日くらい休むといいよ。この部屋で」

「ああ…え?そんな」

「あれ、しずおは僕のお人形さんだよね?何か言いたい事でもあるの」

ありません、と引き下がるしかない。
私が今出来ることは幸紀様を気持ちよくさせる事しかないので、腰を揺らす。乳房がゆさゆさ重く揺れて、それに幸紀様の指が食い込んだ。

「幸紀様ぁ」

「僕ね、本当に自分のものを勝手に触られるのも貶されるのも嫌い。大切な関係を何にも知らない第三者に口出されるのも面白くない。聖や瑠衣は昔馴染みだからギリ許してるけど、ただ同じ学校の同じ部活ってだけで僕からしずおを離そうとするなんて許せない」

にちゃにちゃと卑猥な音の中、幸紀様は淡々と話す。
オチンチンはかたい。呼吸はちょっと荒い。指先は乳首をいじっている。
私なんてどうでもいいのに、お腹の奥がむずむずしてダラダラと愛液が溢れてしまう。あられもない声が出る。

「僕の気持ちだけの問題だから、しずおは何もしなくていいよ。僕のこと考えてながら休んでいて」

はぁ、とため息とともに幸紀様は射精された。良かった、気持ちよかったようだ。幸紀様のお顔は思いのほか晴れやかで私も安心した。

しかし、私が学校に復帰する頃には、あの時呼び出した女子生徒は部活どころか学校自体を辞めていた…。

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